表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベル1を35個持ったおっさん、有能すぎて美女三人に包囲される〜レベル10大火力至上主義の世界で裏方が最強だった〜  作者: よっしぃ@書籍化


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

148/178

第148話:魔王の狼狽と、夢魔の誤算

「最初はグー!」と叫びながら乱入してきた魔王だったが、俺の「脳内桃色空間」は相手が魔王であろうと容赦なく牙を剥いた。


「……魔王様。君のその服、すごく似合ってるよ。君の強さも美しさも、俺が一番よく分かってるからね」


 俺は魔王の漆黒の密着戦闘服の腰に手を回し、その顔を真っ直ぐに覗き込んだ。


「なっ……!? なんだ、これは……っ。おお? 乙女というのは、このような扱いがいいのか? ……いや、アタシにはまだ早かったようだぜ……っ!」


 さしもの魔王も、俺の無自覚で真っ直ぐな口説き文句には勝手が違ったらしい。顔を真っ赤にして視線を泳がせ、力技で俺の腕をいなして距離を取った。


 ヒロインたちが「魔王まで!?」「抜け駆けですわ!」と騒然とする中、ずっと空気と化してパーティーの最後尾で縄を引かれていた闇商人組織の男が、恐る恐る口を開いた。


「あ、あのう……皆様。どうやら、最深部に着いたようですが……?」


 その言葉に、顔の赤みを誤魔化すように、魔王がギロリと闇の商人を睨みつけた。


「……あん?」


 地を這うような、ドスの効いた魔王の凄みに、闇の商人がヒッと短く悲鳴を上げて首をすくめる。


「ちっ! もう着きやがったか……。ほらおっさん、あんたの出番だぜ!」


 魔王に背中をドンと押され、俺は開け放たれた豪奢な扉の中へと押し出された。


 そこに待ち受けていたのは、妖艶な美女……ではなく、はだけたシャツから見事な筋肉を覗かせた、美形の男性悪魔だった。


「ようこそ、愛に迷える子羊たちよ。私がこの迷宮の主、インキュバスだ」


『……ねえ。ピンク色の霧にサキュバスの群れときて、なんで最後のボスがインキュバス(夢魔の男)なのかな!? 男の俺がどうやって戦えって言うのさ!』


 俺の内心の絶叫が響き渡る中、はだけたシャツから見事な胸筋を覗かせた美形の悪魔が、甘い声でウインクを飛ばしてきた。


 その瞬間、俺の脳内を支配していた「桃色空間」の靄が、スゥッと音を立てて完全に消え去った。三十五歳のおっさんの精神は、極限のカオスを経て、もはや一切の感情が波立たない「完全なる賢者モード」へと移行していたのだ。


「さあ、美しい乙女たちよ。そんなむさ苦しいおっさんのことは忘れて、私と永遠の夢を――」


 インキュバスがエリーゼたちに向かってキメ顔で手を差し伸べる。だが、迷宮の主の自信に満ちた誘惑は、かつてないほど冷酷な反応で迎えられた。


「……は? 貴方、旦那様のあとにその程度の言葉で私を口説けるとお思いですの? 鏡を見て出直してきなさい」


「ふん。主君の不器用で真っ直ぐな言葉に比べれば、羽虫の羽音よりも心に響かぬわ!」


「ボスの匂いの方がずっと落ち着くんだゾ! お前、なんか香水くさいゾ!」


「わらわを誰だと心得る! ヘンドリックほどの男でなければ、この胸は高鳴らぬわ!」


 エリーゼの氷の冷気、サンネの雷鳴、ミラの獣の威圧、そして王女の扇子から放たれる圧倒的な覇気。 直前まで俺の無自覚な猛攻で骨抜きになっていた彼女たちは、良いところを邪魔された怒りも相まって、インキュバスに対して絶対零度の殺気を放っていた。


「えっ……? あれ? 私、インキュバスだよ? 魅了の魔法も全力でかけてるんだけど……なんでそんなにゴミを見るような目で見られてるの……?」


 さしものボスも、百発百中だったはずの自分の誘惑が全く通じないどころか、激しい嫌悪感を向けられて本気で戸惑い始めている。


「がははは! そりゃあ、お前が出る幕じゃねえよ! この嬢ちゃんたちはな、たった今、お前なんかよりよっぽどタチの悪い『天然の人たらし』に骨抜きにされた直後なんだからな!」


 魔王が腹を抱えて大爆笑する中、俺はただ遠い目で天井を見つめていた。


『……ねえ、誰か。俺がさっきまでしでかした記憶も、ついでに消してくれないかな。この後、どんな顔で彼女たちと接すればいいのか、本気で分からないんだけどさ』


「ええい、旦那様との時間を邪魔した罪、万死に値しますわ! 皆様、一斉攻撃です!」


「応!」「任せるんだゾ!」「塵一つ残すな!」


 哀れなインキュバスがこれ以上口を開く間もなく、四方向からの集中砲火がボスの間を吹き飛ばした。


 三十五歳の裏方おっさんが率いるパーティーの迷宮攻略は、こうして色々な意味で取り返しのつかない爪痕を残し、幕を閉じたのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