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Recall 前編

 女性が眼の前で暴れている。

 何の話かと言えばオレドギーの見ている夢の中の話だ。

 夢は人間の脳の記憶の整理現象と言われ、これはオレの過去だと思われるがオレにはこの過去の記憶がわからないのだ。

 わからないと言うのは実はオレが医学的に記憶喪失のためだ。

 5年以上も前の話だがオレはある日交通事故にあった。

 交通事故にあったと言うのも実はオレにも明確な記憶が存在せず、時折事故寸前の光景が瞬間的にだが思い出す現象、医学的にはフラッシュバックと言うそうだが、これにも実感が持てない状態だ。

 ある日眼が覚めると病院のベッドで、医師と看護師、仕事の同僚だと名乗る人間たちに囲まれていた。

 朝の出勤途中の事故で、飲酒運転な上信号無視をした大型トラックに横から衝突されたと説明を受けた。

 運転席側に衝突され車も原形をとどめないほどに変形して逆さを向いた上近くの建物の壁に激突し、即死は免れないと考えられていたが、オレは左腕こそ骨折したが、軽い足首の捻挫、頭を打ち3針ほど縫う怪我で済んだ。

 ある意味大けがと言える状況だが事故的に比較的軽症で、事故当時半場だが意識もあったそうで、当時地元のニュースで奇跡だと報道もされ、軽くだが事故後病院でインタヴューも受けたこともあるが、オレは事故以前の記憶を失っていた。

 医学的に言うと記憶はなくならず、人間の脳は記憶の入れ物だそうで、記憶喪失と言うのは入れ物の開き方や場所、鍵が見つからず開けなくなった状態を言うそうだが、何にしてもオレは過去の記憶がなかった。

 

株式会社 マルチ アニヴァーサリー プランナー

ブライダル及び葬儀チーフ

ジェームス ダグラス


 幸いと言うべきか、同僚と名乗る人間たちが教えたオレの身分は何者かと言うと、冠婚葬祭の代行業者の主任だそうだった。

 出産祝いから葬儀まで、パーティーと言ったありとあらゆる行事のセッティングの代行をする業者で、オレは結婚と葬儀の主任だと言われたが、仕事のことも忘れていた。

 幸いなのは仕事のことは身体が覚えていたと言うべきで、復帰して2、3日程度で手順やら何やらを教えられている最中に一気に思いだし、オレはすぐに言われたとおりのチーフに戻れた。

 気になるがどうしようもないし、現在は聞くのを止めて諦めたと言うよりも気にしなくなったが仕事以外のほかの過去だった。

『忘れてよかったんだ。』

『話さなかったし知らないんだ。』

『別の人間に聞いてくれ。』

 仕事の記憶を取り戻したことはよろこばれ、同僚たちと仲よくなり酒を飲んだり付き合いもするし、オレに悪い印象はないようだが、彼らは総じてオレの過去を教えてくれなかったのだ。

 住んでいるアパートも仕事関係の資料はあるが、写真や日記と言ったオレ自身の過去と呼べるものが落書きや走り書きのメモの一枚も存在せず、食べ終えた食べ物や飲み終えた飲み物の入れ物が床に落ちているし、少し酒臭い感じがした。

 空気と言うものが悪く、以前のオレはここで朝起きて食べて夜寝ると言った必要最低限の生活をしていたようで、室内全体の空気が重く暗く、気分が少し悪くなり窓を一気に開け、最初の休暇で大掃除をしたことを覚えている。

 掃除中何事かと来た上や下、横の階の人間に話を聞くと酒を飲んで暴れていたと言う話も聞き、オレではどうしようもないし悪い気がしてあやまったが、過ぎたことだしいいと言うように少し困ったような顔で言われ、酒は少しだが控えることにした。

 仕事も順調で給料もよく、同僚たちや後輩にも恵まれているが、過去のことは解らず、詮索しない方がいいと言う状態なのか、オレも詮索を止めたが、問題はオレの見る夢だ。

 記憶喪失以前の記憶に関連しているのだと思うが、本末転倒だがオレが思い出せず、どうしようもないし、仕事も順調な中で、世に言う天からの使者が来て忙しくなったことも原因だ。

 彼らが言うには本来あの交通事故でオレは死ぬ予定ではなくすぐに世に言うこの世に送り返さえる予定の中で記憶喪失以前のオレはあの世である取引をしたそうで、死神代行の仕事をすることになっていたが、記憶喪失の関係で忘れていたそうだ。

 精神、言わば魂と身体の損傷と一致度の関係で生じた事故で職務怠慢による厳重処分は免れたが、最初にした仕事が自分の始末書処理と言う不名誉な仕事になってしまった。

 人間としての仕事も順調で、死神代行の仕事も才能でもあるのか教えられると結構上達しある程度の管轄も任され、記憶以外は順風満帆な人生を歩むことになったが、過去を絶対に忘れるなと言うようにあの夢を何度も見る。

 正確には記憶の片隅の記憶を残した本来のオレこと、ジェームス ダグラスが見せていると言うべきかもしれないが、記憶のないオレには何もできない状態だった。

 どんな夢かと聞かれると女性が必死に暴れているのだ。

 場所はどこかは解らず、広さも解らない上下左右真白な空間で、オレは彼女から2、30mほど離れた場所に立っていた。

 女性の背後には象や恐竜でも通れそうな巨大な扉が見え、代行かは不明だがオレと同じ死神だと思われるが、2人の白いシャツ以外はネクタイまで黒いスーツ姿の男に女性は扉まで引っ張られようとしている中で抵抗しているのだ。

 鬼気迫ると言うべきか本当に必死で、体格的に有利な男2人を突き飛ばし、殴り、振り払いながら泣いていた。

 音や声は聞こえないが大声で泣きわめいているのが聞こえて来そうな表情で、女性は奮闘も無駄に終わり、扉の向こうへと連れ去られて行くのだ。

 男2人は片方が扉を押し開くと女性を扉の向こうへと押し込み、帽子で見えにくく音や声は聞こえないが、手を貸せだの、急げだの、早く扉を締めろだのと言っているように見えた。

 女性はと言えば閉まる直前に泣きそうな顔でダメだと言うように手を伸ばすが、扉は閉じられてしまうのだ。

 これは推測の域だが、記憶喪失以前のオレこと、彼には先に死んだ恋人や妻と言った大事な人がいて、先に死んでいる中であの世で酷いことをされていて、彼女を守ろうとして死神代行になったのではないかとオレは思っている。

 オレ自身夢の中では女性に対する湧き上がる感情と言うものは全くないが、彼女のあの必死な反応から推測しなくても考えられると言えた。

 夢の中のオレは動くことができず、扉の向こうがどうなっているかわからないが、女性はもしかしたらいつまでもあの扉の向こうで泣いているかもしれないが、オレにはどうすることもできず、夢はいつもここで覚める。

 空想の物語のように悪夢を見て跳ね起きるようなこともなく、オレは眼を開くと普通に身体を起こし、あくびをしながら背伸びをしてベッドから降りた。

 時折他人の人生を横取りしたような気を起こし罪悪感を持つこともあるが、彼こと本来のオレとしての仕事は順風満帆だし、必要最低限のことはして、生きていると考えていると言うよりも、強引にだが自分を半場正当化している。

 いつものようにと言えば変かもしれないが、オレは準備を整え、仕事に向かおうと家を出ると、アミが待っていた。

「―――おはようございます。」

「―――――」

「―――少し、時間をいただけますか? 会社にも話を通してありますので?」

 声をかける間もなくアミはあいさつをして頭を少し深く下げた。

 こういう時にアミが来る時は何かよくない上に長い仕事を任される時だ。

 

 朝からディナに呼び出しもらった。

 昨日の夜と言うべきか、5時間以上程前と言うべきか、家に帰り寝ていたわたしアリーは不意に朝にかかって来たディナからの電話で起こされた。

 ライダーズの実験が半場失敗に終わり、バイクも吹っ飛び、あの死神代行の男を探す必要もあるが後にしてと言う状況で、わたしは半塲ふて寝をしている時だった。

 わたしは結婚していて夫のディランと息子のカークがいるが、ディランの仕事の都合で2人は英国にいって家には1人だけの状態で、仕事も休暇出しと言う状況で、疲れてもいるし寝る以外何もしたくないと言う時にだ。

