第124話:最強の城壁と、絶望する侵略者
一方、その頃。
王都の内部で結界が張られ、テロが起きるのと時を同じくして、王都の外郭でも異変が起きていた。
王都を外部から完全に包囲し、一気に陥落させようと進軍してきた闇商人の本隊である。
「よし、内部の結界は完成したな! 我らも一斉攻撃を開始しろ! 城壁を破壊し、王都を蹂躙するのだ!」
「おおぉぉっ!!」
闇商人の幹部の号令とともに、数百の魔術師による一斉魔法と、巨大な攻城兵器の岩弾が、王都の城壁へと一斉に叩き込まれた。
ズドドォォォォンッ!!
激しい土煙が舞い上がり、大地が揺れる。
並の城塞都市であれば、一撃で壁が崩落し、大穴が空くほどのすさまじい威力である。幹部は勝利を確信し、下劣な笑みを浮かべた。
「はははっ! 脆い、脆すぎるわ! さあ、崩れた壁から王都に雪崩れ込め……って、あ、あれ?」
土煙が晴れた後。
そこには、ヒビ一つ、いや、傷一つついていない、ツルッツルの無傷の城壁がそびえ立っていた。
「なっ……馬鹿な!? なぜ城壁が無傷なのだ! ええい、正面城門を狙え! 門なら燃やして壊せるはずだ!」
「か、幹部! 駄目です、城門に極大の火炎魔法を撃ち込みましたが、焦げ目すらつきません!! なんですかこのデタラメな硬さは!?」
闇商人たちは完全にパニックに陥った。
それもそのはずである。彼らは知らなかったのだ。
この王都には、依頼とあらば何でもこなす「便利屋」がいることを。
そしてその便利屋が、日々の小遣い稼ぎのために「城壁のひび割れ補修」や「城門の建て付け直し」といった地味な依頼を、毎日のようにコツコツとこなしていたという事実を。
『壁の補修ですね? ああ、適当に土魔法Lv1で固めておきます。次から崩れないように、俺の魔力をちょっと多めに混ぜて圧縮しときますから』
ヘンドリックが小銭を稼ぐために「適当に」流し込んだ、規格外の魔力と限界複合魔法。
それが日々の業務として幾重にも積み重なった結果、王都の城壁と門は、神話クラスの魔獣のブレスすら跳ね返す、オリハルコン以上の強度を持つ「絶対防壁」へと変貌を遂げていたのである。
「ど、どうやって中に入ればいいんだ……!」
「壁に傷一つつけられないぞ! 嘘だろ!? どんな魔法防壁が張ってあるんだ!?」
王都の内側で、ヘンドリックが「むふっ」とだらしなく連行されている頃。
王都の外側では、便利屋の真面目すぎる過去の仕事ぶりの前に、闇商人の本隊が手も足も出ず、城壁の前で早くも絶望のどん底に叩き落とされていたのであった。




