キャラ変
20:30
「深山ちゃん、こっちで話そうよ」
3人内輪飲みになりかけてた私に
隣の部署の営業さんが声をかけてくる。
以前一緒の部署で一緒に働いてた人だ。
「あ、はーい!ぜひ」
高木さんが頼んでくれた
赤ワインのグラスを持ち、
私は席を立って移動しようとする。
「だーめ、深山さんは俺らとだから」
グイッと腕を掴まれる。
え?
「なんだよ、橘。仕上がってきたのか?」
「深山さん独り占めするなよー」
「うっさい!セクハラ親父!」
「…って深山さんが言ってます」
「はぁ?!なにそれ!
言ってないです言ってないです!」
あ、この雰囲気…
橘さん、キャラ変わってきた。
さっきまで高木さんだけにコロコロしてたのに
饒舌になってきたし、
毒を堂々と吐くようになってきた。
確かにあの営業さんは
飲むと肩組んだり顔の距離がだいぶ近かったり
色々スレスレじゃないか?って思うことはある。
もしかして助けてくれた?
「深山ちゃん、せっかくの懇親会なんだし、
メンバーチェンジもしながら飲んでよー」
「はい、はーい」
軽口でササッとその場を去って
高木さんや橘さんと違う場所で
1人景色を見ながら、グラスを空ける。
橘さんが豹変するのはいつものことだ。
わかりやすい高木さんとは違う。
何を考えてるのかわからない。
不覚にもドキッとしてしまった自分の心を
平常心に戻すように遠くを見つめる。
そもそも橘さんは、
あの営業さんのこと嫌いだもんね。
飲んだ翌日、
職場で飲み会反省会を始めて
大抵話題に上がるのが橘さんのことだから。
あのキャラ変が演技なのかとか
二重人格なのかとか散々言われるのが
本当に嫌だって言ってた。
そう、あれは、なんの意味もない。
だって、高木さんと笑い転げながら
赤ワインのボトルのおかわりをしてるんだから。
ただの酔いかもしれないし
私を本当に助けてくれたのかもしれないし
でもそれを深堀りされるのは
絶対に嫌がるから
私も何もなかったふりをしないといけない。




