二次会
「お疲れさまー」
「二次会行く人ー?」
「おっさきー」
各々自由に散っていくのは
大人数の飲みのいいところかもしれない。
その波にフワッと乗って
私は高木さんと橘さんと一緒に道を逸れる。
「高木さん、橘さん、飲み直そ」
ね!と2人を見ると
缶ビールをそれぞれ持っている。
いつの間に…。
「橘、この辺いい店知ってる?」
「うーん、立ち呑みでもいいっすか?」
多分私を気遣って2人の視線を感じた。
「立ち呑みいいですよ!」
実はあまり行ったことがない。
1人バーは良く行くけど、
立ち呑みに1人で入る勇気と度胸が私には
まだまだ足りない。
だから、2人に連れられて入る
駅前の立ち呑み屋さんはすごく新鮮だった。
こじんまりとした店内
外にもテーブルがあって
椅子として使っていいのか
何かの箱が至る場所に積んである。
2人はやっぱり慣れていて
その箱を持ってきてテーブルを
作ったり椅子にしたりしてくれた。
しかし、箱は箱。
なんとも簡易的な飲み場所が完成。
外で飲むお酒は美味しい。
あまり手を出さない日本酒を
2人に付き合って飲むと
ホンワカ身体が温まって
余計に夜風が心地よく感じる。
「深山さん、さっきアイツに絡まれてた?」
高木さんが珍しく話を蒸し返してきた。
よっぽど心配してくれたんだろう。
お酒のせいなのか目を潤ませて
私を覗き込んでくる。
くっ、かわいいじゃないか…高木さん。
あの程度の絡みなんて
大したことないんだけど
女の子扱いしてくれてるのが
ちょっぴりくすぐったい。
「俺の肩空いてるよ、的なこと言ってたけど…
別に大丈夫です!」
「ありがと!高木さん。優しいなぁ」
そう答えながら
無意識に橘さんの気配を確認してしまう。
今どんな顔で
こっちを見てるの?
聞いてるようで聞いてない
聞いてないようで聞いてる
どっちもあり得る気がした。
「橘さんも心配してくれて、
ありがとうございました」
だけど、やっぱり気になって
つい口から出てしまう言葉。
「だから言ったのにさー、
なんつーか、お人好し?
飲み会まで気を遣って
あんなのに
いい顔しなくていいんだって」
「もう仕事の話やだ!酒が不味くなる」
猫モードの橘さんは
毒を吐いてるのに、纏う空気は柔らかい。
ふんわり笑うと私の頭をポンと撫でた。
立ち呑みのテーブルに頬杖をつくからか
身長差があまり気にならない。
2人は立ってて私は簡易的な箱の椅子に座る。
懇親会より気が休まる雰囲気で
この2人との飲みの時間は
すごく好きだ。
何を話しても問題ないし
高木さんは忘れちゃう。
橘さんは蒸し返されるのを嫌うから
「あの日の…」なんてわざわざ言わないし。
やっと安心できる時間が来た気がした。




