Battlefield 1
人間には集団心理と言われる周囲の行動に合わせると言う心理的習性が存在し、東洋で言う空気を読むと言う能力が存在している。
この習性とも能力とも言えるべき行動は東洋で言う朱に交われば赤くなるとも関係しよくも悪くも言動に働きかけ反映される。
多くの人がいいことをしてればいいことをするし、悪いことをすれば悪いことをすると言う大きな流れに流されやすい人間の単純さを表しているとも言える。
いいことでも悪いことでもないことで、多くの人間がしないことはどうなるかと言えば同じように興味や関心を示さないと言うのが現実で何もしないと言うのが答えだ。
具体例と言うのが警察の車などのサイレン音だ。
会社を後にした後軽くだが飲みに行きつけの店に行き、ある程度飲むと日付が変わる中で帰路についたわたしジョセフもその一人で、真夜中を近所迷惑も考えずにサイレンを鳴らして走るパトカーに眼も向けずに歩いていた。
言うまでもないことだが警察がパトカーのサイレンを鳴らして走ると言うことは事件や犯罪が起きた証拠で異常事態だが多くの人間はこれに対して無関心な状態だ。
何か異常な事態が起きていることは確かだが、明確なことを知ることは不可能だし、一瞬興味や関心を持っても深くは追及しないのが事実だ。
野次馬精神や怖い物見たさと言う感覚も存在し追及する者もいるが、現実は最終的には事態に遭遇した当事者でない限りは自分に関係ないものとして処理し忘れてしまうことが事実だ。
外を歩いている人間たちの多くが何事かと走り去るパトカーを見て話し合う様子も見て取れるが、深くは追及せず、事件かと、何か起きたんだと理解する程度だ。
仮に暴動だとすれば巻き添えを食うこともあるだろうし、言葉通りにとばっちりはごめんだとばかりにパトカーが走り去り数秒と経てば何事もなかったかのように周囲の人間たちは日常を取り戻し始める。
日常の崩壊は意外と近辺に潜んでいるものだが自覚と言うものができないもので、実際に遭遇しなければ人間は無関心主義を貫くのが世の務めだ。
神の力を持つ代行者ならば何が起きていることが知ることができるし、解決する手段と能力を持ち、迅速に解決できるだろうとも言われると確かにそうだが、無関心主義を貫くのは神も代行者も人間と同様だ。
夏を冬に冬を夏や、神話のように水を酒に変えたり、有り余るほどの食料を出し、水の上を歩いたり触れるだけで人の重病を治すと言った偉業もできる事実が存在していてもだ。
鬼や悪魔とも批難されて言われるかもしれないが、似たようなことは数え切れないほど起きて際限がない状態で全てには対処しきれないし、命を賭ける価値は無いに等しく、無視するのが現実だ。
現実に同じような力を与えられても使用用途に困り使えないことも事実で不用意に捨てることや与えることもできず、代行者かは一切わからないが、有史の中で似たような力を持った人間が残酷な最期を遂げている現実も存在している。
人間は似ているようだが異なる存在を恐れ否定し廃絶するか、敬意を持ち尊敬し尊いものとして扱うと言う扱いをすることしかできない証明で、わたしはどちらになるのは嫌だと思っている。
多くかはわからないがほかの代行者もわたしと同じ心理の持ち主のようで有史の中には神話やオカルトのような話を除きこのような力を持った人間の存在は多くは存在せず、普通の人間として暮らし何もせずに天寿をまっとうしていたことが推測される。
わたしは代行者である前に1人の人間であり、普通の人間として生きて存在し続けたいのだ。
仮に本物の神だとしてもこの複雑に変化した世界に対して対処は不可能だと思うし、言いはしないが、神は後のことは人間に任せたと言うようにこの世界を放棄していると言え、わたしたち人間と、この世界は半塲捨てられているとも言える。
科学全盛の時代へ変化し審判の日の到来は信じるにも値せず、神もこれから何をしても無駄で面倒だと言うかのようにこの世界に代行者を造りだし放任主義を貫き、この世界の命運は文字通りに人任せとなったのだ。
神にできることなどもう何も存在しないし、これから仮に神が人類を滅ぼそうとしても双方全面戦争へと突入し、泥沼化するが代行者と言い神の力は戦争の前では普通の人間よりも少し強い程度で、最終的には人間側の勝利が待っているのは必然だ。
時は1998年の12月26日、雪こそ降っていないが雪の降らない土地と言うものは無駄に寒さが身体に染みるもので、酒こそ少し飲んだが身体中が冷え切っていた。
吐き出す息は冷気にさらされると白く視界に映し出され、一瞬だけ白い染まった視界の先には変わりのない光景が続いていたが、遠くでは先ほどまで眼の前で音源となるパトカーのサイレンの音が聞こえていた。
何が起きていると言う状況だった。
異常と言えばわたし聖那の身体も異常だが、わたしの視界に広がっている光景がわたしは信じられず、何も言えず見ている状態だった。
何が奇妙かと言えば先ほどから人気の無い道を歩いている多くの人間たちで、奇妙な表現だが彼らは死んでいるのに歩いていると言うよりも動いているのだ。
死体が動かないのは必然で、視界に広がっていると言い、わたしは建物の屋上と言う遠くから見ている状態で見えないと思われるかもしれないがわたしには確かに見えていた。
ナノマシンの力の恩恵で機械に変えられた身体が脳と眼に高度な分析能力と計算処理能力を与え、路上を歩いている人間たちが死んでいることを伝えていた。
