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レベル1を35個持ったおっさん、有能すぎて美女三人に包囲される〜レベル10大火力至上主義の世界で裏方が最強だった〜  作者: よっしぃ@書籍化


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第103話:猛省する美女たちと、迷宮の異物

 四人の美女に前後左右を完全に包囲され、ヘンドリックはお湯の熱さとは全く別の理由で顔から火を吹きそうになっていた。

 機能美を極めたスレンダー二人と、暴力的なボリュームを誇る巨乳二人。逃げ場のない熱湯地獄の中で、ヘンドリックの意識が限界を迎えそうになった、まさにその時である。


「おっさーん、そろそろいいかー? 俺も入るぜー!」


 脱衣所の方から、ブラムの場違いなほど元気な声が響き渡った。


「「「「っ!?」」」」


 その声を聞いた瞬間、女性陣の動きがピタリと止まった。

 いくら愛するヘンドリックへのアピールとはいえ、一番弟子である若い青年に全裸、バスタオル一枚での混浴現場を見られるわけにはいかない。それは乙女としての、そしてトップランカーとしての矜持が許さなかった。


「た、退却ですわ!」

「むっ、無念であるが撤退である!」

「に、逃げるんだゾ!」

「ええい、今日のところはこれくらいで勘弁してやるのじゃ!」


 ヒロインたちは、先ほどまでヘンドリックに群がっていたのが嘘のように、まるで潮が引くかのごとき凄まじい勢いで湯船から飛び出し、音もなく女子風呂の脱衣所へと消えていった。

 残されたのは、波打つお湯と、放心状態のおっさん一人だけである。


「おっ、すっげえ広いな! さすが師匠の土魔法……って、おっさん!?」


 ガラッと扉を開けて入ってきたブラムが目にしたのは、頭から湯気を立ち昇らせ、真っ赤なゆでだこと化して湯船に浮かぶ師匠の無惨な姿であった。


「おっさぁぁんっ! しっかりしろ! 誰か、誰か回復魔法を頼む!」


 ブラムの悲痛な叫び声が、迷宮の底にむなしく響き渡った。


 ◇ ◇ ◇


 風呂から上がり、涼しい拠点のリビングスペースで冷水を飲みながら、ヘンドリックは深く息を吐いた。

 彼の目の前には、ルミナリア、エリーゼ、サンネ、ミラの四人が、見事なまでに背筋を伸ばして正座していた。


「……申し訳ありません、旦那様。少し、羽目を外しすぎましたわ」

「うむ……そなたをのぼせ死にさせては、元も子もないからのう。わらわも、大いに猛省しておる……」

「主君を危険に晒すなど、騎士としてあるまじき失態である! 切腹してお詫びを!」

「ボス、ごめんんだゾ……」


 さすがに命に関わる、精神的にも肉体的にもやりすぎだったと、四人は本気で反省しているようだった。

 ヘンドリックは疲れた顔で額を押さえた。


「分かってくれればいいんだよ。俺は一応裏方で、みんなのサポートをするのが仕事なんだから、俺が倒れたら元も子もないでしょ? ……というわけで、今日のところは完全に別室で、俺は一人で寝させてもらうからね」


 ヘンドリックが断固たる口調で宣言すると、普段なら「そんな!」と噛み付く彼女たちも、今回ばかりは罪悪感があるのか、しゅんとして「はい……」と頷いた。


『よし、勝った……! ついに俺に、平穏な夜が訪れるんだ!』


 ヘンドリックは【土木建築Lv1】で自分専用の小さな石の個室を即座に作り上げ、そこに布団を敷いた。防音と施錠も完璧だ。

 これでもう、夜這いをかけられる心配はない。ヘンドリックはふかふかの布団に包まれ、泥のような眠りについた。


 ――そして、翌朝。


「……重い。息が、できない……」

 目を覚ましたヘンドリックの視界を埋め尽くしていたのは、見慣れた美女たちの顔であった。

 右にルミナリア、左にエリーゼ、腹の上にミラ、足にサンネ。どうやって厳重な石の扉を突破したのか、完璧な布陣で添い寝結界が構築されていた。


「……猛省って言葉の意味、知ってるかな……?」

 ヘンドリックの虚ろな問いかけに、エリーゼが寝ぼけ眼で優雅に微笑んだ。

「ええ。昨日はお風呂まで押し掛けてしまったことを猛省しましたので、せめてお布団の中だけで我慢しようと、みんなで話し合いましたの」


 全く反省していない斜め上の理論に、ヘンドリックは朝から深く深い絶望の溜息をつくしかなかった。


 ◇ ◇ ◇


 気を取り直して、真層の探索が再開された。

 朝のひと悶着を終え、隊列を組んで瘴気の濃い道を進む一行。ヘンドリックは先頭のブラムの少し後ろで、【索敵Lv1】と【気配察知Lv1】を常に並列稼働させながら歩いていた。


 迷宮の最奥、世界樹の根が眠る真層は、未踏の領域であるはずだ。

 魔物の気配はそこら中にあるが、ヘンドリックの持つ【罠発見Lv1】のスキルには、なぜかずっと引っかかるものがあった。


「ブラム、ストップだ。止まって」


 不意にヘンドリックが鋭い声を上げた。

 その声の冷たさに、ただならぬ気配を感じたメンバー全員が即座に足を止め、武器を構える。


「どうしたのじゃ? 強力な魔物か?」

 ルミナリアが背後からそっとヘンドリックの服の裾を掴む。


「……いや、魔物じゃない。罠だよ」

 ヘンドリックはそう言うと、足元に転がっていた小石を拾い上げ、数メートル先の何もない空間に向かって軽く投げた。


 キンッ!

 小石が弾かれた音と共に、空中に細く黒い鋼線が浮かび上がった。それに連動して、岩壁の隙間からカチャリと金属的な音が鳴る。


「ワイヤートラップ……? 迷宮の中に、あんなものが?」

 ロッテが目を丸くして呟いた。

 迷宮は生き物であり、魔力によって毒の沼や落とし穴といった自然発生的な罠を作り出すことはある。しかし、今ヘンドリックが見破ったのは、明らかに物理的な仕掛けだった。


 ヘンドリックは慎重に近づき、【鑑定Lv1】を発動させる。


「……やっぱりだ。この鋼線も、奥に仕込まれている毒矢の射出機も、魔力で生成されたものじゃない。誰かが意図的に持ち込んで、ここに設置したんだ」

「人工の罠だと言うのか!? 誰も足を踏み入れたことのない、この真層に?」

 サンネが信じられないというように声を上げる。


「ああ。しかも、このワイヤーの張り方や仕掛けの精巧さ、素人の手口じゃない。明らかに、対人用の暗殺罠だ」

 ヘンドリックは、以前、王都の裏社会で暗躍していた闇商人の手先が使っていた道具の形状を思い出していた。


 未踏の迷宮の最奥。

 そこに仕掛けられた、人間を殺すための人工的な罠。

 それは、世界樹を枯らせている元凶が単なる魔物ではなく、悪意を持った人間の組織であることを明確に示していた。


「……気をつけて進もう。ここから先は、魔物だけじゃなく、姿の見えない同業者が相手になるかもしれないからね」


 ヘンドリックのその言葉に、ヒロインたちの顔から先ほどまでの甘い空気が消え去り、トップランカーとしての鋭い戦士の顔へと切り替わった。

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