光る2番
RRR⋯⋯
橘さんの異動の発表のせいで
朝礼は終わったのか終わってないのか
よくわからないグダグダな感じになっていた。
部署内はザワザワしていて
この分だと
午前中は仕事になりそうにない。
そんな中で鳴る電話。
ザワザワしている声が
電話先に聞こえないように
気休め程度かもしれないけど
声に背を向けて受話器を取った。
「お電話ありがとうございます!」
「新湊株式会社でございます!」
いつもの癖で電話のランプを見ると
⋯⋯2番が光っていた
良かった、お客様じゃなかった。
ホッとすると同時に
今2番が光ることはありえない
ということに気づいてハッとする。
だってーー
2番が割り当てられているのは
「橘さん」
異動の挨拶らしきものをして
席についていたはず。
今そこにいるはず。
まだザワザワしているし。
声が入ることを気にして変えた向きを
騒がしい方に戻して
目を忙しく動かしながら橘さんを探す。
「もしもーし」
なのに
電話口から響く声は確かに橘さんだった。
やけに反響しているように聞こえる。
電話から高木さんの声は聞こえてこない。
え?
オフィスにいない?⋯⋯
「もしもーし、深山さん?」
「また一緒の部署だね、今度はお手柔らかに」
橘さんの声が
私の頭の中でも響き渡る。
ーーわざと⋯⋯だ。
これ、面白がってるやつだ。
「私が出なかったら、どうするつもりだったんですか?」
「んー、そしたら切っちゃうかな」
「今度はお手柔らかにって、どういう意味ですか?」
「そのままだよ、前すげー怖かったからさ」
「俺、打たれ弱いの」
⋯前?
⋯⋯すげー怖かった?
覚えてる?
私しか覚えてないと思ってた昔のひと言。
ーー
深山さんって人の心がないよね
ーー
あの抉るようなひと言。
もしかして、覚えてる?
「私、ちゃんと人の心持ってます!」
「はは、知ってるって。わかってるよ」
橘さんは全部覚えているかもしれない。
それに彼は私の前で
こういうキャラじゃなかったはず。
酔いが回った時の猫のようなじゃれ方。
シラフではありえない振る舞い。
ーー浮かれてる?
そんな喋り方。
こんな橘さん、私知らない⋯⋯
ただでさえ異動の話で混乱しているのに
私のなかの橘さんのイメージまで
崩しにかかってくる意地の悪さ。
からかってる?
私の様子をどこかで見て笑ってる?
キョロキョロしながら
電話をする私を周りが気づき始めて
大丈夫?とメモを出される。
私も指で丸印を作って
必死に平静を保つ。
そんな私をやっぱり
どこかで見ていたんじゃないかと思う。
「あ、サシ飲みいいよ」
「キレイな洋服じゃん。今日行く?」