 ケヴィンの家や仕事仲間の家に行ったり飲みに行けばさみしくもないが、自分をごまかすようなもので、結局辞めてだれもいない家に帰り、1人で寝ていた。

 去年は3人で楽しく過ごしたが、毎年都合よく行くわけもないし、昨日のクリスマスにわたしを忙しくさせた張本人が休めと言う言葉もかけもせず遠慮なしに電話をかけてきた。

 声を聞いた途端に切ってやろうかとも思ったが、すぐに来てくれと言う呼び出し電話で、わたしは否応なしに家を出ることにした。

 適当な用ならば呼び出さないだろうし、呼び出しておいて適当な用時ならばライダーズの実験台にすればいいと思い、わたしは家を出た。


 教会は神の家と言われている。

 郊外の廃教会の近くの墓場の壊れかけた小屋の地下が入口になっているが、世に言う天からの使者たちが現世こと現地で働く存在たちとの連絡を取り合う少し大きな施設が存在している。

 人間で言う役所的な場所でここ以外にも存在するのだが、ほかにも異なる場所としての色彩を持ち、オレドギーの同業者や天使、悪魔、他宗教の神と言った存在たちも多くの取引や仕事の事情でここによく来ているのを見る。

「―――――」

「―――申し訳ありません。」

「あやまるな、お前の性じゃない。」

 アミを車に乗せたオレは何にしてもと言うようにいくことにして、到着しドアを開け歩き出す中でアミがあやまって来た。

 上の勝手な事情だし、アミは言われたとおりに仕事をしただけだしと言う状況で、オレはアミに仕方ないと言うように返した。


 面倒なので能力を使い高速移動し、わたしアリーはディナのいる場所こと隠れ家に来ていた。

 隠れ家とは言うが、正確にはわたしたちのような存在を管理する役所や警察署と言った公務員の仕事場のような場所だ。

 近く一帯の墓場も含むが廃教会の敷地を利用した地下施設で、薄暗く陰気な場所と思われ、少し汚れている気もするが明るく電気や水なども通され、中で多くの働いている天使のような存在達が働いている。

 役所や警察署と表現したが、統制した呼び名と言うものが決まっておらず、施設内ではさまざまな言語や人間外の生物が動き回り、人間と違い戦争をしていないだけましと言う場所だ。

「―――あら?」

「―――?」

 何にしてもディナの名前を出せばすぐにと言うように道案内をされ、わたしはある部屋の前で待っていた。

 ディナは世に言う大魔王だ。

 わたしたち悪魔と住む世界を管理する身分だ。

 聞こえはいいが、わたしと言う悪魔が言うのも何だが厄介な女で、実はわたしの悪友でもあるのだ。

 若い時は一緒に暴れまわり、遊びまわり、好き勝手やった身分でもあり、人間の世界にも理解や知識、柔軟な受け入れ意識があるが、問題は踏襲性の身分制度を踏襲したことで、怠惰な性格が露呈したことだ。

 本人が言うたびに違い正確に把握できていないと思われるがディナは魔王の血を引く一族の1人で、先代が死に後継者がおらずと言う状況で、無理やりに抜擢され踏襲されたのだ。

 人間の世界ではすでに時代遅れとなった踏襲性だが、神たちと言った存在達の中では最近少しずつ人間の文化を参考に取り入れ廃止し始めたが、数多くの悪しき風習や制度が残っている中でディナはその犠牲者となった。

 若い時は一緒に遊んだ身分だが、全面戦争を挑んだ一族の末裔のわたしとは表向きには付き合いにくくなったが、ここからが厄介だった。

 わたしも若い時は一緒で魔王になる前は自由でよかったが、仕事をよく怠け人間の世界に遊びに行くし、それ以外にも多くの問題を起こしているそうだ。

 3人の従者ことリュー、ケリー、ビルがいるが、彼らも便利な人間の文化を知らず、一筋縄ではいかないディナに手を焼いている。

 困るのは仕事を怠けるだけでなく姿形で、わたしが普段から大人の女性だが、ディナは10~15歳ほどの子供の姿だと言うことだ、

 外見は子供だが200年以上生きているし、ゲームセンターなどにも遊びに行き、夜中も遊び、信じられないが何度か補導されてわたしは身元引受人の常連だ。

「―――あなた、昨日の?」

「―――――だれだ?」

 わたしが死ねばディナはどうなると言う心配事も多数存在するが、本題は待っていると姿を表した男で、昨日会った死神の男だった。

「―――昨日会ったでしょ?」

「―――あの時のライダー?!」

 お前に身に覚えがないと言う顔だったが、わたしは覚えていたので思いだせと言うように言うと、思いだしたと言う反応を見せた。

「―――ああ、そうか? 悪魔だったな?」

「そう言うあなたも、死神代行とか言ってたっけ?」

 思い出したぞと言うように男は話だし、わたしも合わせるように話た。

「―――昨日のバイク、すまんな? ―――昨日のバイクの件か?」

「―――ううん? それは違う、いずれ正式に書類だすしまだ、それにあなたには責任ないしディナからがっぽりもらうつもりだし山分けしましょう?」

「―――オレも仕事が終わった後問い合わせしようと思っていた。それにしてもディナ? ディナと言ったか? ディナと言うと大魔王ディナのことか?」

 ここに来て正式な書類や手続き、呼び出しをすることができれば仲間間での問題は解決可能で、昨日の一件の彼とすぐに出会えるとは思ってなかったが、思わぬ再会をわたしたちは話せた。

「―――ライダーズのことかしら?」

「ライダーズ?」

 彼にとっては意味不明だが、何にしても考えられるのはライダーズのことを見たこの男に対する事かとわたしは思った。


 思いもしない再会をした上、思わぬ名前を彼女は口にした。

 昨日仕事中に会った悪魔の女性だと言われてわかったが、彼女はディナの名前を口にし、ライダーズと言う意味不明な言葉をオレドギーの前で言った。

 ディナと言えば魔界の大魔王で外見こそ幼い少女のようだが、人間世界にもよく来ていると言う噂の女性だ。

 よく行く真偽は不明だが人間との全面戦争や逆に本格的な友好目的なのではないかと言う、謎に満ちた行動する女性だとオレは仲間から知らされていた。

女性はあの時自分を悪魔と言い、状況的に上司に当たるかもしれないが、軽い口調で言い、どういうことだと言う顔をしていたが、不意にオレに顔を向けた。

「これよ、これ?」

「―――?」

 なんだと言う状況で、女性が言いながら腕を前にだし、反対の腕で腕の近くを指さすと大きい腕時計のような物体が装着されていた。

「―――ディナの命令でこれ造ってたの。あなたある意味目撃者でしょう? なんか言われるかも?」

 わたしもあなたも悪くないけどこれは絶対に長い小言を聞かされるなと言う困った顔を女性はしながら言った。

「―――なんなんだ? それは? えっと、ミス?」

「アリー、正確にはアルティア アークライト。あなたは?」

「―――ジェームス ダグラス、ドギーでいい。」

 彼女がどういう身分かどうかはわからないが、悪魔流の礼儀作法かもしれないしなんとも言えないが、オレは昨日まずいことに関わったのではないかと心配になり、問いかけようとするが、女性ことアリーは結構落ち着いた様子だった。

「―――鉛による効力封印って知ってる?」

「―――ああ? 魔力を持つものが鉛を持っていると能力が減少すると言うあれだろ?」

 悪魔も存在し、魔法も存在し、魔法が使える人間が存在することは死神の代行をするにおいて教えられた内容で、オレは使うことはできないが、一応の知識は持っていた。

「逆に銀を持つと増大するって言うでしょう? これはそれを応用して高めたり低くする装置なの。」

「―――」

「嘘みたいだけど本当、見てわかるとおり人体と言うか、悪魔のわたし使って実験段階にも入ってるしね?」

 自分の存在を少し納得できないし、魔法事態説明を受けたが実物を見たことがあまりない中で説明されても困るが、アリーは腕を軽く振りながら説明した。

「―――5年以内には実用化する予定。」

「―――」

「―――子供のおもちゃみたいでしょう? 笑いものよね?」

 理論上は正しいが科学的とも言えるが非科学的だと言う矛盾した事態だが、アリーは本気でこれを実用化するようで、口調は軽いが冗談では無い口調で言っていた。

 言う通りの物体で日本のカートゥーンフィルムや子供向けテレビ番組に出てきそうな外見をしていた。

「―――」

「―――タバコやめてくれる? 2人め考えてるの。」

 大魔王にも呼ばれている女の関わることになり、この後どうなるかもわからず、落ち着くために一服とオレがタバコを吸おうと箱を服から取り出し、一本口に含んだ時、アリーはあまり表情は変えなかったが困ると言うような物言いで返した。