脳機能、脈拍、心臓、何にしても医学的観点から見ればわたしの身体だが彼らを死んでいると教えてくれ、一部の外見が人とは言えない姿をしていた。
「―――バイオハザード?」
『―――どういう意味だ? 聖那?!』
マンホールから出て来たり壁の隙間から出て来たり、何か目的でもあるのか全員が一定の方向に進み、眼下に広がる光景を見たわたしは思わず口を開いた。
少し前に学校で男子たちが話題していたテレビゲームのタイトルだ。
ボスとかだと思うが気持ちが悪い大男が出ていたゲームで、ゾンビと戦うとか聞いていたのでわたしは思わずまさに言葉通りだと思って言ってしまい、無線機越しに辻が何かと聞いてきた。
「―――テロか!? まさか?! ここで?! まさか聖那と―――」
「違います。と言うか、バイオハザード、ゲーム知ってますか?」
バイオハザードと言う言葉は英単語として存在し、生物災害を意味している。
一般的観点からすると農場などの害虫害獣被害や、生物災害だと言うのだから猛獣に襲われるとか言う話ではなく、正確にはバイオハザードでは文章に誤解が出るし、ヴァイラスパニックやハザードと言うのが状況的に正解だ。
ヴァイラスとは英語発音でウィルスを意味し、バイオハザードとは細菌による災害を意味している。
細菌程度にと思われるが炭疽菌や天然痘、デングをはじめとして、バイオハザードは意外と猛威を振るうもので、人為的に引き起こされるものをバイオテロと言い非常に脅威に満ちている。
第二次大戦中などにも細菌は兵器として転用され、現在の軍隊には細菌兵器はB兵器と言う概念として存在し続けている。
「―――確かゾンビ倒して行くゲームだろ? 違うのか?」
「―――そう、そのゲームです。」
「―――それがどうした?」
通信機越の辻はわたしの言葉を聞いて機嫌が悪そうな様子だった。
「―――こんな時にそれがどうした?」
期待通りと言うべきかこんな時にこんな話するべきではないのは当然で、電波越しとは衛辻の機嫌の度合いは悪い方向に向かっていた。
「―――それが起きているって言ったら信じますか?」
「―――――聖那………!」
「―――本当なんです。」
わたしだって眼の前の光景が信じられないし、こんな時にこんな冗談を言うなお前はと言うような返しの辻に対し、わたしは繰り返すように言い返した。
わたし自身も人間かどうかも疑わしいのに、眼下のゾンビだと思われる人間たちは地面の下で人とも言えないような声を上げて歩き回っていた。
幸か不幸かわからないが周囲に彼らとわたし以外に人の気配はなく、彼らは全身を続けている状態だった。
何かがあるのかと、人を狙っているのかと思ったがわたしにしても彼らにしても話しかけるのはまずいだろうし、どうしていいかもわからずわたしは動くことができなかった。
一部がわたしに気づいて狙っているのか壁を登り始めるような動作を見せ始め、数体が昇り始めていた。
問題です。
なぜ彼ことわたしアリスの上司マシュー カーツマンは無謀運転をしているでしょうか?
1、有給休暇中だったのに呼び出されて機嫌が悪いから
2、緊急事態で急いでいるから
3、ストレス解消がしたいから
問題として出したがだれも考える必要もないし、迷うこともなく答えが出せると思うし、正解は無論全部だ。
おまわりさんここに無謀運転している方いますと通報する以前に彼が警察官であるが、サイレンを鳴らし、くわえタバコで一般道をオーバートップで走りカーブでは見事なドリフトを決めた。
運転は嫌いだし苦手だとか言うが、白バイのサムと友人と言うこともあり、似たようなものもあるのか、プロに並べる見事な腕前だが、一般道な上ほかに同乗者がいる場合は見せて欲しくなかった状況だ。
問題以前になぜこうなったかを考察する必要が出てくると思うし、理由を知るには時間を少し戻した話になる。
わかることなどあるわけもないと言うような状況で、マットを含め、わたしたちが帰りかけた時だった。
「―――どうした?」
「署の方なんですけと、なんか、無線が変で―――?」
一日に何本吸う気だと聞きたい状態で新しいタバコを加えていたマットが周囲の異常に、正確には無線で話していた警官の様子が変なことに気が付き、話しかけた。
「―――変?」
「こっちもだぞ―――!?」
どういうことだと言う反応の中で近くのパトカーの警官が同じだと言うように大声で伝えた。
「―――感度でも悪いんじゃないか? 妨害系の電波でも出てるんじゃ………?」
失礼するそと言うようにマットは身体を車内に入れ、無線の操作を始めた。
『―――急! 事――生―――に―――向か―――』
「―――おい? 聞こえているか? 感度が悪いぞ? どうなっている?」
無線の向こうではオペレーターらしき女性の慌てた声が聞こえるが、マットは落ち着いた雰囲気で呼びかけた。
「オペレーターが慌てるな。仕事し―――」
『―――手の空いているものは至急戻ってください! 署内で暴動事件発生! 繰り返します! 暴動事件が発生しました。現在暴漢がここま―――』
「―――おい? おい?」
呼びかける中で不意に無線越しの声が大きく正確になり状況を一部だが伝達すると無線が切れた。
「―――おい? だれか応答しろ? 署の近くいる―――」
『開いてる職員はすぐに戻れ! 署内で暴動事件が発生した! 犯人は複数で銃火器を所持している模様! 無線の調子もなぜか悪い! これを聞いてたら至急近くの仲間にも知らせろ!』
これはどういう事態だと言う顔で無線を操作し、だれかに呼びかける中で、警察官だと思われる女性の勢いのいい言葉が聞こえた。
