お見舞いに来たのは
今回、被害が出てしまった。それも、まだ幼い少女。これは、ヒーロー協会にとって、あってはならない失態だ。
ひーらちゃんたちの活躍もあって、外傷は残らなかったらしいが、問題は心である。
十分な治療は受けてもらうが、ヒーローの一員として、誠意を持って謝罪すべく、俺、ウルフナイトは少女の病室へ訪れていた。
今回の任務に参加したヒーローの中でも、狼顔で異形な俺は、女の子向きの正統派ではない。
しかし、少女を助けた者としてはこの役割を誰かに任せる訳にはいかない。
保険で、口が上手く人当たりもいいリアムを引きずってきて、待機させているので、何とかなるだろう。
そして、いざ病室へという時、狼状態で聴力アップした耳が、少女の言葉と二号の戸惑いを正確に捉えた。
これは、ひーらちゃんファンクラブ会員第一号(自称)の俺の出番だな!
「失礼する」
入室の許可を取り、中に入った俺が見たのは、頭を抱えて苦悩している二号と、輝かんばかりの笑顔で俺を迎える少女。芯が強そうな子だな。
「俺たちの力不足で怪我をさせてしまって、ごめんな。他のヒーローたちも、皆反省している。いずれ皆で謝罪に来るが、俺が先に見舞いの品を持ってきたんだ」
怯えさせないよう、心持ち柔らかい口調で伝え、手にした袋を掲げると、少女はぶんぶん頭を振る。
「ううん!助けたくれて、本当にありがとう!ウルフナイトさんも、ほかのヒーローも、気にしないでください」
うん、なかなか良い子じゃないか。しっかりしてる。
「少し話してもいいかな?」
「はい!イス、そこにあるからどうぞ!」
「ありがとう。二号、隣座るぞ」
二号は固まったままだが、別にいいか。
「なあ、俺の顔、怖くないか?」
えっと目を丸くする少女。そして、慌てて否定する。
「コワくなんかない、です。助けてもらったし、ウルフナイトさんはヒーローだし、うちのお母さんが怒った時の方が、もっとコワいです!」
きっとこの子は、まっとうな親に育てられたんだろう。とても素直だ。
「そうか、実は、さっきの緑のひーらちゃんについて話していたのを聞いてしまったんだ。きみは人を見た目で判断する子じゃなさそうなのに、なぜ緑のひーらちゃんが苦手なんだ?」
少女が言いづらそうにうつむいたので、俺は見舞いの品と一緒に持って来た、猫のぬいぐるみを差し出す。今回の事件現場に落ちていたものを、あとで歯磨き粉みたいな名前の予知・予言課の奴が回収してきたらしい。
「あたしの猫ちゃん!」
嬉しそうにぬいぐるみを抱きしめた。やっぱり、この子のか。
「その猫のぬいぐるみで思い出したんだが、きみは前にもピンクのひーらちゃんに怪我を治してもらったことがあるだろう?」
俺の言葉に、少女は頷き、二号ははっとしたようだった。
二号の御披露目イベントで、転んで泣き、駆けつけたひーらちゃんを見て、さらに泣き喚いた女の子が、彼女だったのだ。
「うん、転んじゃって、痛くて泣いてたら緑のひーらちゃんがびゅーんって来たから、ビックリしてもっと泣いちゃったの。それから、ちょっと苦手なんだ……」
……あいつは考えるより先に動く奴だからなぁ。
だから俺がいつもフォローすることになるんだ。
「そうかそうか、それは恐かったな。でも、緑のひーらちゃんはきみを心配して、思わず飛び出して来ちゃったんだ」
少女は、真剣に俺の話しを聞いてくれている。
「今回もな、きみが怪我をしたって聞いて、ピンクのひーらちゃんを連れて来たのは、緑のひーらちゃんなんだよ。ピンクのひーらちゃんが怪我を治すのが得意なように、緑のひーらちゃんは、足が速くて力持ちなんだ。二人はそうやって、助け合ってるんだよ。……なあ、二号、そうだよな?」
俺が尋ねると、二号はその通り!と言わんばかりに首を縦に振る。
……頭取れるぞ。気をつけろよ。
少女は、ぱっと、それは明るく笑った。
「そうだったんだ!緑のひーらちゃんも、あたしを助けてくれたんだね!このまえも心配してくれたのに……あたし、緑のひーらちゃんに会って、ありがとう、ごめんねって伝えたいな」
ちゃんと分かってくれたみたいだ。こういう子ばかりなら、ひーらちゃんも苦労しないのにな。
俺は、少女の頭を優しく撫でる。
「きみがもっと元気になったら、他のヒーローと、緑のひーらちゃんも連れてまたお見舞いに来るよ。」
「うん!あたし、皆が安心できるように、はやく元気になるね!その時はピンクのひーらちゃんも来てくれる?」
二号は腕を広げて、全身で同意を示す。
「……でも、緑の、とかピンクの、とか同じひーらちゃんでわかりにくいねぇ……そうだ!」
閃いた、と少女が手を叩いた。
「ピンクのひーらちゃんのこと、あたし“ぴーらちゃん”て呼ぶね。可愛いでしょ?」
ピンクのひーらで、ぴーらか。安直だが、分かりやすくていいんじゃないか?
少なくとも、今の一号二号呼びよりよっぽどいいな。
「そうだな、とても良い名前だ!」
口の達者な奴もいることだし、よし、早速上に掛け合ってみよう。