「―――家族が?」

「息子がいるの。結婚もしてる。」

「そうか、ならやめよう。」

 吸わないと落ち着かなくもなるが強引に口に入れた一本を箱の中に強引に戻した。

吸わない上に子供まで生みたいと言う女性がいる中で、将来的に考えてタバコは影響もあるし、吸う訳にもいかなかった。

身体に悪いのは解っているが止められず、いつから吸っていたかと言うと記憶喪失前からのようで、退院した後無意識に店で買い気づくと吸っていた。

ドアの向こうで何が待っているかわからないがオレたちは少し長い時間待たされることになった。


冷たいと言うよりも冷えきっていると言うべきだろう。

何かと言われるとわたしアンが思わずと言うように抱きしめた少女で、よくわからないが服も薄手で、少しの間抱きしめて温めなければいけないとわたしは思った。

この子はあの時のわたしではないと思ったし、少しすれば親が見つけてくれるとも思った。

わたしと言う存在1つだけがこの世で違う存在であり、彼女は普通の人間だと考えていた。

「―――大丈夫? 落ち着いた?」

「―――ん。」

「はい、少しの間、貸してあげる?」

 いつからかわからないがかなり長い時間無いていたようで、顔もこの寒いのに赤く、この寒さのせいもあるが服も少し濡れていて寒そうで、わたしは来ていた上着を少女に着せた。

 わたしの服だから大人用の大きさで、少女の上半身は覆われ、外界からの寒さから身を守れるようにはした。

「となり、いい?」

「うん。」

「ほら? すわりなよ?」

 よく考えるとわたしらしくない行動だった。

 幼い子となんかあまり話したこともないと言うか、この力の関係でわたしは親とも距離を取り、学校でも成績はいいが距離を置いているし、こんな幼い子と話すと言うことはわたしらしくもない行動だった。

 泣き止んだのでわたしは少し横に移動し、長いすの横の方に座っていいかと言うように聞き、少女が答えいいと言ったのですわり、少女にすわるように優しく声をかけた。

「―――お母さんは?」

「―――」

「―――お父さんは? いないの?」

 親はどこだと言うようにわたしが問いかける中で、少女は解らないと言うような反応を示した。

「―――」

 わたしは教会内を見渡し始めた。

 人の気配がわたしと彼女以外ないのは解っているが、どこか遠くにいるのではないかと考え、再三と言うように確認したが、人の姿はなかった。

「―――?」

 この子何かが変だ。

 不意に変とは彼女には失礼だが、この服装と言うこともあるが、この時間に親の姿が見受けられずこんな場所にいると言うのもだが、わたしのPSIに関係したことだ。

 自らの意志を他人に口を使わずに脳に伝えることや、他人の意志を読み取るPSI、言わばテレパシーと呼ばれるPSIが彼女に一切通用しないのだ。

「―――どうしたの?」

「―――ん? いや? 何でもないのよ?」

 遠く離れた場所にいる人間の意志を言葉も使わずに読み取れると言うPSIで、他人に送ることもできるし、わたしは世界の裏側の人間の声も聞けると思うが、なぜか彼女の意志が読み取れなかったのだ。

 感覚的に普段からどこかで日常的に声が聞こえている状況で、わたしも慣れたし、聞けないようにも調節できるようになったが、彼女の意志が少し強めてみてもまったく読み取れないのだ。

 読み取れない人間が全く存在しないわけではないが、心に精神的な壁や鎧を造りだしていると言うような状態が多いのが普通で、少し加減すれば読めるが、彼女は全く読めないと言うか、ここに存在しない幽霊の類なのではないかと疑うほどの状態だった。

 わたしが信じられないと見ている中で少女は少し心配するようにわたしに眼を合わせ、わたしはと言えばPSIのことを人に知られたくないし、あなたが変だとも言えず、少し動揺していると思うが平常をよそおって返した。

「―――寒くない? 大丈夫? 手、冷たくない?」

「―――」

「―――冷えてるわね?」

 サイコメトリーもダメだ。

 触れた人間や物体から意志や記憶を読み取れるPSIで、思わず試したくなりうまくいって手を握ったが、彼女からは全く読み取れなかった。

「―――――」

 クレヤポヤンスも正常だ。

 透視とも言え複雑な機械を分解せずに見たり、人間の臓器を見れるPSIで、彼女が本当に人間なのか気になり見てみたが、骨や筋肉、臓器と言った部品はすべて人間だった。

「―――あなたの、名前は?」

「―――――?」

「名前、わたしは、アン、アンジェラ ブラウン、あなたは?」

 疑問は残るが、親に会えば何かわかると思ったし、このままではだめだし、何とかしようと思いわたしは彼女の名前を聞いた。

「なま、え―――」

「―――?」

 わたしとは違うが、何か似たようなPSIを持っているのかとも疑ったがよくも解らず、名前は何かと聞いた後少女は少し何かを考えているような素振りを見せた。

「―――」

「―――大丈夫?」

 表情が困ったと言うように代わり、考え始めたように見えた。

 この年齢だし自分の名前がわからないと言うことはないと思うが、真剣に考えているようだった。

「―――ヴ―――」

「―――?」

「イヴ! イヴ! イヴ!」

 記憶喪失の類なのかもしれないと思った。

 読み取れないのではなく読み取る記憶と言うものが存在せず脳や身体と言った記憶だけの入れ物と言えば失礼だが、少女だけがここにいるのかとわたしは思ったが、不意に少女は口を開き、何かと思っていると自らの名を勢い良く名乗り始めた。

「イヴ!」

「イヴって言うのね? わかったから。もういいよ? よく言えたね?」

 何度も言う中でわたしは彼女の頭に軽く触れた。

 肩よりも長く柔らかい髪で、肌も白く、幼いが全体的に統制のとれた純粋な可愛さがあった。

「―――お母さんは? お父さんはいないの?」

「―――おとう、さん、おかあ、さん―――――」

「―――――?」

 本当に失礼かもしれないが、本当に様子が変だ。

 わたし自身のPSIによる偏見も含まれるかもしれないが、質問する中で少女ことイヴの反応は何かわからないと言うような反応を示し始めた。

 深く考え始め、頭をかかえるような激しい頭痛が起きたように頭を抱えた。

「―――――」

 震えている。

 イヴが震えているのが見えたが、わたしはこれがすぐに寒さによる震えでないと、何かはわからないが、恐怖による震えとわかった。

「―――ぁ。」

「―――大丈夫、わたしがそばにいる。」

 テレパシーもサイコメトリーも当てにならないが、わたしはイヴの感情を眼で見て受け取り、怖がっている彼女を優しく抱きしめた。

 軽くだが声をイヴが出す中で、わたしはイヴに対して優しく言った。

「―――神さまがいなくても、わたしがあなたを守るから。」

「―――――ぅん。」

「―――――!」

 親からの受け売りの言葉だが、少々罰当たりな気もするが、わたしはイヴにそう優しく言うと返事を小声だが返し落ち着いた様子見せたが、わたしが落着けなかった。

 不意にサイコメトリーが彼女の記憶を読み取れるようになり、急激な情報伝達を始めたのだ。

 記憶と言う名の海に投げ出されるような感覚と言うべきか、海の中に投げ出されて不意な衝撃で思わず勢いよく海水を飲んだ気分とはこんな気分なのか、何にしても脳に膨大な情報が一瞬で送り込まれた。

「―――――」

「―――アン?」

 聞こえているが、わたしが動けないし、悟られたくないと思った。

「―――――大丈夫。大丈夫よ。」

 何とかと言うように口を開いたが振り絞ったと言う方が正解で、呼吸も少し乱れているしイヴには間違いなくわたしに異常が起きていることに気が付いたと思われるが、何にしてもやさしく抱きしめた。

