表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベル1を35個持ったおっさん、有能すぎて美女三人に包囲される〜レベル10大火力至上主義の世界で裏方が最強だった〜  作者: よっしぃ@書籍化


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

125/148

第125話:終わっていた反乱と、不必要な最高責任者

「さあ、着きましたわよ旦那様! 敵の反乱部隊が集結している中央広場ですわ!」

「気を引き締めるのじゃ。ここで王都防衛の要としての威厳を見せつけるのじゃぞ!」


 エリーゼとルミナリアに両脇を抱えられ、半ば引きずられるようにして戦場へと連行されたヘンドリック。両腕の柔らかい感触のせいで緩みきっていた顔も、広場から漂う焦げ臭い匂いに少しだけ引き締まった。


「はぁ……。しょうがない、少しだけ脅かして追い払うか。土魔法で落とし穴でも……」


 ヘンドリックが嫌々ながら杖を構え、広場へと足を踏み入れた、その時である。


「ううっ……」

「ひぃぃ、許してくれぇ……」


 広場に響いていたのは、勇ましい反乱軍の雄叫びではなく、地を這うような情けない呻き声であった。

 見れば、広場の中央には、黒装束を着た闇商人のスパイや、ガラの悪い裏社会のならず者たちが、紐でぐるぐる巻きにされて文字通り「山」のように積み上げられていたのである。


「……えっ?」


 拍子抜けして固まるヘンドリックたちの前で、パンパンと両手の埃を払っている男女がいた。

 魔族の青年ルークと、その恋人で同じく魔族の美女アイシャ。そして、腕組みをして呆れ顔をしているヘンドリックの妹である。


「あ、ヘンドリックさん! 遅かったですね」

 ルークが爽やかな笑顔で手を振ってきた。


「る、ルーク? これ、お前たちがやったのか?」

「ええ。空の色が変わって結界が張られた瞬間、街のあちこちで悪意を持った魔力が膨れ上がったので。俺もアイシャも魔族ですから、そういう敵意や瘴気の類には人一倍敏感なんですよ。妹さんと一緒に、散歩がてら粗方掃除しておきました」

「魔族の力、少し出しすぎちゃったかしら。街の人に怪我がなくてよかったです」


 アイシャが、ふんわりとした母性あふれる笑顔で微笑む。

 なんと、王都内部で一斉蜂起したはずのテロリストたちは、ヘンドリックが屋敷で「行きたくない」と駄々をこねている間に、魔族カップルと妹の迅速すぎる対応によって、すでに完全鎮圧されていたのだ。


「遅いよド阿呆兄貴。最高責任者が到着する前に、暴動終わっちゃったじゃない」

 妹がジト目でヘンドリックを睨みつける。


「……」


 ヘンドリックは、広場に積み上げられた敵の山を見た。

 そして、遥か遠く、外の敵の本隊が全く壊せないでいる「自分が適当に補修した絶対防壁」をチラリと見た。


 内部の敵は、かつての仲間たちが勝手に片付けてくれた。

 外部の敵は、過去の自分が日銭を稼ぐためにやった左官工事のせいで、中に入れず立ち往生している。


 ヘンドリックは杖をそっと地面に置き、エリーゼとルミナリアに向き直った。


「……なあ。俺、到着したけど何もしてない。というか、何もすることがない」

「だ、旦那様?」

「これ、俺いらないよな? 俺がいなくても王都の防衛、完璧に成り立ってるよな!? よし、やっぱり俺は不必要な人材だ! 今から王城に行って、最高責任者の辞表を出してくる!!」


 喜色満面で踵を返し、一目散に逃亡しようとするおっさん。

 だが、その首根っこを、エリーゼとルミナリアがガシッと左右から掴んで引き留めた。


「何をおっしゃいますの。戦いが終わったのなら、次は捕虜の尋問と、被害状況の確認と、事後処理の報告書作成が待っておりますわよ?」

「うむ。むしろ最高責任者の本番はここからじゃ。さあ、執務室に戻って書類の山と戦うのじゃ、ヘンドリック」

「いやぁぁぁっ! 書類仕事なんて一番やりたくないぃぃぃっ!!」


 物理的な戦闘からは解放されたものの、結局「最高責任者」としての事務作業からは逃れられなかった最強の便利屋。

 王都の空に、捕縛されたテロリストたちの呻き声よりも悲惨な、おっさんの絶叫が虚しく響き渡るのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