お開き
23:15
「深山さん、終電平気?」
…終電
一気に現実に戻される強烈なワード。
あんなに飲んでるのに
終電のこと気にしてくれるんだ…
橘さん。
「東海電鉄だっけ?最寄りはどこだっけ?」
スマホ片手に調べてくれてる様子。
「山谷駅です。各停しか停まらなくて」
「あ、じゃあもうそろそろ出ないとね。
23:45が最終」
「はい!ありがとうございます!
えっと…お会計は?」
「大丈夫、あのおじさんが払ってるから」
「え?」
高木さんの方を見ると、
グッと親指を立ててニカッと笑ってる。
俺に任せて!と言わんばかりに。
「いやいやいや、いくらですか?払います!」
慌てて財布を取り出そうとする私の手を
橘さんがそっと制止する。
「こんなときくらい立ててあげて」
私にはコソッと囁く。
次は声を張って高木さんに向けて…
「ほら、帰るよ!俺が送るんでしょ?」
よろっと立ち上がって
持ったカバンの取っ手。
ファスナーが閉まってなくて…
パカーッと中身が丸見え。
「あー、もう…ぶちまけちゃうでしょ」
せっせと橘さんがお世話。
いつもの光景だけど
やっぱり橘さんは
酔ったフリなんじゃないかと思っちゃう。
だけど、あんなに飲んで
酔わないわけないのにな。
ところどころスマートな所作が出てくる。
理性を保ってるような…。




