立ち呑みagain
「…っていうか、これなんて書いてあるんだ?」
高速で話されるニュアンス指示。
必死でメモした自分の字が読めない。
あぁ…
時間だけが刻々と過ぎていく。
私が頭を抱えている
今この瞬間
飲み会が進行していると思うと
猛烈に虚しくなってくる。
橘さんからの仕事は
2/3くらい終わっただろうか。
「当の本人が飲んでるんだし…」
「急いでないよ」
「週明けでいいよ」
「正直者がバカを見るよ」
私の黒い部分が
見え隠れし始める。
いや…
仕事を残して帰るのは嫌だ。
できるなら今日やって帰りたい。
でも…
今日は、あの夜のことを聞ける
絶好のチャンスかもしれないよね。
黒と白と私の中のゲージが慌ただしい。
脳が疲弊した夜の時間に
この依頼は追い打ちをかける。
頭が働かなくなって
手が進まなくなっているのも
効率が悪すぎる。
何より
「読めない、何言ってるかわからない」
この状況が
金曜日の残業時間で
更に私を疲れさせる。
「もう、いいや。頭をリセットして来週やろう」
私の黒い部分が勝った瞬間だった。
考えることを遮断したら
早く立ち呑み屋さんに行きたくなった。
AB型だよね。ホントに。
と言われる所以は、こういう所なんだと思う。
やらないと決めたら、やらない。
バツッと切り替える。
PCの電源を落とし、
オフィスの戸締まりを確認して施錠する。
警備オンのアラームが鳴り響く。
「仕事、諦めました」
「今から行きます」
「まだいますか?」
今夜は
橘さんと向き合いたい。
蒸し返されるの嫌いなのかもしれないけど
私は納得したいから。
覚えてないなら、それはそれでいい。
スッキリさせよう。
もう真っ暗で月が見える金曜日の夜。
私は、スマホをしまうと
両手を伸ばして大きな深呼吸をする。
ひんやりした空気が身体に入ってきて
すごく心地よい。
ガチガチの首や肩を回したり揉みながら
この間の立ち呑みへと
足を急がせた。
ーー既読2
20:48