 海に投げ出されると表現したが、水中眼鏡なしに水の中に入れられたと言うべきか、本来見えているが別のものが見えていると言うような状態で、わたしはイヴの記憶をこの時見ていた。

 見ていたと言うよりも5感を通して感じていたと言う方が正解で、わたしはイヴの記憶の中に入り込んだと言うよりも一部だけを選出して見ている感覚だった。


 正確にはイヴの過去の記憶と言うべきだが、見えた光景はよくわからない場所だった。

 薄暗いがどこか遠くが薄暗く、録音された声だと思うが少し調子のはずれたと言うか、冷静過ぎるアナウンスが聞こえ、どこか遠くで何か大きい音が聞こえていた。

「―――――」

 Experiment Version Eights

 いったい全体ここはどこだと考える暇もなく見えたのは壁か何かに書かれた文字だった。

 黒字に白い文字で書かれ、手書きではなく刻印と言うべきで、一体なにかと思う間もなく光景が切り替わり別の映像が映し出された。

「―――――」

 実際に見たらおどろくかもしれないし、一瞬でよくわからなかったが幼い少年が死んでいるのか動かず、地面に倒れているのが見えた。

 少年が何者かわからないが、イヴとよく似た白い薄手の服を着ているように見え、この時はアナウンスのような声は聞こえなかった。

「―――――」

 これがこの時最後に見たイヴの記憶だが、これがわたしの記憶にも強く印象に残った。

 これもおどろくものだが時間にして数秒ほどの光景で、イヴの眼の前に人が立っていると思われる光景だ。

 立っていると表現したが正確には人影で、後ろに室内灯とほかの部屋だと思われる白い灯りと室内が見え人間とは断定ができなかった。

 確かに光景で見た人影は動いていたし人間らしく見えたが、よく見ると違うと言うか感覚的なものだが、奇妙なのは動物のようなうなり声をあげているし、第一一番違うのは眼が青白く光っていたことだ。


 時間にして5、6秒と経過していないと思うが、一気に他人の人生を追体験するようなもので、わたしにはこの状態が事実問題5、6分以上と言うか、5、6時間以上に感じられた。

「―――――と、行けないわね?」

 何にしてもわたしはいつまでも抱きしめているわけにもいかずイヴを身体から話した。

「―――ここで待っていてくれる? 人を探してくる。すぐに戻る。」

 事情は深くわからないが関わらない方が彼女のためだとわたしは考え立ち上がるとイヴに対して口を開いた。

 不意なサイコメトリーで見た情報に対し、彼女には何か不穏な気配を感じたことは事実だが、わたしみたいなことはないと思ったし、わたしは親と言うかだれでもいいから人を探して来ようと思った。

 PSIが通じない人間だって探せばほかにもいるかもしれないし、幼い少女にわたしと同じ重荷を与えたくないし、わたしが特殊なケースだし彼女自体が普通の1つかもしれず、これ以上関わるのはわたしの自分勝手だとも思った。

「―――」

「―――」

「―――イヴ。」

 わたしがイヴに背を向け少しだが走ろうとした中で、わたしは後ろから引っ張られる感覚を覚え立ち止まると、イヴが言ったらいやだと言うようにわたしの服を握りしめ、ここにいてと言うように引っ張った。

「―――いなくなるわけじゃないの。 すぐ戻るから? あなたの親も探しているかもしれないし、ここで待ってないとだめよ?」

 イヴは半場泣き出しそうな顔で、わたしは床に膝をつくと大丈夫だと言うように言うが、本気で嫌だと言うように服を持った手を離さなかった。

 この教会は大きく、昨日は何か催し物があったようだが無人のようで怖いのは解るが、このままでは時間だけが無駄に経過するだけだ。

「―――」

「大丈夫大丈夫? ね?」

 困ったと言う状況で、本気で泣き出しそうで、顔の表情も崩れ始めていた。

 頭をなでてみるが本気で泣き出しそうで、笑顔で言うが、ダメそうだった。

「―――お願―――い?」

「―――?」

 どこかと言うか後ろのどこか、正確には左後ろだが、奇妙な音がしてわたしは思わずなんだと言うように後ろに顔を向けた。

「―――――?」

「―――アン?」

 確かに何か聞こえたし、何か乾いた物体が動く音だ。

 木と木が何回もぶつかり合う音で、定期的な音階を形作っていた。

「―――――何でもない。」

「―――ウソ。」

 振り返り後ろを見て何かと確認しようとしたが、普通に見てもわたしのPSIを使っても何も起きているような様子は見えず、わたしは返したが、イヴは言い返してきた。

「―――ここ、どこ? あなた、だれ? わたしは? お母さんって何?」

「―――――」

「―――なにがおきてるの?」

 泣き出してしまった。

 幼い子などわたしは相手をしたこともないし、なぐさめようとするが泣き出すと答えてくれずと言う状況で、わたしは困ってしまった。

「―――――?」

 近くに人もいる気配もないし、少し不味いかもしれないが連れて行くかと考えているとあの音が再び聞こえ出した。

「―――――何?」

 気のせいではないし、振り返ると次はこれは気のせいではないと言い示すかのように何かが動く音が聞こえた。

 いったい何の音だと思いわたしは音の根源を探し出した。

「―――いっちゃ、いっちゃやだよぉ………」

「―――――」

 ポルターガイストかと疑った。

 ポルターガイストと言うのは心霊現象の1つで、幽霊が家の中の家具や物を動かすと呼ばれている現象だ。

 イヴの声を放置し、何の音かと思い周囲に眼を向けていると教会内の長いすや中央のカーペット言うべきか、教会内全体が音をたてて揺れていた。

「―――――」

 サイコキネシスと言うPSIならば人間と言うかわたしの精神に反映させて物体を自由自在に動かすことができるし、わたしの力かと思ったが違っている。

 この17年と言う人生をPSIとともに、PSIとして生きてきた身であり、自由自在に操る能力は十二分に持っていると自負できる。

 うぬぼれではないしわたしの力はその気になれば転変地位も引き起こせるし、自分でも細心の注意を払い行道している。

「―――まさか?」

 この子が、イヴがしているのかとわたしは思わず考え、眼だけだが、振り返らなかったが、彼女が能力を持っていて、無意識に使っているのではないかと考えた。

「―――でも? まさか? いや?」

 勢いよく振り返り、泣いているイヴを見る中でわたしは解らなかったが、教会内の揺れの大きさは大きくなるばかりだった。

 確信と言うものがわたしは持てなかった。

 同じ存在かもしれないが逆に全く違う存在かもしれず、真実がわからず、わたしはイヴを見ているしかできなかった。


 時間は2、30分ほどかかったが、何にしてもオレドギーとアリーは部屋に通されると、偉そうな人間と言うよりも実際に偉いが態度が異様に悪そうな男が中央のデスクに座っていた。

 デスクとは言うが、長机と言う方が正解で、3人がオレたちから見て横に並んでいた。

 中央には態度の偉そうな中年の男と、右には10~、15歳ほどの少女、左には落ち着いた雰囲気の老人がすわっていた。

 顔は知らないが状況的に言うまでもないが世に言うオレの死神代行としての偉い人間と言うか、存在達だ。

「ディナ、何の用?」

 口を最初に開いたのはアリーだった。

 早く用件を済ませて帰らせろと言う物言いで、少し物怖じしているオレとは大違いな反応だった。

 オレ自身が普通の死神ではないこともあるが、死神の立場は中立であり、こう言った人間外の存在達の職務の規格としても同一で、上にも下にも立てず最初は黙って話を聞き、言うとおりにして質問は極力しないと言う態度の中での行動だった。

「ミスアルティア、君は―――」

「いい、わたしが許可する。」

 中央の男が態度が悪いぞお前と怒ろうとする中でアリーにディナと呼ばれた少女が問題ないと言うように言った。

 外見や声は幼いが物言いは大人びた様子で、アリーは会った時自分を悪魔だと言った気がしたことを思い出し、彼女が悪魔の上級の存在なのかと考えた。

 人は見かけによらずと言う言葉が存在し、人間自体も外見では計り知れない場合もあるが、人間外の存在と言うものは外見だけでは本当に判断ができないことが多く、少女もかなり上位の存在だと考えられる。

