存在感だけが増していく
朝帰りした私を迎えた部屋は
シンッと静かで
カーテンがしまったまま薄暗い。
畳の上に横になる。
意外と疲れていたのか
冷たさが気持ち良い。
「はぁ」
ため息だけがやけに大きく響く我が家。
夜勤の旦那と私は、
すれ違いが続いていた。
私が帰る頃、彼は出かけて。
私が出かけると、彼は帰る。
昔はそれでも、
休日が合えば出かけたり、
一緒に食事をしたりしていた。
でも今は、
彼がいつ休みなのかすらわからない。
重なる時間が全くないほどに、
すれ違っていた。
むしろ
彼が私を避けているように
感じることも増えていた。
そんな最中にあのキス。
私の隙間に入り込んできて、
出ていってくれない。
ずっとずっと
私の中にいるあの出来事。
だけど、
さっきの話で
橘さんは覚えていないかも…と
思い始めていたから。
やっぱり聞けない。
そのタブーさが追い打ちをかけて
私の中で存在感を増していく。
普通、無自覚にキスする?
しかも忘れちゃう?
終電の時間気にしてくれるのに?
酔っていても
時々なんかしっかりしてるように見えるのに?
だから、疑ってしまう。
橘さんの記憶をーーー
悔しいけど
ずっと気にしてしまう。
私……
もしかして………
いや、ダメだ。
今のこの気持ちに名前をつけちゃいけない。
それこそ
酔った勢いになる。
だから
私はまたこの想いを先送りにして目を閉じた。