この日に限ってなぜか通信の感度が非常に悪く無線の内容も飛び火し、真偽も解らないが、仕事が増えたと言うかのようにマットは車で来ていない人間をのせ、全速力で車を走らせていた。
何にしても嫌な日だとかついてない日だとかわたしは考えていた。
殺人なんて嫌なことの後は何かいいことがあればいいとか思い、仕事も終われば気分転換のような物もするが、現実何が起きているかわからないが、嫌なことが続きそうなのは確かだった。
大声で走っているのを邪魔するなら全員殺すと言いかねないような迫力のある運転と運転席は紫煙が漂い物凄い雰囲気とかしていた。
署まで車で10分から15分ほどで署の方で何が起きているかわからないが、署に到着する間にこの運転がまずいし、生まれた場所が異世界で車と言う乗り物に乗ったこともないし、無謀運転だしでどうにかなると思った。
これが夢ではないと言うのが現実の辛い話しだ。
アメリカンドリームなんて言葉があるが、アメリカなんてわたしにとって言語が通じる以外は目の前の上司を含め、嫌なことや酷いこと、疲れることばかりだった。
ある意味アメリカンドリームに乗れた人生だと言えた。
アメリカンドリームとは渡米した米国籍を持たない人間が経済的に成功することを示し、渡米しPMASCに入社し33と言う年齢で幹部階級の少佐階級へと昇進した俺、山中一輝もその一人だと言える。
自由の国とも言われているが、言語も文化や経済と何からなにまで違い、銃所持が認められるなど法律も違い治安も悪く貧富の格差や人種差別、車大国と言うこともあり、公害は日本よりもひどい国である。
国土も広大で同じ国でも異なる部分が多く、一部ではスペイン系移民、言わばヒスパニック系移民の居住区のように公用語が通じず水や食事も身体になじまないこともある。
白人の移民国家と言う形成上移民がほかにいないわけでもなく、ネイティブアメリカン、言わば現知人でも生きるのも楽ではない状態と言える。
日本では高所得層が渡米しても日本同様に成功するとも決して言えず、海を渡って来た母子家庭のワーキングプア、言わば低所得者層の若造と言うよりもガキの日本人男性が成功するのは非常に難しい問題だと言えとたしてだ。
幼少期はよく熱を出して弱かったと姉が言いよく記憶していたが、持って生まれたものか、家系的にも胃腸も強く水や食事も幸いにも耐性があり、言語も何とか覚え一応の基盤は整えていることができていた。
滞在許可も取り渡米しPMASCに籍を置いたのが26歳になる前で、33歳と言う若い年齢で普通の会社で言う部長か課長かの幹部階級の少佐へと昇進した事は、給料は差し置き、ある意味人生の成功例、アメリカンドリームに乗れたと言える。
仕事としてしたが大使館の事件の一件で半場犯罪者だが、社員の中には同国籍、言わば日本人で自衛隊の勤務年数も多く高学歴で年輩だが階級が下で給料の少ない人間も存在している中でだ。
問題となった事件も本来は大手企業からの下請けだと思われるし会社の利益にも貢献できたと言え、一時的と言うか少し失敗したと言うべきで、少しすればいつもの毎日に戻れると思っていた。
学歴も一応大卒ではあるが国外に置いてはあるわけでも通用するわけでもなく、自衛隊員も米国などの軍事階級に相当する尉官階級に出世するには防衛大卒業者や一握りの幹部にしかできないにもだ。
夢に関連して気絶した後リードに背負われた俺は夢を見ていた。
夢とは見るメカニズムは明確には判明していないが、科学的に睡眠時に脳の記憶整理を行う現象だと言われ、言う通りで俺は過去の夢を見ていた。
思いだせば、夢として見れば一瞬だし何度も見たこともある夢もあったが、話せば以上に長くなる話だ。
職業柄死んだとでも脳が誤解でもしていたのか過去の記憶が死直前に見る記憶の回帰現象、言わば走馬灯のように走り抜けるように映っていた。
最初の記憶は物覚えが付き始めた3歳ごろの時の記憶、おそらくは父かと思われるが男の怒鳴り声と強い剣幕の母親の声、泣く幼い俺の鳴き声と近くで心配そうな顔で、なきやまそうとしているこの時6歳の姉、桜華の姿。
「出て行け! お前はいつもいつも! うるさいんじゃが!」
「あんたの方やろ?! いい加減してや! 何かあれば出て行け出て行け出て行け! 出て行けば家来てお父さんに愛想笑い浮かべて?!」
法的な記憶が確かならば俺がこのころに離婚しているし、これ以降の父の記憶もないし、顔も名前も覚えてない状態で、思いだそうとしても怒鳴り声と口ひげをはやしていることしか覚えていない状態だ。
記憶の光景は瞬時に切り替わり、7、8歳の時、母子家庭と言う理由だけでいじめられる日々を思い出していた。
「―――」
この時と言い夢の中でも抵抗することもできず、光景も一瞬で切り替わり、次は12歳の時、曾祖母の葬式の日、15歳で、中学3年となり高校受験生の最中の姉桜華が玄関付近で泣いている俺を泣き止まそうとしているが、同じように泣いている。
「―――――」
「何で?! 何でこんなにおそなって帰ってくるんよ?」
顔を見ようと見上げると時が瞬時に経過し24歳の時、姉桜華も27歳となり、祖父の葬式の時だ。
仕事で遅くなり、職業柄別の県にいたこともあり、帰った時には葬儀は終わり、来て遺影の前で手を合わせ終え、立ち上がった時、俺が来たことを聞き、先に帰っていた桜華は飛んでくると泣きながら怒っていた。
「―――忙しくて―――」
「じぃちゃん死んだんよ? ガンだったんよ? あんたに会いたいって、一緒にお酒飲みたかったて言いよって、忙しいで、その言葉で片付けんといてや!」