「ディ―――――」

「―――戦争がしたいのか? 絶滅は免れんぞ? 影の血族だぞ?」

「―――?!」

 中央の男はディナに対して言い訳ないだろうがと言いかける中で、ディナ少し冷めた眼で男に対して言葉を返すと男はおどろいて女性のほうに眼を向け、オレもだが少しおどろいていた。

「―――影の血族? 悪魔最強の戦闘種族と言われる?」

「―――最悪な名誉。」

 職業柄と言うべきでオレは相応の教育を受ける中で影の血族の話を聞いたことがあった。

 悪魔最強の戦闘種族の1種で神や悪魔何十人分にも匹敵する力を持った悪魔だが、争いを嫌う傾向が強く、希少種で悪魔側が保護しようとしたが、反発し全面戦争で独立し人間世界で暮らし、静かな絶滅に向かっている種族だと聞いていた。

 立場が立場で不可侵的立場を確立するため悪魔としてかなり上流の階級を与えられるが、残り人数も数えるほどしか存在しないと言われている中の貴重な1人だと言えた。


 発した言葉通りわたしアリーにとって影の血族の血と言うものは最悪な名誉だ。

 一族全員と言うか、書類上は最後の1人のわたしが絶滅してもいいと言っているし、すでにハーフのカークも生まれているし、別のだれかの子も産みたくないし、普通の人間として暮らしたいのだ。

 ここに来ればわたしの身分はすぐに明らかになるし、特にドギーこと死神代行には恐れ多い話だ。

 彼自体本来が人間と言う中で、ほかが人間たち以外に囲まれている状況の中で神や悪魔さえも恐れさせた存在として当然と言えば当然だが、わたしは別段怪物でもないし、普通の人間のつもりで生活して人間として扱われたいのだ。

「―――何にしても、ジェームス ダグラス、だったか?」

 わたしには手を出せないと判断したのか、立場の弱いドギーに男は言葉を振った。

「―――ドギーでいい、お前は?」

 わたしの方はいいのかと言う状況で、銃も持ってきているし一発ぶち込んでやろうかとも思ったが、ドギーは言葉を返した。

 人間以上の時代遅れで腐敗したとも言える世襲や極右的社会政治体制を残す上層部の思考を変えることは不可能だ。

都合の悪いことはわたしのことを知って黙ることもだし、ドギーもある程度心得ているようで物言いは多少軽いが身は心得えている様子が見て取れた。

「―――アジア系人の死後の魂の処理担当をしているバーンズ オクムラだ。」

「―――わたしは黒い獣災害対策委員会長、グティレス エドワード、グティーでいい。」

 自己紹介する中で反対に何者かと聞かれた男こと、バーンズは答え、右の老人と言うか、グティーが少し小さい声で答えた。

 何にしてもわたしたちは昨日の夜の一件に関して呼ばれたことは確かだった。

 ドギーに顔を向け長くなりそうねと言うような表情をすると、慣れたことだと言うような顔で返した。

「―――昨日の仕事の一件についてだ。」

「3人の死体の件か?」

 バーンズは聞いてほしいと言うような顔で、手を組み話し始め、ドギーは言葉に対してどうしたと言うように言葉を返した。

 よく思い出し、考えてみると、確かに遠目に人の倒れていた姿が見えた気がするし、死神と言えど不用心にあの怪物が歩き回る場所に来るわけでもなく、彼が仕事であの場所に来ていたのは言うまでもないことだった。


 推測はしていたが上から叱責を受けるのは当然で、アリーも含めてほかの偉い人間たちに見せしめにされると言う結構最悪な状態だ。

 何かと言えばオレドギーの昨日の一件で、報告によればアジア系2人だと言われていたが、黄色人種、黒人、白人の3人で、怪物と遭遇し、バイクまで爆発させ、予定以上のことが起きているからだ。

 どこのだれが言い始めたが知らないが予定は未定と言い、無理は話だが死を管轄する身としては死神は予定以外の死は起きて欲しくないが起きるのが現実で、ほかの関係を持つ存在達に悪く見られたくない建前も存在している中でこの問題が起きている。

「アジア系の男2人と聞いていたが―――」

「―――現場に到着した時にはすでに死んでいた。」

「言い訳するな!」

 いいわけではなく現場で起きていた事実だが、言葉を返すと案の定思った通りの言葉で反論され説教が始まった。

 仕事としてしているしこれが1度と言う訳でもなく何度も起きているし、ほかの人間にも怒られることも多いし、怒られるのもいい加減になれているが、わからないのはアリーのことだ。

昨日の事故の一件も無論理由として含まれるが職務中の事故であり少し多い始末書や一時停職程度と言えばの処分の類で済むが、彼女は何かほかの仕事もある上に影の血族と言う身分でオレに対する小言を聞かされる身分でもないと言える。

 

 ドギーと同様でわたしアリーもこの時ディナたちの意図している部分が見えず思わずまだかと言うように表情を嫌そうに変え、腕を組んだ。

「―――――で? 本題は?」

「―――」

「―――死神代行が説教を受けるところを永遠と見てろと言う訳じゃないでしょう?」

 バーンズがドギーに対して説教を始めて30秒経過した時にわたしは口を開いた。

「―――ディナがいるし、それとグティー、黒い獣災害対策委員会長のあなたがなぜここに?」

「―――――」

「―――何よその人間かぶれめとか、米国合理主義的思考のケダモノめとか、成り上がりの貴族の分際でとか言いたそうな眼は? 一発撃ち込まれたい?」

バーンズに対して言い、グティーに対して質問する中で、バーンズが不満そうな顔をしていたのでわたしは思わずと言うように言い、服の中に隠している銃を取り出そうとした。

これは実は冗談ではなく結構本気で、彼らの反応はわたしに対して言い反応ではないし、時折本気で一発撃ち込みたくなる。

「―――よせ、アリー。」

「―――お前の気持ちは分かったから。」

「―――冗談よ? あなたがいないとわたしが魔王だし、冗談じゃないは?」

 撃たないのはこうしてディナと言い収める人間が存在するからだし、仮に殺せばわたしが彼らの職務を代行して最悪魔王に就任しないといけないからで、わたしは手を下した。

 影の血族の中には非戦闘的心情が強いが、独立戦争時わたしの予想した最悪の事態に備え敵側に対しこの心情の裏返しか全滅を考えた物も少なくはなく、裏でも表でも複雑な駆け引きが進んでいた事実が存在している。

 日本の戦国時代の織田信長の提案した天下布武や自然界の弱肉強食ではないが、強い者だけが生き残り弱者を廃絶したり服従させるなどは都合はよくはいかないのも事実で、わたしのすることは現状的にも不毛だ。

 戦争は過去の話だし、わたしには相応の身分も存在しているし条約も存在し、わたしの行為は彼らにもわたしにとっても最悪な日の到来を意味している。

「―――ディナと言い、知り合いか?」

 ドギーにと言うか死神代行と言えば階級と言うか立場的に言うと末端でディナの名前を知っていたが、わたしも含まれると思うが彼ら上層部の人間の顔なども知ることもなく、ドギーの質問は当然の質問と言えた。

「―――ええ、昨日見たあの恐竜みたいな怪物知っているでしょう? 対策の専門部署ができたって知っているでしょう? 彼がその調査組織のリーダー。わたしも一応組織の1人。」

 わたしは簡単に説明をしドギーはグティーへと眼を向け、グティーは年より相応の深い表情でドギーに笑みを見せた。

 わたしと言うかサイツ社の主目的は人間の世界に来た人間外の生活援助だが、上層部は黒い獣と呼んでいるが、あの恐竜対処のためにライダーズの実用化が背景で進んでいる。

 ライダーズは実用化すれば子供でも怪物に対処できるし、大げさとも言えるが危険な人間世界で安心して生活できるとも考えられ、利益も生み出すし悪魔たちの一大事業となっているのだ。

