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その八
和貴子さんはドンジャラ大会に参加していたので、ぼくは作戦会議がおわると、帰りは一人でバスに乗った。チーム「KAZUO」のメンバーはドンジャラを免除してもらえたのである。
若い女の子とひさしぶりにお話しさせてもらったがために想像以上に興奮していたぼくは翌朝、四時まえに起きてしまった。
「もう眠れそうにないな」
というわけで、とりあえず〈Kの森総合公園〉へ行く。
〈Kの森総合公園〉は、この界隈ではかなり人気の公園である。
しかし昨年の夏祭りのときにここのバーベキュー広場で一年中キャンプ生活をしている人びととK市の職員とのあいだでちょっとしたいざこざがあって以降、
「あそこの公園はちょっとヘンよね」
という噂もささやかれているようだ。しかしヘンだといわれているのは、べつの理由かもしれないとぼくは思った。公園の散歩コースにて、こんな早朝から大勢の婦人たちをはべらせてウォーキングしているみんみんくんを目のあたりにしたからである。
「あれ! 沢田さんじゃないですか!」
「おはよう、みんみんくん。ずいぶん早いですねぇ」
「ええ。だいたいいつも、これくらいの時間に、わたしは散歩しているのですよ。やっぱり今朝は散歩ですか?」
「うん、いや、ちょっと昨夜ね、ひさしぶりに若い女の子とお話ししたものだからさ、なんだろう、気が高ぶっているのかなぁ、朝早く起きてしまったんですよ」
「なるほど、そうだったのですね」
このような会話のあと、みんみんくんのパーティーにぼくもまぎれこんでウォーキングすることとなる。
ご婦人方は「やさしい悪魔」を合唱していた。だからぼくは、みんみんくんに、この合唱についてたずねてみる。
「わたしは音楽教室で彼女たちに教えているのですよ」
「そうだったんですか」
きょうの夕方、ファストフード店へ迎えにいく約束になっているモモヨちゃんのことも重ねて伺ってみる。
「モモヨクンなら、わたしの生徒ですよ」
「奇遇だな」
「知り合いだったのですか?」
「いいえ。昨夜はじめてお話ししたんです」
みんみんくんが言うには、今朝方キャンディーズを教材にしているのは、
「じつは昨夜、そのモモヨクンから合唱するよう催促されたのですよ。人助けうんぬんといってましたので了承したのですが……」
とのことだった。ぼくは反射的にキャンディーズにたいする日々の姿勢をざっとおしえる。
「そんなにキャンディーズのファンだったのですか! 凄い」
ぼくはチーム「KAZUO」の例の仕事のことも若干得意になって伝える。するとみんみんくんはその仕事に、
「わたしもぜひお供したいです」
と参加を強く希望してきた。みんみんくんはいったいに物好きなのである。
「沢田さんだって物好きですよ。こないだだって、青空市で――」
「いや、あれは売ってる人が小柄だったからさ」
「そういえば、モモヨクンも小柄だったな……」
「きょうはいちおう古書店に行く予定なんです」
「わかりました」
そんなわけでわれわれは、待ちあわせ場所を、ぼくの住まいとみんみんくんの住まいのほぼ中間地点に位置している〈K市立図書館〉に決めて、
「それじゃあ、のちほどね」
「はい、お願いしまーす」
といったんわかれることにした。