家族の会話が少し変なように感じるが、地域的に方言が少し残っているのでこれが日常的な言い方だが、何にしても桜華は必至で訴え、何も言えず目を反らした。
「桜華ちゃん、いかんよ? 一輝君が忙しいのは本当なんやけん?」
止めに入ったのは母の姉こと、喪主の観鈴伯母さんだった。
「解っとる! 解っとるけど! だけどわたしちゃんと帰ってきたやろ?、だけどよ? 何でいつもこうなん?! お父さんとおんなじやん!?」
「―――、桜………」
「なんかあっていうたら忙しい忙しい忙しい言うて! なんかあったら怒って怖がらせて! 家におったら一日中ねよるかテレビ見て! 全然遊んでくれんし! 金がない言うて! お父さんとおんなじやん!?」
止めに入った観鈴伯母さんの言葉を聞いたが、俺よりも3つも年上の姉だが桜華は子供がかんしゃくを起こすようにかなり怒って返し、観鈴が止めようとする中で言葉を続けた。
遺伝子学的に言えば親子や兄弟と言えど全く別人で似てないと言うが、血は争えぬとも言い、父と同じようになりたくなく、それほど利口でもないが、安定した仕事を得て家族を安心させ、守りたいために自衛隊を選んだが、裏目に出てしまったようだった。
趣味と実益を兼ねてと言うこともあるが、あの父の血を持つと言うことを払拭したく、一生懸命働いていたが、実家のことは放置した状態だった。
自宅にだってお金も送っていたが、結局父と同じことを繰り返していたようで、少しして任期も満了し、以前から馬鹿らしく思い、この時迷っていたがいろいろと嫌にもなり本気で自衛隊を辞めてしまった。
自分が父と違うと言うことを払拭もできなかったし、以前から自衛隊には不満があり、現在でもお金は送り続けているが、どうなっているかも不明な状況だ。
不明だと言えば自衛隊の実情こそ馬鹿らしくなってやめた原因の1つだった。
国防組織であり、有事の際に活躍し、国家の守護の役割を持っていると言えば格好もよく聞こえるが、実在は単なる国家公務員のお役所仕事の延長で有事があっても出番があるのは一部の職員だけで、訓練と言う名の子供と大人の中間の人間の遊び空間だった。
暇さえあればパチンコ競馬麻雀、休憩中は煙草に色恋沙汰か風俗系、ワイドショーネタのオンパレードで宿舎は毎日修学旅行状態の馬鹿集団化していた。
ギャンブル系にも興味なし、酒はよく飲むがまったく酔えず煙草も吸わない、無口な人間には自衛隊は不向きだったようだ。
下品な話にもなるが、下半身は医学的に問題なく、睡眠時に時折あるようだがなぜか排泄以外、言わば生殖機能不全状態で性的話に興味なし、仕事はまじめだが、騒がしいのも嫌いだし、結構孤立していたしここでも少しだがいじめられていた過去もある。
「アサルトトレーディング代表の空野聖歌です。」
「PMASCAGS、山中一輝少尉です。」
光景が切り替わり26歳の時、AGSの傭兵となり、フィリピン沖に言った時の記憶で、これが彼方の母親、言わば聖歌と初めて会った時の記憶だった。
自衛隊を辞めた後渡仏し外人部隊、渡米し米軍に入隊し、最終的にPMASCへと落ち着き、少し経った時、港で初めて会い交わした会話の光景だった。
入社して数年と経たぬ間に試験も突破し昇進し、俺はこの時仕事の関係もあり、少尉に昇進し、アメリカンドリームの一歩手前にいた。
『日本人で英語を話せる方を探しています。
仕事は心身共に疲労が激しい仕事です。』
ワシントンDCにいた時にあるカフェで見た求人で、これがPMASCAGSの求人だった。
ほかのPMCと違い条件が異なり、興味もあり、書類手続き上いつまでも無職でいるわけにもいかずに就職したのが始まりだった。
一般的なPMASCの雇用条件が自衛隊や軍隊と言った職務経験を4年以上かそれほどとしているが、AGSは下請けなどを使い多少金もとられるが後進教育にも力を入れ、最低半年と言う短い時間の条件も俺をドリームと言うか現状に乗せた要因とも言える。
PMASCと言えば一般的にはPMCと言うがAGSは意図的にPMASCを使用している。
これは入社時当時大佐のラッセルから聞いたが、民間人(private)の警備と言う意思と国家の守護者の代理人とも言える、国家防衛組織である軍隊としての区別を明確にするためのようだ。
「―――」
「―――ありがとうな? 山中?」
聖歌と話していたと思ったが、不意に光景が再び切り替わっていた。
「―――お前のおかげだ。オレは本当のオレに目覚めることができた。」
「―――」
「ありがとうな?」
27歳の時の記憶だ。
友人が何度も何度も俺の前でお礼を言っている。
「―――――」
「これが貴様のような人類の行き着く結果だ!」
「―――」
抵抗できるわけもなく、再び光景も切り替わり、30歳となった俺は中国に、正確には上海から少し離れた山林地帯にいた。
息を切らし、左手は血で汚れ逆手に持った中国刀、正確にはククリが握られ、足元には少し前に切り殺し、眼を開いたまま死んでいる女性の死体があり、口を開いたのは中国系の古風な格闘用の服姿の男だった。
「貴様にわかるか? 殺人鬼の汚名を着てまで孫を生かそうとしたわしの心が? 人の煩悩のすばらしさが!?」
「―――」
「貴様が持とうとしているのは人間としての強さではない! 殺戮機械としての強さだ!」
AGSの仕事でこの男を探しに上海の郊外に来た時に突然この殺した女性に襲われ撃退する中で、男は俺を罵倒した。
「―――――?」
