審判者達の再訪 ③ コリフェーオ視点
時を少し遡る。
コリフェーオは合流したユカリの支援――ユカリの能力で出して貰った刀身が湾曲した双剣(ユカリ曰く、干将莫邪風)を使い、敵の纏め役の男と戦闘を続けていた。
異性の美醜感に興味の無いコリフェーオから見ても、同性のこの男は整った容姿をしていた。
人目を引く容姿に加えて、高い位置で結い上げた銀の長髪と鋭く長い碧い瞳に、得物は陽の光を受けて輝く銀の長剣、身に纏うのは白銀の鎧で、更に青い外套を左の肩から半身を隠すように羽織っている。
ユカリがこの男を――レギオを初めて見た時、『敵ながらカッコいい』と感心して呟いていたので、コリフェーオは『女受けは良いんだろうな』とは思った。
どれだけ見た目の良い男だろうが、レギオの正体は『首無しの死霊騎士デュラハン』だ。
過去に一度、コリフェーオはレギオの首に一撃を加えようとした。そしたらレギオは、器用な事に頭を外して回避した。
頭をポロっと外して攻撃を回避しただけでなく、戦闘中に視界が変わる行為を平然と取るレギオの姿には、流石のコリフェーオも度肝を抜かれた。
レギオとの戦闘を続けていたが、ユカリが何かに気づいて声を上げた。コリフェーオとレギオは鍔迫り合った状態から互いに離れて、二人してユカリの視線の先を見た。
ほぼ同時に、グーフォが振り下ろした戦槌で、背中から串刺しにされたレギオの部下の一人が頭部を潰された。たった今倒れた男で、レギオが連れて来た部下は最後だ。残りはもういない。
「おう、レギオ。旗色が悪いな。部下が全滅した以上、そろそろ引いた方が良いんじゃねぇか?」
「寝言を言うな。連れて来たのは全員『補充可能な新入り』だ。戦闘訓練の一環として連れて来ただけの新入りが減っただけで、易々と退散する訳にはいかん」
「……成程。ユカリとグーフォの無茶が通る筈だ」
レギオが発した『補充可能な新入り』と言う言葉を聞いて、その視線がユカリに向いている事から、コリフェーオは一人納得した。
レギオが保有する審判者としての能力は、『常人をソルダートと呼ばれる準審判者に生きたまま作り変える』ものだ。
コリフェーオの推測が正しいのならば、『補充可能な新入り=ソルダートになりたての準審判者』で合っているだろう。
レギオの能力を考えると、すぐに呼び出せる場所に別のソルダートを待機させている可能性は高い。
コリフェーオはユカリを呼び寄せた。ユカリは何も言わずに、レギオの視線から逃げるように、コリフェーオの背中に隠れた。
レギオがユカリを見ているのは、単純に『可能だった場合の捕獲命令』を受けているからだ。
これには驚かない。ユカリは過去に何度も、他の派閥の連中から狙われた。
希少且つ有能な能力を持った審判者が狙われるのはよくある事だが、レギオがユカリを見たのはそれ以外に理由が有る。
単純に二人の能力の相性の良さだ。
詳細まで想像した物体を具現化させる事が出来るユカリと、準審判者を大量に作り出す事が出来るレギオが揃ったら、悪夢でしかない。
いかに青のブルゥアであっても、数多の武具を創り出せるのは『派閥の代表に近しいほんの一握りの物好きな人員』だけだ。
数百単位で存在するソルダートに武器を供給するのは難しく、ソルダートが持つ武器は『審判者が作った習作ですら無い、調達が簡単な普通の武器』なのだ。
レギオも派閥の代表に近しい人間ではあるが、出自が関係しているのか武具を作る事は出来ない。
けれども、ユカリがいればこの問題は解決可能だ。レギオもそれは理解しているので、過去にユカリは何度もレギオに狙われた。
幸いにも、ユカリが狙われた時には、必ずコリフェーオが共にいたので難を逃れている。
流石にコリフェーオも、レギオに襲われた時にはユカリ一人で対処しろとは言わない……と言うか、絶対に言えない。
緑の中の緑から『ユカリを外に連れ出した際には必ず守れ』と厳命されていると言うのもあるが、苦楽を共にした仲間が敵になる光景は見たくもない。
「コリフェーオ!」
己の名を呼ぶグーフォの声を聞いたコリフェーオは、この戦闘の終わりは近いと判断した。




