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レベル1を35個持ったおっさん、有能すぎて美女三人に包囲される〜レベル10大火力至上主義の世界で裏方が最強だった〜  作者: よっしぃ@書籍化


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第117話:探さないでくださいと、世界樹の落とし物

『探さないでください。 しばらく一人で反省の旅に出ます。 追伸:ご飯はちゃんと食べてね。 ヘンドリックより』


 翌朝。王都の拠点のダイニングテーブルに置かれたペラペラの羊皮紙を読み上げ、エリーゼはピクピクとこめかみを引きつらせた。


「……あのバカ旦那。昨日たっぷりとお灸を据えてやったというのに、反省するどころか夜逃げしましたわね……?」

「チッ。またお行儀見習いから逃げた時と同じ手口か。進歩のないド阿呆兄貴め」

 妹が呆れたようにため息をつく。


「主君ー!? どこへ行ったのだー!」

「ボスがいなくなったんだゾ! アタシのお肉係がー!」

 サンネとミラが半泣きで屋敷中を駆け回り、ルミナリアは「わらわの婚約者が夜逃げなど、前代未聞じゃ……」と頭を抱えていた。


 ヒロインたちが大騒ぎしている頃。

 当のヘンドリックは、王都の郊外、人気のない森の地中に【土魔法Lv1】で作った極小の「隠し地下シェルター」の中に引きこもっていた。


「いっててて……。あいつら、本当に手加減ってものを知らないからな……。迷宮の魔物よりよっぽど質が悪いぜ」

 全身ボロボロ(主に打撲とつねられた痕)のヘンドリックは、ランプの灯りだけが頼りの暗い土の中で、湿布を貼りながら愚痴をこぼした。


「ふぅ。まあ、ほとぼりが冷めるまで数日ここでやり過ごすか。えーっと、非常食は鞄の中に……ん?」


 ヘンドリックが空間拡張の鞄に腕を突っ込んでゴソゴソと探っていると、指先に『硬くてザラザラしたもの』が触れた。

 パンや干し肉ではない。引っ張り出してみると、それは淡く緑色に発光する、奇妙な『枯れ枝』であった。


「なんだこれ……? なんでこんなもんが俺の鞄に……あっ」


 ヘンドリックは思い出した。

 記憶が改竄され「強欲なソロ冒険者」になっていた時、迷宮の最奥・真層で魔物を蹴散らしながら、ウハウハ気分でドロップ品やレア素材を拾いまくっていたことを。


『ひゃっほう! オリハルコンの原石に、世界樹の枯れ枝! お宝ザクザクだぜ!』


「……マジかよ。あのバグってた時の俺、ちゃっかり世界樹の枝をむしり取ってきてたのか」

 呆れ半分、感心半分でその枯れ枝を見つめるヘンドリック。

 本来の目的は「世界樹を枯らしている原因の調査」だったが、結果的にそのサンプルを直接持ち帰ることに成功していたのだ。


「かなり魔力が枯渇して、ひからびてるな……。試しに、少し魔力を込めてみるか?」


 暇を持て余していたこともあり、ヘンドリックは好奇心から、枝を両手で包み込んで【魔力譲渡Lv1】を発動させた。

 人間ではなく、植物に対する魔力の譲渡。

 常時発動している【魔力自動回復Lv1】と7000超の莫大な魔力プールから、純度の高い魔力が枯れ枝へと注ぎ込まれる。


 トクン……ッ。


 枝が、まるで心臓のように脈打った。

「おっ? なんか光が強く……って、おい、ちょっと待て。これ、吸い込む量が――」


 ヘンドリックが異変に気づいた時には、遅かった。

 枯れ枝はヘンドリックの底なしの魔力を感知するや否や、ダイソンの吸引力のごとき凄まじい勢いで魔力を貪り食い始めたのだ。


 ピカーーーンッ!!!


「うおっ、眩しッ!?」

 次の瞬間、枯れ枝から爆発的な『生命の光(緑色の極太レーザー)』が真上に向かって放たれた。

 光の柱は、ヘンドリックが作った地下シェルターの土の天井をいとも容易く消し飛ばし、王都の空高くへと一直線に突き抜けていったのである。


 ◇ ◇ ◇


「……なんじゃ、あれは」


 王都の屋敷の庭でヘンドリックを探していたルミナリアが、ぽかんと空を見上げた。

 王都の郊外の森から、天を衝くほどの巨大な緑色の光の柱が立ち昇っている。その光からは、尋常ではない濃密な生命力と……見慣れた『おっさんの魔力の気配』がダダ漏れになっていた。


「……見つけましたわ」

 エリーゼが、ゴキッ、と首を鳴らした。


「隠密行動の欠片もない、派手な狼煙のろしを上げてくれましたわね。さあ皆様、旦那様をお迎えに上がりますわよ!」

「おう! 今度こそ逃がさんぞ!」

「お肉の恨み、晴らすんだゾ!」


 ――数分後。

「あ、あれぇ? 天井がなくなっちゃったぞ……?」

 大穴の空いた地下シェルターで、急成長して葉っぱまで生い茂った世界樹の枝を抱えながら呆然とするヘンドリックの元に、般若の顔をしたヒロインたちが空から降臨することとなる。

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