だれかに話を聞かせるなら詳しく話すべきこともあるが、これは過去の話ではなく夢の光景の話で詳しく話す間も抵抗することもできず、話も続いているのだが光景は切り替わり、見覚えのない場所にいた。
「―――――」
半場意識があるような状態で、材木か資材のようなものに座っているようで膝が曲げられ腰の下が冷たい感触があり、思わずどこかと確かめようと空を見上げると、照明こそあるが少し薄暗くて肌寒くどこかの広い倉庫のような部屋だった。
「―――――っ。」
ここはどこだと思う中で職業病、と言うよりも禁断症状が出た。
重たいものを持つ仕事をしている人間が腰を痛めると言うような職業柄出る身体的精神的疾患を職業病と言い、ある一定のことをしなければ奇妙な状態になることが禁断症状だと言え、アルコール中毒がいい具体例だ。
アルコール中毒者は重度となるとアルコール、言わば酒を飲まないと手が震えることがあり、俺も5年ほど前から酒を飲んでいるわけではないが利き手の震えが始まっていた。
一見すると仕事に差し支えるかと思うが、これが逆で、この禁断症状は、実は銃や刃物と言った武器をある程度の時間握っていれば収まり平気なのだ。
状況的に判断して人間的に考えると末期に到達している証拠だとも言えるが、仕事をしていれば別段問題ないし、別段気にすることも考えるだけ無駄なので止めていた。
服もAGS指定の幹部に支給される服以外はここ数年来た記憶もなかった。
日常生活も必要最低限の状態であり、病的な外見や顔をしているのかもしれないが、髪やひげを切り歯を磨く以外は鏡を見て確かめることもなかったし、無意識に鏡に映った眼と眼を、顔と顔を合わせるのを拒否していた気がする。
自分で言うのもなんだが不愛想な感じで眼つきが悪く怒っているように見えるか無表情で機械的な退屈な男の顔だ。
死ぬほどまでに別段酷い顔やいい顔もしているわけでもないし、生きているのだから別段気にする必要もないし、必要最低限のこともしているつもりだし、興味もないし鏡さえ見なければいいとも思っていたし見ることもなくなっていた。
水面に映った自分の顔に心奪われ死ぬまで見続けていた言う神話が元でナルシストと言う言葉が生まれたが、多くの人間は見れば自らの醜さに失望するだけであり、時が止まり心奪われる物は見えないのだ。
鏡と言えば家系の話に関係するが、俺は自衛隊員になれたから言うまでもないが日本人だが、家系的に仏教ではなく日本神道を崇拝し、鏡をまつる場合が存在すると言う話を聞いたことがあった。
清く正しい者のみが神を見れると言うことらしいが、神など存在しないと思っているし、人間を戒める方法の1つだと言えた。
「――――――――――?」
手を上げ、震えていることを確認し、銃を握れば大丈夫だと思い手を下げかける中でだれかが手を少し勢いよくだが握って来た。
「………?」
気づかなかったと言うべきか、いつからいたのか、気にしなかったのか、横を見ると同じように横に座っている人の姿があり、俺の震える手を両手で包むように握っていた。
体質なのか身長に見合わず少し太いこちらの手と違い細長く弱そうだが、強いとも弱いとも言えない力で、少し痛く冷たいような、握られ温まった感じがするが少し心地いい感じがした。
「―――――」
手は少しだけ震えている状態で震えはなぜか収まりかけている中で、あんた誰だと答える間もなく意識は途切れ、この後リードに起こされることになり、人間の顔は髪が少し長くよく見えなかった。
わかるのは俺と同じ年齢か若いほどで、髪形や見えた顔の輪郭から判断して女性だと言うことだけだった。
信じられないがこれが正夢と言うべきだったのか、ほかの人間の話から整理するに反対に何らかの力によって見ていたのかは、わからない状態だ。
山中が目覚めかけていた。
あの場所から離脱し、運びだしてから十数分後立った時、山中が抱えられている状態でうめき声をあげた。
「ぁ、………ん、だ―――」
人気の無い場所を歩いていたが銃を持っていることもあり「不視覚化形態」で移動していたが解除し、通りがかった人気の無い駐車場の端の壁に山中を下した。
PMASC
Advanced Guard Security
Washington DC
上着の二の腕の横側には間違いなくAGSの文字が書かれ、服も間違いなく幹部階級に支給されている上着だった。
「―――ぅ?」
「おい? 大丈夫か?」
特に異常も何もない様子で寝ぼけているような状態にも見え、軽くだが頬を叩いた。
「―――ここはどこだ?」
「―――あそこから歩いて十数分ほどの駐車場だ。」
少しして山中は眼を開け、少しの間オレの顔を見ていたが、あの時何が起きたかよくわからないが、何かをされたことは確かに少し状態が悪そうに見え、手で両目を覆い、気を取り直そうとする中で質問し、オレは質問を返した。
「いてて………?」
「あー、そう言えば頭ぶつけたな? 受け見とれなかったからな。」
襲いかかられるような状況の中で対処が山中はできず、意識が途切れた後倒れ、受け身が取れなかったようで頭をぶつけていたのか、苦痛に顔をゆがめて頭の後ろを抑えた。
「―――えっ?」
「―――Ok、こぶもないし、血管も切れてない、少し強く打っているが、時間がたてば痛みも消える。」
何か山中が質問しかけようとしていたが、少し気になり、手で触れて調べてみたが、異常もなく、素早く返した。
「―――そう言えば雷也は!?」
「ライヤ? なんだそれは?」
「あの男! 死体!―――」