「―――――なるほど?」

 わたしを含めて自分を場違いだと考えているし、何をされるかわからないし、ドギーは少し納得したと言うような反応を示した。

「―――ディナ、ライダーズのことと言い、あの恐竜と言い、別段知られても問題ないでしょう?」

「―――」

「―――もう知れ渡っていることだし、5年以内には実用化するでしょう? 彼にも必要になるかもしれないのよ?」

 わたしの言葉通りだし、彼は彼で死神代行としての理不尽な注意を受けていると思われるし、わたしたちのような存在に見られるのは半塲拷問とも言える。

 いい加減にしろと言うようにディナに言うが、ディナは黙っていたが、ほかに言うことがあると言うような顔をしていた。


 勢いよく持ち上げられた。

 何かというとわたしアンが見ている眼の前で教会内の長いすやカーペット、床や壁が壊れて宙に浮かんだ。

 見えない力、わたしのPSIのサイコキネシスのように、自らの意志によって物体を触れずに自由自在に動かす能力に他ならなかった。

 浮かんだと表現したが地面と言うか床と言うべきか、空中2、3mほどの高さまで浮き、糸のような仕掛けの類も見えなかった。

 教会全体も少しだけだがわたしは揺れている感覚も覚え、地震とも思えず幽霊の仕業とは到底思えないし、考えられるのはわたしの眼の前にいるイヴだ。

 イヴはわたしの服をひっぱっている状態で泣いていた。

「―――ねぇ、落ち着いて?」

 この教会は古く見え、少し刺激を与えれば簡単に壊れそうで、揺れている中で、確かに本当に崩れそうな音が聞こえ始め、祭壇の上側に見えるキリストと思われる男性が描かれたステンドグラスに大きい亀裂が1つ入り、広がり始めていた。

 確証はないままだが、わたしはもし彼女ならばここで落ち着かせなければこの教会だけではなく広大な範囲に、最悪地球すら破壊しかねない状況と思い、少し慌てながらもやさしく声をかけた。

「―――」

「―――――」

 声をかけるがイヴは本気で泣き始めた状態で、眼も少し強く閉じている状態で回りが見えていないようにも見え、この異様な事態にも気づいていないようだった。

「―――――」

「―――」

「―――大丈夫、わたしがそばにいる。神さまがいなくても、わたしがあなたを守るから………」

 どうしていいかもわからずにわたしはイヴを勢いよく抱きしめた。

 おどろいているイヴに対し、わたしは優しく言葉を続けた。

「―――ぅん。」

「―――――?」

「―――何?」

 少ししてイヴわかったと言うように返事を返した中で、後ろから何かの落ちる大きい音が響き渡った。

 言うまでもないことだが宙に浮いていた物体が床に落下した音で、教会内はわたしが入って来た時よりもひどい状態になっていた。

「―――――」

「―――?」

「―――大丈夫よ?」

 イヴはわたしと同じ能力を持っていることは間違いないとわたしはこの時確信した。

 わたしは眼だけだがイヴに眼を向けたが、自分自身が原因ともイヴは解っていない様子で、何かわからず脅えた様子でわたしの背中の後ろに隠れ肩に触れてきた。

わたしは言葉に合わせ、肩に触れたイヴの手に触れた。

「―――――?」

「―――ぇ?」

 手に触れ握ろうとする中で後ろから何かが壊れたと言うか折れた音と言う表現が正しいが聞こえ、振り返ると祭壇の後ろの壁の近くの等身大ほどと思われるがキリストのはりつけられている巨大な十字架の像が揺れていた。

「―――――」

「―――ぁ。」

 来た時からを繰り返している気がするが、本来事態壊れかけているが、イヴのあの暴走が拍車をかけたようで、十字架は大きな音を上げ、イヴが壊れたと言うように声を出す中で、わたしたちに向かって勢いよく倒れてきた。

 祭壇から見て右斜め向きに用意周到と言うか、わたしの言葉に対して恨みがあるのかと言うように、苦しんでいるキリストの顔がわたしに迫った。

「―――――」

 わたしはこの時一瞬父と母のことを思い出した。

 わたしを化け物と呼んだ父と、化け物でも何にしてもわたしを育てようとするわたしの母の言葉も浮かんだ。

『よくもあんな化け物生んだもんだ!?』

『―――大丈夫。神様がいなくても、わたしがあなたを守るから………』

 一瞬だったが、わたしはすぐに現実に戻ると十字架のキリストに眼を向け、PSIを、正確にはサイコキネシスを使い十字架を勢いよく吹き飛ばした。

 テレポートをすればよかったかもしれないが、思わずと言うようにわたしは吹き飛ばした。

 全体に何か特殊な塗料か何かで塗られていて材質は何かわからないが、何にしても推測して重量は150Kg以上もあると思われる迫りくる物体をわたしは空から吹いてきて頭に落ちる落ち葉を払うかのように吹き飛ばした。

 十字架はわたしたちに向かって直撃する直前にわたしたちの背中の方向へと非科学的な力を得て不規則な動きをしてだが勢いよく飛び、5、6mほど後ろに落ちて壊れた。

 外見的に金属に見えたが表面にはりつけていただけのようで、壊れた部分から中を見ると石膏か彫刻か、金属とは異なる白い部分が見え、細かくて白い粉を巻き上げているのが見えた。

「―――――」

 物体に触れずに思いのままに操ると言う感覚は奇妙な感覚で、力が弱すぎたり強すぎたりとうまく使いこなさなければならず、わたしは少しやりすぎたと思ったが、思わず感情がこみ上げ、わたしは立ち上がると十字架のほうに眼を向けとどめを刺した。

 落下した十字架は十字架としての原形をとどめていたが、わたしはPSIを使い、十字架の4方を折り砕き、最後にキリストの頭部と胴体を粉砕させ、残った手足は地面に転がった。

 この世にと言うか個人の身に起きる不幸はすべて神がこの世を生き死後の世界などで安寧の暮らしを与えるための試練だと言う考えがあるが、この時思わず本気でふざけるなと思った。

 わたしのこれは人間としての限度を超えているし、これ以上だれも背負う必要のないものだとも思い、事情はよくわからないが、わたしは何にしてもイヴを守らないといけないと思った。


 アミから聞いた話と言うか、恐竜のような怪物が出て人を襲っていると言う話が同業者間や似たような存在から出ると聞いていた。

 余程のことがない限り遭遇することはないし、オレドギーは昨日初めて遭遇し心の内ではおどろきを隠せない状況だが、対策部署ができたとも聞いていて半場安心していたしオレのような存在にとって関係の無い話と思っていた。

 知らずの内にと言うか一応はだがオレも関わっていたが、深入りさせられることはないと言う状態で、オレは深みの中に入れられたようだった。

「―――君たちの立場を踏まえての判断さ?」

「―――?」

 いいことにしろ悪いことにしてもオレには居心地が悪い場所と言うか、まずい事態に関わった状況で、どうすれば抜け出るかと考えている中で後ろから声が聞こえ、オレは振り返った。

「―――ダミー、―――」

「略して呼ぶな!」

 振り返り姿を確認したオレは思わずと言うように口を開くと男ことダミーは勢いよく怒って返してきた。

「知り合い? 死神?」

「―――そうだ。血統書付のな?」

 ダミーとは言うが正確にはダミアン ジョーンズと言う男で、この男はオレのような死神代行とは違う純潔と言うか、言葉通りと言うべきか、生粋の死神だ。

 現在の人間の世に言う保守派と言うべきか、人間の思想体系を理解せず、身分制度と言うか旧時代的政治体制を持つ神側の時代遅れな権威を着ている代表格とも言える男だ。

 人間側の文化なども知って一応は中立的立場を自称しているが、神と言う存在の優位性を捨てきれずあってないような見栄を死神代行たちにふりまいている嫌な男だ。

「―――まぁいい、何にしても、始めまして、ミス アルティア、ダミアン ジョーンズです。お会いできて光栄です。」

 人間に対しても身分的に低い存在と判断している。

オレのような存在など神でも人間でもないと判断し見下すのが普通で、アリーに対しても同様だと思うが、意外にもと言うか表向きにだと思うが友好的な物言いで口を開くとアリーに握手を求めた。

