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レベル1を35個持ったおっさん、有能すぎて美女三人に包囲される〜レベル10大火力至上主義の世界で裏方が最強だった〜  作者: よっしぃ@書籍化


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第111話:最強のソロ冒険者と、背後に潜む正妻

「俺の獲物を横取りしようってのか! 甘いぜ、ハイエナども!」


 記憶を改竄され、金と素材への執着にまみれたヘンドリックが、猛然と杖を振るった。

 放たれたのは【土魔法Lv1】と【風魔法Lv1】の複合――迷宮の床の岩盤を削り出し、それを竜巻に乗せて放つ「岩礫の暴風雨」だ。


「くっ……! 防御態勢!」

 サンネが瞬時に大盾を構え、後衛を守るように前に出る。だが、凄まじい質量と速度で打ち付けられる岩礫の嵐に、彼女の屈強な足がジリジリと後退させられた。


「おっさーん! 目を覚ましてくれ! 極大爆炎ッ!!」

 ブラムが背中の大剣を抜き放ち、渾身の【火魔法Lv10】をヘンドリックへと叩き込む。岩室を埋め尽くすほどの灼熱の波が、ソロ冒険者気取りのおっさんを飲み込もうとした。


「バカめ、大振りの火力なんて当たらなきゃただの焚き火だ!」

 ヘンドリックは全く動じず、【風魔法Lv1】で自身の周囲を真空状態にし、火魔法から「酸素」を奪い取ることで威力を完全に殺した。さらに【水魔法Lv1】の散布で熱を相殺し、レベル10の極大魔法をあっさりと無力化してしまう。


「うそだろ!? 俺の最大火力が、息を吹くみたいに消された……!?」

「隙だらけなんだゾ!」

 ブラムが唖然とする隙を突き、ミラが獣の跳躍力で天井を蹴り、ヘンドリックの頭上から急降下攻撃を仕掛けた。同時に、サンネも盾を捨てて剣を上段から振り下ろす。


 上空からのミラの爪。正面からのサンネの剛剣。

 王国トップランカー二人による、回避不能の絶対的挟撃。


「……動きが直線的すぎるぜ。素人か?」

 ヘンドリックの足元から、ボコンッ! と石の柱が飛び出した。

 それは攻撃ではなく、ミラの「着地点」とサンネの「踏み込み位置」の地形を、ほんの数センチだけズラすという嫌らしい妨害だった。


「にゃっ!?」

「な、足場が……っ!」

 完璧だったはずのコンビネーションが、たった一つの石柱で致命的に崩れる。ミラの爪もサンネの剣も、ヘンドリックの体を掠めることすらなく空を切った。


「まずは一番うるさい魔法使いからだ!」

 ヘンドリックはすかさず【土魔法Lv1】と【水魔法Lv1】を複合させ、ブラムの足元の床を底なしの泥沼へと変えた。


「うおっ!? 足が沈む……って、今度は固まった!?」

 泥沼はブラムの腰までを飲み込んだ瞬間、急速に硬化し、彼を岩盤と一体化させて完全に拘束した。


「ブラム君! 今助け……きゃあッ!」

 慌てて【浄化魔法】で彼を助けようと駆け寄ったロッテの足元にも、あらかじめ仕掛けられていた泥沼トラップが発動。彼女もあっえなくブラムの隣で石像のように固められてしまった。


「ぐぬぬ、よくも! 覚悟しろヘンドリック!」

「ボス! アタシのお肉代を返してほしいんだゾ!」

 体勢を立て直したサンネとミラが再び襲い掛かるが、ヘンドリックの絶妙な距離感と、次々と床から飛び出す妨害トラップの前に、まったく攻撃が届かない。

 それどころか、魔法の連携と地形操作を完璧に組み合わせてくるヘンドリックに翻弄され、ものの数分でミラは石の檻に閉じ込められ、サンネは足元をすくわれて宙吊りにされてしまった。


「わ、わらわは何もしておらんぞ!? むしろそなたを助けに来たのじゃ!」

「うるせえ! お前みたいな高そうな服着てる奴が、一番裏でズル賢いこと考えてるんだよ!」

 最後尾でドン引きしていたルミナリア王女でさえ、容赦なく飛んできた石のロープでぐるぐる巻きにされて床に転がされた。


 ――静寂が訪れた。


「ふん。数ばっかり多くて、口ほどにもない連中だ。俺のお宝には指一本触れさせねえからな」

 ヘンドリックは【オリハルコンの剣】を肩に担ぎ、鼻で笑った。


 王国トップランカー六名(うち一名は戦力外の王女)対、レベル1の便利屋一名。

 結果は、圧倒的という言葉すら生ぬるい、ヘンドリックの完全勝利であった。彼に一撃すら与えられないまま、パーティーは全滅――したかに見えた。


「さて、とっとと素材を回収して……」

 ヘンドリックが再び魔獣のドロップ品に手を伸ばそうとした、その時。


『……おかしいな。さっき、六人いたような気がしたんだが……?』

 五人しか捕まえていないことに気づき、ヘンドリックが首を傾げた瞬間。


「――よそ見は命取りですわよ、ソロ冒険者さん?」


 ヘンドリックの真後ろ、文字通り息がかかるほどの至近距離から、氷のように冷たく、そして優雅な声が囁かれた。


「なっ!?」

 ヘンドリックが驚愕して振り返ろうとする。

 そこにいたのは、王宮の宝物庫から密かに持ち出していた【隠遁のヴェール】(気配、魔力、体温、果てはヘンドリックの第六感すら完全に遮断する超希少魔道具)を身に纏い、完全に気配を消して背後に回り込んでいた正妻――エリーゼであった。


 彼女の手には、サンネが落とした大剣の柄が、鈍器のようにしっかりと握られている。


「旦那様。おイタが過ぎますわ」


 最強のソロ冒険者へと変貌したヘンドリックであったが、どれほど強くなろうとも、妻の怒りのフルスイングからは逃れられない運命にあった。

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