不思議そうな反応だったが、不意に何かを思い出したかのように言い、オレがなにかも解らず聞く中で山中は答えを返したが、少ししてオレから目を反らした。
顔を見ればわかるが、半本的な感覚が働いているのか歩いてきた方向に眼を向け、だれがどう見ても戻りそうな顔だった。
「死体の男? ぁぁ、仲間か? だがもう死んでいたし―――」
「―――――」
死体は計4つ、1人だけ普通の人間のように見え、山中はあの男のことを言っているのだとオレはすぐに気付いた。
「戻っても無駄だ。もう警察も来ているだろう、それにお前のその服装もある。疑われて捕まるのが必然だ。」
「―――ック?」
オレと同様の兵士の眼だが、あの男がよほど大切なのだと思うが、身体の半分は血まみれだし、気づいていないが顔も一部が血で濡れている状態だ。
「―――そう言えば、お前のその眼、ATじゃなく、ハイブリッダーとか言ったな? いったい何なんだ?」
「―――?」
ハイブリッダーを知らなかった。
「それに、雷也が言っていたんだが、ここは本当に1998年の12月25日なのか? イザナギの戦いとは何なんだ? お前も参加者なのか? あの怪物についても知りたい。」
「―――」
普通のAGS職員ならば知らないはずはないと言える状況だ。
「―――――ナノタグを持っていないのか? お前? 拒否したのか?」
「ナノタグ? 何のことだ?」
ナノタグはナノマシンタグであり、認識用ペンダント、言わばドッグタグの代用として開発されたナノマシンによる個人認識装置だ。
任意による注射による投与式で任意でハイブリッダーは見ることができるが、山中には反応がなかった。
「―――――」
「―――どうした?」
ナノタグも知らないと言う状態と言い、山中は言葉を返してきたが、同じような返事を返しかないような状況だった。
「―――――お前………?」
「―――おい?」
何者だと聞く暇もなく、オレは不意に嫌な気配、と言うよりも臭いを感じた。
人間では感じ取れない感覚が身体にあり人間以上に敏感すぎる感覚は確かに、オレと同じ、似たような何かの気配を感じた。
「―――おい?」
「手を貸せ、大丈夫だ。お前は手伝っただけだ。」
何にしてもオレはこの嫌な気配に対し、加えて命令無視も含めAGSも動き出しているだろうし追われることも解っていたし、山中にほかのエージェントと戦うために銃を返し、オレも銃を取り出した。
「あの怪物か?」
「いや、状況によってはそれよりも厄介だ。」
チャンバーチェックを行いながら山中は聞き銃を構えオレと同じ方向に向け、オレはすばやく返事を返した。
「―――その必要はありません。」
「?!」
「ぅおわっ?!」
いつの間に回り込んだと言う状態で、先ほどまで気配は後ろで振り返り銃を向けるが、回り込まれ、後ろには2、30代ほどの中国系の女こと堂城飛鳥が立っていた。
「―――――」
「銃を下してください、山中一輝さん。わたしたちは敵ではありません。」
「―――――」
何にしても不覚を取られたが山中とオレが飛鳥に銃を向ける中で、いつの間に1、20代ほどの女性、と言うよりも少女が山中の背後に立ち、山中の腕を抑えた。
「お前たち何者だ? いったい何が起きている? ―――ワープ?」
何にしても抵抗は無意味だと判断した山中は銃を下すと飛鳥と桜、オレに対して質問し、2人の服の胸の部分に描かれたアルファベッドを略して呼んでそう発音した。
Weapons
And
Rescues
Professional
なにかと言えばオレは何者かとよく知っているし、これは組織名だ。
山中の呼んだ略通り通称ワープとも言われ、第3次世大戦後機構が創設した半分機構半分民間のPMASCだ。
別名『機構の犬』とも言われる表向きは第3次世界大戦後再結成され、機構直轄のPMASCとして警察と軍隊の両方の面を持ち強い権限を持つが、民間PMASC職員のオレから見て合法的な圧力や制限、攻撃はかけらえるしお役所仕事の厄介者集団たちだ。
警察としても色も濃いし、状況的に判断してオレの逮捕に来たことは間違いない状況で、知らない間に後ろを取ったことと言い、オレと同じような普通の人間でないことは確かだった。
「ワーパー!」
「わーぱー?」
獰猛な獣のように唸り声をあげ、歯を食いしばり威嚇するようにしながらオレは言葉を漏らす中で山中は何かと聞き返してきた。
「………」
ワーパー
PMASCの職員、言わば傭兵には職員を含めワープを嫌うものが存在することはオレの様子から見て絶対にわかると思い、犬と言い非難する言葉は多くあるのがこのワーパーだ。
「お前―――」
「階級はあなたが一階級上ですが、彼は生年月日や年齢的にもあなたの先輩ですよ。リード ファイヤー中佐。」
「―――?!」
同じPMASCの傭兵ならばワーパーの言葉の意味も解ることは必然だし、ハイブリッダーのことを知らないし、ナノタグも持っていないと言う以上の中で、お前は何者だと聞きかける中で、桜が口を開いた。
なかなかに上質な2人だと思った。
こんな時に失礼な表現かもしれないが、リードがワーパーと言った女性2人こと、桜と飛鳥はかなり上質な、目移りするとはこういうことを言うのかと言う美女だった。
正確には桜が意外にも15歳で純潔の日本人だと言うが、15歳だが身長は俺よりも少し低いほどで165Cmほどで、肌も白く身体も細く、きれいで不健康的に見えないが、表情や口の動きが少なく眼もそらさず、長く見ていると物怖じする感覚があった。