「―――ごめんなさい? 握手嫌いなの?」

「―――」

「で、いい加減に話してくれない? あなたたちと違って表向きの仕事もあるし、彼の仕事方が大変だと思うんだけど?」

 ダミーの差し出す手に対し断るし嫌だと言うようにアリーは眼を閉じて触るなと言うように手を払うそぶりを見せ状況通りの言葉を口にした。

 わかりましたと言う反応をダミーが見せる前にアリーは再び口を開き、バーンズ達に眼を向けた。

「わたしたちは人間として暮らしているのよ? そのこと考えてくれない?」

「―――」

「―――ディナ、条約決裂と判断してここで戦争したい?」

 立場が立場と言うべきか、アリーは非常に強気な物言いで言葉を口にした。

「―――ごめんなさいね? 不快な思いさせるのにつきあわせて?」

「―――あ、いや―――」

「頭が固い連中ばっかりよ? ダミーって言った? そこのあなたも同罪よ? 人間のこと知ったつもりでいて見下しているし、わたしたちの事情なんか何も理解しない、時代遅れだしこの体制はいつまでもは持たないはよ?」

 オレは逆にここでは最下層の身でありものが言えないが、立場的に結構上級であるアリーに対して言葉だけだがあやまられ、オレは別に構わないと言うようなことを言いかける中で、事実だが言い過ぎだと言うことをアリーは口にした。

 確かにアリーの言葉の言う通りで彼らこと神側は時代錯誤的だ。

人間のオレが弁護するのも奇妙な話だが彼ら自身人間とは異なる時代を歩んできた背景と言うものも存在し、権威の固着と言うか文化形式も異なっている。

「―――あなたも黙っている必要はないは? どうせこいつも親の七光りの威張った馬鹿よ? 現場で生きているあなたのほうがよほど死神らしいと思う。」

「あ~。」

「―――」

 女は話し出すと止まらないものだと聞くが、アリーは言葉攻めだと言うように言うに言い続け、オレはこの後どうすればいいと言う状況で思わず声が漏れ、ダミーはと言えば腹が立つが言い返せないと言う顔をしていた。

 ダミーが嫌な上司であることは事実だが、オレは立場も踏まえ敬意と言うものも持っているつもりで、アリーに言葉攻めにされるのは少し気分がいいが、上司として中間的立場で気の毒で微妙だとも思った。


 影の血族はどうせわたしアリーでおしまいだし、どうせ立場も状況もだし、どうせ行っても即刻変わる体制でもないし、言えるなら言ってやろうと思い言ってやった。

 言ってやったと言うか、上に呼ばれるといつもわたしはこう言ったことを繰り返している。

 ここでは物は言えないがディナは影の血族が途絶えること以外は賛成しているし、彼らには刺激が必要だと考えている。

 ある意味あなたことドギーに協力し、あなたのためだと言うように言っていたが、ドギーは自分の立場を踏まえ、あまり物を言わないようにしているようで、困ったと言うように顔を下に向けていた。

「―――だからこそ、お前たちに頼みたい仕事があるんだ。」

 帽子を被りなおしているようにも見えるが、ドギーはこれからどうするか考えているだろうと言う状況に見え、わたしが再びディナに眼を向けようとする中で、ディナが口を開いた。

「―――ライダーズの件は事実いいと思っているが、本題は、昨日の一件に関係している。」

 ディナは手を組み、これからが本題だと言うように言った。

「―――ジェー、いや、ドギーでいいか? 昨日の仕事の詳細を話してももらえないか?」

「―――?」

「―――死神代行として、魂の回収に向かった。間違いないな?」

 外見や声こそ幼いが魔王と言う身分であり、ディナはドギーに対してこちらに質問に答えて欲しいと言うように質問した。

「―――ああ、間違いない。」

「―――予定とは違う死者が出た?」

「―――――ああ。」

 ディナの質問に対してドギーは少し間を置いたが答え、ディナは次の質問を返し、ドギーこの事実は認めたくはないが確かにそうだと言うように返した。

「―――詳しく話してもらえるか?」

「―――アジア系男性2人と聞いてたが、アジア系、黒人、白人1人ずつ、全員男性で計3人だった。」

 これだけではだめだ問うようにディナは質問を続け、ディナの質問に対してドギーはうそは言っていないと言うように言葉を返した。

「―――死者の予定変更? さっきもだけどそんな―――」

「お前は黙っていてくれ、アリー。」

 わたしが意見を返そうとする中でディナはわたしの口を閉じさせたが、バーンズの先ほどの叱責と言いこの話はドギーに対して無茶苦茶な文句を言っている状況だ。

 死神は死者の魂と言った死を管理する役職の神で、管轄の魂を自主的に回収するのが主だが、死ぬ予定と言う人間がある程度この世には存在し上からの通達で回収する場合も存在している。

 自主的に回収する魂は身体を損なっている場合も存在し、死者として十二分に通用する場合も多く問題の無い場合が多いが、予定的な死者と言うのが曲者だ。

 推測するにドギーは昨日アジア人男性2人が死ぬ予定と聞いて仕事に言ったが、別の人間3人と言う予定とは違う死者が出たこと注意を受けている状態だ。

 彼は仕事はしているし、予定は未定とも言え上層部の見立て間違いとも言えるし、人間の医療技術発達による延命や自殺と短命と言う本来不定期的な死に対し、ドギーを怒るのは見当違いな話だ。

 何にしてもディナはわたしにここは少し黙っていてくれと言うように合図してきたが、わたしは納得がいかなかった。

「―――続けてくれ、詳しい人物像を話してくれ。」

「―――わかった。―――1人はアジア系で推定20代前後半、後の2人は警官だ。」

「―――ん、わかった。ありがとうな?」

 質問一通りと言う状況で、ディナが質問してドギーが返すと言う状況が終わったようだった。

「―――アリーと会ったのは仕事の後で間違いないか?」

「―――ぁ? ああ?」

 よく考えたらディナのこの質問が肝心な質問だとわたしはこと時解ったし、ドギーは何にしてもそうだと言うように答えを返した。

「―――――どう思う?」

「―――」

「―――?」

 何か考えているとわたしはこの時思った。

 ディナは質問を終えるとバーンズに質問し、バーンズは同じように何か複雑なことを考える顔をして黙り込み、ドギーはと言えば何のことだと言うような反応だった。

「―――何知っているの? ディナ?」

「―――――お前は少し考える時間をくれんのか?」

「―――和平交渉の前に戦争に踏み出した上層部の存在が言う言葉?」

 過去の話になるが影の血族の現在の身分に落ち着いたのには言葉通りの血生臭い歴史と、全面戦争後の間接的に残った上層部の束縛も存在し、わたし自身ここにいるのも嫌で、来るたびに自分でも少し嫌になるが嫌味になっている。

「―――何にしても上層部からの通達でな? ドギー、少しの間一線と管轄をはずれて欲しいんだ。」

「―――?」

 わたしの言葉に対し、精神的損傷を負ったかディナが頭を抱えているようなそぶりを見せる中で、バーンズは口を開き、ドギーが何事かと言う反応の中で言葉を続けた。

「―――残りのもう1人のアジア系人を探して連れてくるんだ。」

「―――」

「必ず殺して魂を届けに来るんだ。」

 言葉通りの無茶な話だ。

「事実上魂は回収はされているが、回収はされていない状態だし予定外の回収もあった。これはある意味君がある意味状況を変化させた失態とも言えるし、原因解明をしてもらいたいんだ。」

「―――」

「―――過去にこう言った通達もなかったわけではないし、本来の職務も存在し調査に人員を動員するには人員もいないし、死神としての失態を表ざたにもしたくない建前も存在している。」

 帳簿の勘定合わせで減給と言う話はまだ場合によっては仕方ないと言えるが、ドギーに持って来いと言われているのはお金ではなく命だ。

「当事者でもあるし代行者でもある君のような微妙な立場の方が動きやすいと思った選出だ。引き受けてくれるな?」

「―――」

「―――少しの間君の管轄はダミアンが担当する。」

 確かに彼の職務は代行とは言え死神だが、不用意に何人でも殺していいわけでもないし、逆に全く殺さないと言う訳にもいかないが、都合合わせために持って来いと言うこの状況はドギーでなくても不条理と答える。

 アジア系人以外の特徴も何もわからない上、昨日どこかで死ぬかも知れなかった人間を探し出して来いと言うのだ。

 バーンズがダミアンに任せると言うように言うと、ダミーはドギーに思い知ったかと言うような顔で、お前ことドギーの困った顔を見届けたかったんだと言うように鼻を鳴らした。

