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飲み会帰りのキスの理由  作者: 柚原 澄香


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アップデート

なんとなく『朝帰り』には抵抗があった。

罪悪感もあったし

今まで一度もしたことがなかった。


旦那は私がいつ帰ろうと

全く関心がないと思うのに。

そもそも家にいないから

私がいつ飲んで帰宅しているかも

わかっていないはずなのに。


『自主規制』

というワードがしっくり来る。



だけど

今回初めてそのラインを越えてみて

意外となんてことないことを知る。



金曜日朝出かけたままの部屋。

私以外誰も帰って来てない部屋。



私だけがルールを守る。

なのに

ルールを守っていることは

感知されない。


こんなに虚しいことだったんだ。



ルールを守るように、とも言われない。

心配もされない。

家庭では、

私の存在は『無』だと実感する。


同じように私も

旦那がどこで誰と何をしていようが

全く気にならない。


空気以下。

そんな夫婦関係。



そんな私でも、会社に行けば

それなりに会話はあるー

頼りにもされるーー

飲みに行けば楽しいーー

自分が不幸だとは思わない。

『無』だとも思わない。



でも…

異性に触れられることだけは

もう私の人生で起こり得ないと思っていた。


結婚しているし

今はハラスメントも大分厳しい。

飲み会で肩を触られるくらいはあるけど…

それくらい

適当にあしらえるスキルはある。



なのに、あのキスは違った。


抵抗したけど…

だんだんその力が弱くなったのは

諦めたからではなく

きっと受け入れ始めたから。



私も女だったんだと思い出してしまったから。

…というか

女でいてもいいのかなと頭をよぎったから。


たった一瞬

橘さんは覚えてないだろうけど

あのときだけは

私を求めた?と思ってしまった。



求められること

必要とされること

プライベートでは一切なかったから。



トクン…



トクトクトク…




急に

自分の身なりが気になって

鏡を覗くとボサボサの私がそこにいた。


そういえば

メイク道具も長いこと新調してない。

情報も取りに行ってない。


クローゼットには

オフィスカジュアルの服ばかり。



明日ピンク色のアイシャドウでも

買いに行こうかな。

ついでに秋服のスカートも。


自分の買い物なんて

久しぶりでワクワクしてくる。

スマホでトレンドを調べるのも久しぶり。



別に誰に見せるわけでもないけどー


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