2番への反撃
「深山さん、また橘さんから…」
「私、代わりに聞きましょうか?」
さすがの指名ラッシュで、
私も自分の仕事が滞り始める。
それを気にしてか隣の席の内勤さんが
声をかけてくれた。
この状況、
橘さんはわかっているんだろうか。
だんだんと私もイライラが
顔に出てきているのかもしれない。
あー、もう腹立つ。
しばらく関わりたくなかったのに
逃げれば追ってくる。
追えば逃げる。
グループLINEも
相変わらず
橘さんから送られてくることはなく
既読スルーを貫いて
飄々としている姿が目に浮かぶ。
でも、1つ言えるのは
読むのは早い。
まるで待っているかのように。
「代わりました、深山です!!!」
本日何度目かの「2番」からの電話。
「お疲れさまです。
さっきの話の補足で…電話しました」
「大丈夫です。補足いらないです」
受話器を左肩に挟んで、
手元はキーボード
目線はPC画面を見つめて
まともに話をするのを半ば諦めかけた。
カターンッ!とエンターを強めに
イライラをぶつけるように叩く。
それがどうやら聞こえたようだ。
「怖ッ!何、忙しいの?」
「誰のせいだと思ってるんですか?!」
「暇なら自分でやってください!」
こっちの気持ちも知らないで
キスのことなんて
微塵も覚えていない素振りで。
橘さんがそうくるなら
私も何もなかった
何も覚えていないことにしないと。
…だけど
そんな簡単じゃないんだよな。
「はぁ…」
なんなの。この人。
私をつついて遊んでいるみたいに。
もしかして
私から蒸し返させようとしてる?
私が覚えているか確認してる?
ーーまさかね
「じゃあ、もうかけてこないでください。
忙しいんで。」
本来やってはいけないガチャ切り。
わかってて、わざと
八つ当たり気味に受話器を置いた。