「―――解っ―――」

「無茶ぶりね?」

 ドギーは立場が立場だし、たとえ不条理でも文句が言えない立場と言えるし、案の定と言う状況で少し困ったが仕方ないと言うような顔をしたが、はいと言うような返事をしようとする中でわたしは口を開いた。

「―――そこで君の出番だよ。アリー」

「―――出番?」

 ドギーはと言えばわたしに対し気持ちはありがたいが何にしても忙しくなるからもういいと言う反応で、わたしが文句を言おうとする中で、グティーが口を開いた。


 思わずと言うように口を開いたアリーの言う通りで、無茶な仕事を任せられたが、こんな風に呼ばれた事はなかったがこれまでにこう言った仕事がなかったわけでもないし、一度探して見つけたこともあるし、オレドギーは従うことにした。

 人間とも死神とも言えずと言う中間的で微妙な役職で厄介ごとや表ざたにはしたくない仕事や使いまわしや使い捨てと言う仕事に回されるのは当然だとも考えている。

何にしても引き受けることにしたオレドギーで、表向きには当てはないと言う状況だったが、これからオレがここに呼ばれたと言うか、アリーたちの存在する理由が明らかになりそうだった。

「―――君はわたしたちとも通じているが建前も存在しない自由の身だ。表向きと言うか人間の世界にも情報やそれなりの権力も持っている。」

「―――彼に協力しろと?」

「―――?」

 まさかな話だ。

 オレに任せられた仕事ならば理解できるが、無茶だとは言うが彼女がオレを手伝う必要はないと言えるし、1人の人間の魂を探すのに悪魔最強の戦闘種族と協力してもらうとは奇妙すぎるし物騒過ぎる話だ。

「これは悪魔と死神の両方の微妙な管轄の仕事なんだ。アリー。」

「―――」

 いい加減にしろわたしも暇ではないしお前たちに従う義理はないと言うようにアリーがグティーに言いかける中で、ディナが口を開いた。

「ここからが本題なんだが、ドギーには同時にあの恐竜のことも調べてもらいたいし、いつものことだがただとは言わないし、相応の報酬も支払うがお前には0,1人分の謎の魂の調査をしてほしいんだ。」

「―――0,1?―――」

「―――0,1?―――」

 昨日遭遇してアリーと一緒に戦った恐竜のような怪物のことを調べろと言うことをディナは言いたかったそうで、オレはこれに関して半分は納得できたが、ディナが後で言った言葉が意味不明で、アリーと一緒に言葉を返してしまった。

 あの恐竜のような怪物は確かに正体不明で専門の調査部署が立ち上げられたことは事実だが進展もない状態で、調査と言うか捜査の幅を広げたくてオレと言う微妙な立場を使いたいことは事実だと言えるが、解せないのはディナの次の言葉だ。

「ドギー、確かに3人だと言ったな?」

「―――ぁ? ああ?」

「―――本来普通の人間のお前では人間とは異なる魂の気配を感じられないだろう? ここで奇妙な魂が見つかってな?」

 どういうことだと言う反応の中でディナが質問し、オレが応える中でディナは答えだと言うように、答えからあたらしい議題が見つかったと言うように言った。

「―――奇妙な魂?」

「―――――魂に重さがあることを知っているだろう?」

 確かにオレは普通の人間だし死神としての本格的な職務ができないことは事実で、ディナの言うことが正しければ昨日の回収で何か異変が起きたことは確かと言えた。

「―――確か、0,5Kg………」

「―――そうだ。そこにだ。0,05Kgの、0,1人分の奇妙な魂が発見された。」

「―――?」

 人間の魂には重量が存在すると言われている。

空気にも科学的に重さが存在し、空気よりも重い気体も存在し、これは医学的にも証明されているとも言われ、数百年ほど前の実験で生前と死後直前の体重を比較した際に体重が減少したと言う実験も存在している。

0,5Kgとは言うが、これはだいたいの目安量で、人やほかの生き物、神や悪魔によって異なるそうで、非常に多い場合も存在するそうだ。

精神体とも言える物質で、たとえ軽くても構成成分の違いも存在し、一重に重いから強い、軽いから弱いとは言えないそうだ。

「人とも、生物とも、神とも、なんとも言えない奇妙な魂だ。」

「―――」

「―――ドギーでは魂は調査不可能だし恐竜と戦闘になった場合不利になるし、アリー、お前ではあの恐竜は退治できるが魂の回収とかの調査は不可能だろう?」

 ディナのこの時発した言葉を聞き、一瞬でオレは利害一致と言う言葉が頭に浮かんだ。

 双方で起きた問題を対処と言うか解決したいが動きづらいものが多いが、死神代行と影の血族と言う人間側、神側の両方に接点を持つ微妙な立場の存在であり動かしやすいし、非常時に問題が起きても使い捨てなどの厄介払いができると言う利点も存在している。

「―――あの恐竜を見ただろう? 死んだり捕まえると溶けるし正体不明で精神体も発見できず、生態も解っておらず、わたしたちの作った生物兵器だとも疑われかねないし、悪魔が関与していないと言う証明も必要なんだ。」

「―――彼女に―――――」

「あの0,1人分と言い、残りのアジア系と言い、怪物との関与は捨てきれないし、彼を捕まえ、調査すれば何かわかるのではないかと言うのが、我々の見解だ。」

 ディナは手を組みこちらも困っているし引き受けてくれるよなと言うような反応で、オレがアリーの意志はと言い聞きかける中でグティーが口を開いた。

「―――根拠もなしに―――」

「―――警官2人は血まみれの男を見た後の記憶がないと言うし自分たちが死んだことと死後の世界が実在し、生き返れないことにおどろいて話にもならなかったが、もう1人が手掛かりになるようなことを言ったんだ。」

「手がかり?」

 言葉通りで根拠もない状態だが、待ったと言うようにバーンズが口を開いた。

 死神、悪魔、謎の怪物の調査する神と言うか天使と言うかの存在がお互いを補いオレとアリーに協力しろと言うように少しずつ追い込んで行っていると思った。

「―――回収したもう1人のアジア系人の方は警官と違って死後の世界にあまりおどろいた様子も見せないし、訊問したんだが、自分が日本人で、モチズキ ライヤとか名前を名乗ったんだが、それ以外は口をつぐんでいる状態で現在一応拘留中だ。」

「―――」

「―――もう一人の方のことを知らないと言うし、『IGANAGINOTAKKAI』と言う訳のわからないことの情報を教えないと何も話さないと言うし、日本の方に問い合わせ中で動けない状態だ。」

 状況的に取調べと言え死者に対して人権と言うものも存在しているとも思うし、訊問や拘留と言った半場犯罪者のような扱いをしているようだった。

 日本の方に問い合わせているとも言い、連絡をとれるようにこそなっている事実が存在するが返事もいつ来るかわからず気の遠い話になりそうだった。

「―――警官の言う血まみれの男が残り一人だと思われるし、モチズキ同様に日本人だと思われるから以後「サムライ」と仮称するが、彼が黒い獣含め何かを知っている可能性は高いと言える。」

「―――サムライの調査はドギーの管轄、0,1人の魂はアリー、黒い獣は両方の分担だ。理解できるかな?」

「―――協力するんだ。」

 バーンズが言葉を続ける中で、グティーは話がある程度まとまったから最後にと言うように落ち着いた口調で口を開き、ディナは最後にもう一言と言うように少し遅れたが言葉を発した。

 バーンズはと言えば一応と言うか、オレと同じ死神で似たような難しい表情をしているが、年の功と言うものかわからないがグティーは仕事を引き受けるだろうと言う確信でもあるのか少しだけ微笑んでいた。

 拒否権と言うものはないだろうし、身元を調べるために連絡した日本も連絡を返してくる可能性も希薄、公には人間は動かせないとなると、ある意味都合のいい2人がここにいたことになる。

 本業はと言えば特に急ぎの仕事もなく、休みも多く給料もいいが、死神代行としての仕事はこれから長い仕事になりそうだし、忙しい年末と新年を向かえることになりそうだった。

 これが1998年の12月26日の話と言うか、すでに関わっていたとも言えるが、これから起きることに本格的に関わる始まりだと言えたが、オレもアリーもこの時は面倒なことを押し付けられたと思っただけだった。


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