二号の後悔
「ありがとう、ありがとうひーらちゃん!もう、治らないと思ってたの……」
女の子がシーツで顔を覆うようにして、泣いています。可愛らしい顔は涙でぐしゃぐしゃですが、傷一つ残っていません。
…………思っていたよりも、深い傷でした。もう少し治療が遅かったら、痕が残っていたでしょう。
誰の力が大きいかなんて、言わなくてもわかりますね。
私、ひーらちゃん二号が現在おりますのは、H&H病院の病室です。この病院は、元は引退したヒーローが開設した小さな診療所でしたが、彼を慕う者達が集まって、あれよあれよと大病院になった所です。
ここなら、心のケアもしっかり行ってくれるので、安心ですね。
ついでに、私も診て頂きましょうか?
ちょっと、いろいろショックを受けてまして……。
「ひーらちゃんが、来てくれたおかげだよ。あ、あたし、スゴく怖かったの。助けてくれたヒーローにも、ひーらちゃんにも、いっぱいかんしゃしてる!」
あぁ、そんなキラキラした目で見ないで!いつもなら誇らしいばかりなのですが、今の私にはちょっと刺さります……。
どうやって伝えましょう?私だけの力ではないと。
最初は、問答無用で連れて行かれて、戸惑うやら怒るやら怖いやら、混乱状態でした。ですが、すぐに気付きました。速度はもの凄いのですが(景色が勢いよく後ろに滑って行きました……レーサーの視界はきっとこんな感じだと思います)激しい動作にも関わらず、振動は最小限。
一号の耳でカバーされ、空気抵抗もあまり感じていません。
私、乗り物酔いするタイプなのですが、とても滑らかに移動されたので、苦にならなかったのです。
……さすがに、高い所から飛び降りる時の、内臓が縮むような浮遊感はありましたが、それくらいですね。
それなら、ショックはさほどないだろうと思うでしょう?違うのです。自分がいかに視野が狭かったか、気付いてしまった、そのショックです。
女の子の身を、ひたすら案じていた一号。日頃大人げない対応ばかりの私にも、よく気を遣ってくれました。そして、女の子を怖がらせたくなかったのか、手柄を誇らず、姿を見せずに去ったのです。
……ただのヒーローの追っかけには出来ない、崇高な行為だと思います。
私、彼女のこと、歪んだ目で見ていたのですね。
気に入らないから、無視する。相手を知ろうともしない……返す返す、私の行動残念過ぎます。
「あのね、ひーらちゃん。あたし、緑のひーらちゃんは苦手だけど、ピンクのひーらちゃんは大好きだよ!」
あぁ、私の心に更なる追撃が!あなた、むしろ私を試してませんか?
一号は、あなたをすごく心配してました!あなたのために、無茶してくれたんです!
声が出せないのがもどかしい……本当にごめんなさい、一号。あなたはずっとこんな気持ちだったのですね。
何とか伝えたくて必死に身ぶり手ぶりする私を、女の子はキラキラした目で見ています。
「ピンクのひーらちゃんはやっぱり優しいねぇ!緑のひーらちゃんを庇おうとしてるんでしょう?」
伝わらない……。ゆるキャラの役目を果たしていない、努力が足りないというのは、傲慢な考えでした。見た目が与える印象は、大きいのです。いくら頑張っていても、それを伝える術もない。
詰んでます……。
むしろ、私が努力するべきでした。私が一緒にいて、仲良しアピールをしていたら、一号はもう少し受け入れられていたかも。もしかしたら、上層部はそれを望んでいたのかもしれません。
無力感に、私が打ちひしがれていた時でした。
彼が、やってきたのです。




