距離が近づく
「かんぱい」
テーブルに置かれた
泡が少し消えかけたジョッキに
橘さんがコツンと
自分のグラスを当てた。
その仕草から目が離せなかった。
くっついたのは
グラスとジョッキ。
なのにーー
身体がくっついたような錯覚。
あの夜を思い出す。
カーッと顔が熱くなって
ジョッキのビールを一気に流し込んだ。
「ぬる…」
思った温度ではなかったビール。
いつから頼んでくれていたんだろう。
「高木さん、ぬるい!」
「えー?ホント?」
「じゃ、俺飲むね。新しいの飲んで」
高木さんは何も気にせず
自分のビールと私のビールを交換する。
「ちょっと、おじさん」
「それセクハラじゃね?」
私も
高木さんの飲みかけのビールを
気にせず飲もうとしていたけど
橘さんに制止される。
「高木さんだし、大丈夫ですよ」
「いや、ダメ」
「てか、それもぬるいよ。新しいの頼むから」
サッと右手を上げて店員さんを呼び
「早めにお願い」
と頼んでくれたビールは
本当にすぐに手元に届いた。
「あ、じゃあ私のビールは自分で飲みます」
高木さんの目の前に置かれた
私の飲みかけのジョッキは
既に橘さんが飲み干していた。
…え?
「残したらビールに失礼」
「でしょ?」
ニコニコ笑う橘さんのそれは
完全に酔ったモード。
人懐っこくコロコロ表情も変わる。
よく喋る。
こうなると
高木さんとじゃれ合いが始まる。
もともとよく喋る高木さんと
饒舌な橘さんの掛け合いは飽きない。
私は、胸の音よりも
2人の声に耳を傾けることにして
純粋に飲み会を楽しんでいたー




