楽しい時間
22:30
何杯飲んだんだろう。
私は大分ペースを落としているけど
背の高い橘さんはともかく
小柄な高木さんは
どこにお酒が入っているのか
不思議で仕方ない。
「そういえば、橘。今度キャンプ行こ」
「どこからキャンプ出てきた?」
2人の掛け合いは面白くて
コロコロ変わる話の展開と表情は
見ていて飽きないし
多少沈黙があっても
全く気を遣わない。
高木さんは
キャンプの話なんて
明日には忘れちゃうと思うのに
約束しててどうするんだろ?
とか考えちゃう私は
酔ってる割には冷静だと思う。
「こないだ階段から落ちちゃってね、血が出たの」
「でもネクタイ赤いのしてたから
自分で気づかなくてさー」
ぎょっとするような話も
ケラケラと笑いながらする高木さん。
「え?大丈夫だったんですか?」
さすがに反応してしまう。
次の瞬間
マジメに返してしまったことを
後悔することになる。
「どうせ覚えてないから、このおじさん」
「でしょ?」
「そうそうー、なんか痛いなって」
「イヤフォン落としちゃったみたいで、
最悪だったよ」
「そこじゃない!危ないから!高木さん」
「今日も飲んでるし気をつけないと」
「大丈夫!橘が送ってくれるからぁ〜」
「ぜーんぜん酔ってないしね」
…と言いながら
身振り手振りが激しくなって
空のグラスをテーブルに倒す高木さん。
嘘つきめ。
めちゃくちゃ酔ってるじゃないか。
ただグラスが倒れただけなのに
顔をお酒で赤くした
いい大人が3人笑い転げる。
楽しいな、
この時間がずっと続けばいいのに。