一方で飛鳥はと言うと背は俺よりも高く、リードよりも低く、175ほどで、眼の角度が少し高く、つりあがったような印象で体格的にも日本人らしい雰囲気に見えず、チャイニーズクォーターだそうだ。
「―――初めまして、山中一輝さん。そしてリード ファイヤーさん。」
「わたしたちは機構直轄PMASCワープの職員です。」
「―――機構? ワープ?」
日本語だった。
人間像分析をしているひまもなく、どうすればいいかと見ている中で桜が口を開き、オレもリードと同様に意味不明な中で、次に桜が俺のほうに顔を向け口を開くと次に口を開いた飛鳥と言い、流暢な日本語だった。
「―――英語で話そう。(Speaks English.)」
「解りました。」
リードの外見と言い、話し方の勢いと言い階級と言い、同じ年齢ほどかと思ったが、桜と飛鳥の物言いと、状況と言い何かが違うようだった。
状況判断がリードの言葉を使う方が便利だし使うが、ワーパーの言葉も気になりこの話はリードにも対等に伝えようとワーパーに意思表示すると、桜が流暢な英語で返事を返した。
「―――いったい何が起きている?」
「夢ではないことは事実です。」
「―――――具体的な回答例ありがとう。」
答えのようだが答えになっていない答えで、俺はとりあえずと言うように返すしかなかった。
「―――――」
「リード ファイヤー中佐、あなたをゲート管理法違反及び、殺人未遂、器物破損、その他2つの刑法違反であなたを逮捕します。」
リードはと言えば余計が機嫌が悪くなり始めている中で、飛鳥のほうがリードに対して半場機械的にリードに言葉を発した。
「―――逮捕?!」
事情は分からない中で突然リードに対して逮捕すると言う言葉が出てきた。
「―――ことわ―――」
「―――――ただし、機構命令に従う限りは、逮捕に猶予期間、または免除を与える。」
「………?」
断ると言うかのような状態のリードだったが、不意に飛鳥が少し遅れたが付け足し、リードは何事かと言うような反応を示した。
「―――命令?」
「ワープ指揮下に入り、わたし堂城飛鳥の部下となり、貴公が現在保護中の男性山中一輝と協力し、プロジェクトヤーウェーを阻止することだ。」
「わたし佐藤桜は間接的にあなた方の部下となります。」
いったい何をと言うような中で飛鳥が命令内容をいい、桜はと言えば言い終えると丁寧な口調で付け足すように言い、頭を下げた。
「―――――なん、だと?」
「―――――どういう意味だ?」
俺とリードは言葉の意味が解らず、最初にリードが言うと俺に少し顔を合わせ、俺が続けるように聞いた。
「―――言葉の通りです。命令に従えば逮捕はしません。」
桜と飛鳥はあいも変わらずと言う様子で、飛鳥は機械的に答えた。
「―――ワーパーらしいやり方だが、なぜこいつを? それにこいつ―――」
「―――時限移動事故者です。」
「―――何!?」
俺から見て詳しい事情は分からないが、何か難しい話が進んでいるようだった。
「―――――何が起きているんだ?」
「―――――だが、こいつ?!」
「―――――1989年4月29日生まれ、現在33歳、国籍日本、身長169Cm、体重52Kg―――――」
リードがこれがと言うように一瞬俺に眼を向ける中で俺が質問し、リードが何かを言いかける中で、桜が口を開き何かを言い始めたが、間違いなく俺の経歴だった。
「―――――現在はPMASCAGS少佐です。」
「―――言っただろう? 先輩だと?」
「――――――――――」
うそだろと言うような反応でリードは桜と飛鳥を見ていたが、桜と飛鳥は言葉を続け、俺はどうすればいいと言うかのような反応だった。
「―――――で、お前たちのスリーサイズは?」
「―――――」
少し重たい雰囲気だったので思わず出たが、2人はと言えばこんな時にと言うような顔をした。
「―――――ッグフ?!」
「―――――冗談だ。」
2人が固まったが、聞いたリードが不意に吹き出し、笑うのを我慢しているのか手で口を押え、肩を上げ震えはじめた。
口が軽いと言う訳ではなく、無表情で言うから冗談が冗談ならないと言う状態で、海外ならある程度は言いが日本だったら確実にセクハラとして訴えられる可能性あるし、何にしても俺が悪かったと言うように言葉を返した。
「―――話を本題に―――――?」
「―――どうしてこう海外で暮らしているやつってのは~?」
「―――――よしよし?」
話を戻す必要があるし、怒られないかとも思ったが、飛鳥が半泣いているような物言いで言い始め、桜は飛鳥の頭をなでていた。
「―――――えぇと、さっき聞いたが、名前なんだった? えと? 聞いてなかったな?」
「桜です。佐藤桜。」
「―――――堂城飛鳥だ。」
笑うのを抑えていたリードも落ち着き始める中で俺は名前を聞く中で、2人はそう言えば名乗ってなかったと言うように合わせて名乗った。
「Ok、ミス佐藤、ミスどうじょ―――――」
「名前で、呼び捨てでいいです。」
「―――――わかった。」
名前を確認し、言いかける中で桜は俺に対し、日本語ですばやく返し、俺は解ったと言うほかなかった。
「―――で、事実だとして、ここが1998年の12月25日だとして、俺はどうなる?」
「―――――」
「―――――帰れるのか? 精神病院送りか? サラ コナーと同様に?」
質問をするが、2人はとりあえずは話を聞くと言うように返事を返さなかった。
言葉の中に出てきたサラ コナーとは人物名で、映画「ターミネーター」に出てきた女性の名前だ。
