誘拐じゃないよ②
「~~~~~~!?」
二号の、声にならない悲鳴が伝わってくる。
あたしは、点々と並んだ木の一つに着地し、そのまま木々上を飛び跳ねて行く。時に枝のしなりを利用して勢いをつけると、猛スピードで現地へ向かった。行きすがら、二号に謝罪することも忘れない。
「……ルールを破るけど、話させて。いきなり攫うような真似をして、ごめんなさい。でも、癒やしの力は、早ければ早いほど、効果が出るのでしょう?」
あたしは、雷電さんのバイクは、ヒーロー随一の速さを誇るが小回りが利かないこと、公道しか走れないデメリットを説明し、あたしなら道無き道もスムーズに通れること、土地勘もあることを告げる。
比較するなら、あたしの方が確実に早く到着するのは、間違いないと。
「絶対に、あなたに怪我をさせるヘマはしない!
あたしのこと、信用出来ないかもしれないけど、ごめんなさい、今だけ我慢して!
その女の子、きっと不安だと思うの……少しでも早く、癒やしてあげて!」
あたしもそうだった。両腕がもう動かなくなるかもと、怯えてた。結局ダメだったけど、必死に治療してくれたお医者さんや、泣きながら抱きしめてくれた看護士さんには、とても慰められたっけ……。
だから、あたしも最善を尽くすんだ!
民家の屋根からブロック塀に飛び移った時、何かチカチカした光が目に飛び込んできた。
気になって光の元に視線を向けると、そこには病院へ向かう一台の救急車が、ヒーロー本部の車両に先導されていた。……あれだ!
月色砂子で体を浮かす。浮いたタイミングで、全力でブロック塀を蹴る!すると、弾丸のような推進力が生まれるのだ。
「~~~~~~~!?」
本日二回目の、二号の声無き叫び。本当にごめんね!あとで土下座でもなんでもするから!
計算どおり、ちょうど救急車の上空で勢いが弱まったので、浮遊に切り替え、ふわっと救急車の屋根に立つ。
窓をコンコン叩くと、中の、いかにも占い師風の人が、後ろの搬送扉を開けてくれた。
きっとこの人がクリアクリスタルさんだね。予知・予言課なだけあって、説明要らずだ。
あたしはそっと、二号を中に入れた。
もちろんあたしは入らないよ。だって相手は8歳の女の子。絶対、ひーらちゃんを見たら泣くから。
……これ以上、怖い思いはさせたくないの。
そのまま屋根にひっこもうとしたあたしの耳を、クリアクリスタルさんがくいっと引いた。
真っ青なローブとヴェールで表情はわからないが、その手にある水晶玉を光らせてあたしに合図してくれたんだよね?
彼はあたしにぐっとサムズアップしたので、あたしもそれに応える。
いい仕事したね!ありがとう!




