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レベル1を35個持ったおっさん、有能すぎて美女三人に包囲される〜レベル10大火力至上主義の世界で裏方が最強だった〜  作者: よっしぃ@書籍化


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第104話:解除不能の殺意と、職人の最適解

 鋼線から放たれる冷たい殺気を前に、ヘンドリックは短く息を吐いた。


「……ダメだ。俺の【罠解除Lv1】じゃ、この仕掛けは解けない」

「解けないとは、どういうことじゃ?」

「俺のスキルは全部レベル1だからね。見つけるための【罠発見】や、構造を知るための【鑑定】は使えるけど、干渉して無効化する『解除』の力は弱すぎるんだ。この罠は、少なくともレベル8か9の超高度な暗殺罠だ。俺がいじれば、その瞬間に暴発する」


 ヘンドリックの声には、いつもの飄々とした響きは一切なかった。完全な「職人の真剣モード」である。

 その空気の変化を察知したルミナリアは、今までヘンドリックの服を掴んでいた手をスッと離し、静かに一歩下がった。


「分かった。王たるもの、現場のプロフェッショナルが思考する邪魔はせぬ。そなたの好きにせよ」

「ありがとうございます、殿下。……ブラム、サンネ、念のため殿下とエリーゼたちを庇える位置に」

「おうっ!」

「承知した!」


 ルミナリアが王族としての凛とした態度で下がり、前衛たちが盾を構える。

 完全に仕事の邪魔が入らない環境を作ってもらったヘンドリックは、岩壁を見つめて呟いた。


「解除できないなら、安全な場所からわざと発動させて、弾切れにさせるしかない」


 ヘンドリックは【土木建築Lv1】と【土魔法Lv1】を発動し、自分たちの目の前に分厚い石の防護壁を作り上げた。そして、壁の隙間から【風魔法Lv1】で小さな突風を放ち、空中の鋼線をピンッと弾いた。


 ――カチャッ! ババババババッ!!


 凄まじい発射音と共に、岩壁の奥に潜んでいた無数の射出機から、猛毒を塗られた黒い針が雨あられのように撃ち出された。

 しかし、それらはすべてヘンドリックの作った分厚い石壁に突き刺さり、完全に沈黙した。


「よし、針は全部出し切ったね。仕掛けはもう空っぽだ」

「おお! さすが旦那様ですわ!」

「力業だけど、安全確実なんだゾ!」


 石壁を崩し、一つ目の罠をやり過ごした一行。

 だが、ヘンドリックの顔は晴れない。彼の【罠発見Lv1】の視界には、ここから先の通路に、気が遠くなるほどの数の罠が赤くハイライトされていたのだ。


「……毒ガス噴射孔、硫酸の落とし穴、接触起爆式の魔法陣……。まるで、俺たちを絶対にここで殺すために作られた『死の回廊』だな。これ、全部わざと発動させてたら、世界樹に着くまでに何日かかるか分からないぞ」


「ならばどうするのじゃ? このままでは進めぬぞ」

 ルミナリアの問いに、ヘンドリックは迷宮の天井と壁をポンポンと叩いた。


「解除もできない。発動させるのも時間がかかる。なら……『罠に一切触れずに通れる道』を、俺が作ればいい」

「は……?」


 ヘンドリックは両手を床に突き、あり余る魔力を一気に注ぎ込んだ。

 ズゴゴゴゴォォッ!

 激しい地鳴りと共に、迷宮の通路の床の石材が盛り上がり、一行をすっぽりと覆う「頑丈な石のトンネル(かまぼこ型の土管のようなもの)」が形成された。


「罠が仕掛けられているのは、この通路の床や壁だ。だったら、罠の上を跨ぐように、装甲板のトンネルを作りながら進めばいい。これなら毒ガスも飛んでくる針も、全部トンネルの壁が防いでくれる」


「……」

 ヒロインたちは言葉を失った。

 それはもはや迷宮探索ではない。迷宮の構造そのものをガン無視した、暴力的なまでの『土木工事』であった。


 ◇ ◇ ◇


 その頃。

 死の回廊のさらに奥深く、闇に紛れて息を潜めていた者たちがいた。

 闇商人ギルドから高額の報酬で雇われた、王国最高峰の『暗殺者ギルド』の精鋭たちである。


「ひひっ。どんなトップランカーだろうが、俺たちの仕掛けた『レベル10罠群』を突破できるわけがねえ。今頃、最初の毒針でハリネズミになって……」


 暗殺者の一人が下卑た笑いを浮かべた、その時だった。


 ――ズゴゴゴゴゴゴォォォッ!!


 迷宮の奥から、不気味な地鳴りと共に「何か」が迫ってくる音がした。

 暗殺者たちが目を凝らすと、そこには信じられない光景があった。


 彼らが何日も徹夜で仕掛けた自慢の即死トラップ群。

 その真上を、謎の「巨大な石のトンネル」が、ズイズイと前方に伸びながら強引に突き進んできたのだ。


 バキッ! メキメキッ! プシュー!

 石のトンネルが伸びるたびに、床の起爆スイッチが踏み潰され、壁から毒矢が虚しく発射され、毒ガスがトンネルの外側で無意味に噴霧されていく。


「な、なんだあれは……!? 罠を解除するどころか、装甲で覆い隠しながら進んできやがるぞ!?」

「あ、ありえねえ! あんなデタラメな土木魔法、どれだけの魔力があれば……ひぃっ! こっちに来る!」


 最強の罠を仕掛けたはずの暗殺者たちは、迫り来る理不尽な「石の土管」の前に、ただただ恐怖の悲鳴を上げるしかないのであった。

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