1作目で殺されかけ、続編の2作目では事件を隠ぺいされ精神疾患患者として精神病院に入院させられていた。
「それともここはラクーンシティか? ゾンビ、いや恐竜がいるからディノクライシスか? 食われておしまいか?」
「―――他の戦いも同時進行で行われる。」
「―――!?」
冗談と繰り返し続けるような物言いの中で俺は言葉を続けていると、不意に桜が口を開いた。
ラクーンシティとはヴィデオゲーム「レジデントイーヴル」、言わば日本版タイトル「バイオハザード」に登場する架空の都市だ。
時間移動したのが事実ならばゾンビ化ウィルスが蔓延し、この年の10月ごろに核ミサイルで消滅した設定になっている。
ディノクライシスと言うのはバイオハザードを販売したメーカーが開発したゲームで、原因はウィルスではないが、敵がゾンビではなく恐竜になっている。
時間移動したと言うことをよく考え、事実だとするとこのころはまだバイオハザードは3、ディノクライシスは発売したかいないかの領域だったが、何にしても桜は言葉を続けた。
「―――勝者候補は振るい落としにかけられる。」
「―――――?」
「―――そして、敗者は生まれながらにハンディキャップも与えられている。」
状況を踏まえ、言っていることは意味不明だが、よく考えると間違いなく雷也の話したイザナギノタタカイに関係していることだと思われた。
「―――お前―――」
「―――わたしは参加者ではありません。」
仲間かと聞きかける中で桜は勢いよく否定した。
「―――わたしは観察者です。」
「―――?」
「―――――どういう意味だ?」
否定する中で何者かと言うように意思表示したが、余計に意味が解らず、話についていけないのはリードも同じようで、振り返ると服の中からタバコの箱を取出し、吸おうとする中で聞いてきた。
イザナギノタタカイの意味は解らないが、時限移動事故者とは原因は犯罪だったり原因不明だったりするが、時間移動をした人間のことだ。
話を整理するとオレリードが出会った男山中はAGSの職員ではあるが、ゲート創造前の時代の人間のようだ。
AGSの創設は1999年の12月31日として、ゲート創造は数百年後、山中は中間に位置する職員であり、この男もなんと言う偶然や因果だと思いながらオレは少しタバコが吸いたくなりタバコの箱を取り出して1本口にくわえていた。
ベータエンドルフィンなどの脳内麻薬やタバコに含まれるニコチンやタール、過激だが覚醒剤などもハイブリッダーは体内生成も可能だが、人間の振りや習慣を真似ることや時折外部的吸収が欲しくなり、オレはタバコを結構愛用していた。
「―――禁煙。」
「―――Fall Head」
振り返った山中は飛鳥と桜のほうに向きなおったが、飛鳥が機嫌が悪そうな様子で訴え、オレはすばやく意見を返し、火をつけながら山中にタバコを進めた。
「ほら?」
手に平の中央を車用のライターの様な部品に変えて火をつけ、オレは紫煙を吸い込んだ。
「―――――いや、いい、やらないんだ。」
「―――――Scrap」
「―――いやに黒い煙だが、大丈夫か? それ………?」
山中の生きている20世紀から21世紀初期と言えば日本がタバコ喫煙世界トップ3にも位置していたころだが、山中は以外にもタバコを吸わないようで合わせて手も上げて振り少し困った顔で断った。
「―――!?」
「―――――こっち来て話ししろ! 風下に立つな! 死ぬぞ!?」
少し心配そうに見ていた山中に対し、飛鳥は強引に山中の服の首元を手に取って引っ張り、山中は2人の後ろ側に立たされることになった。
この時からだが、山中が微妙に女に対し何か普通の男と違う反応がされている気がした。
「―――存分な物言いだな? ワーパー?」
「ファーミュアのGAIKOTSUだろうが?! ―――――ゴホッ?! 無理?!」
いったい何事かと見ている山中を放置しオレが声を飛鳥にかけるが、舞った紫煙を吸った飛鳥はせき込み、風で煙を払った。
「―――――」
「―――なんだ? この臭い? 失礼だが酷過ぎる………?」
飛鳥がせき込み手で払いながら後ろに下がり、桜は煙を吸ってはいないが、表情を曇らせながら手で鼻と口を覆いながら下がり、煙の臭いを吸った山中も勢いよく手で鼻を塞いだ。
「ファーミュアのGAIKOTSUと言うタバコです。」
「―――――ガイコツ?」
「―――農業惑星で生産された人類史上最強最悪のタバコだ!」
お前らはどういう身分だと言うように2人は山中の後ろに回り、何事かと言うような反応を山中を盾にするようにして話し出した。
「―――人間が1回の喫煙で摂取して絶命しない寸前の成分量が使われている。」
「―――別名サタンスモーク!」
「―――――さたんすもーく?」
後ろに下がることはなかったが山中はすごいなと言うような顔で、飛鳥と桜はと言えばこれ以上近寄るなと言うような顔をオレに向けていた。
山中はと言えば2人の反応に対し、何事かと言うような反応だった。
黒く細長い箱に表面には海賊旗を思わせるような骸骨と右横には血の様な赤い砂を使った砂時計が描かれ、だれがどう見ても危なそうに見えるオレが持っているタバコが、飛鳥と桜の言うタバコ、GAIKOTSUだ。
GAIKOTSU
―骸骨―
桜の言う通りで人間が一回の喫煙で摂取して絶命しない寸前の成分構成になっており、紫煙とは言うが煙は異常なほどに黒く、農業惑星ファーミュアが開発した人類史上最強最悪のタバコだ。
発展した時代のさなかに宇宙開発競争も始まり、テラフォーミング、言わば擬似的な地球型惑星へと作り替え、農業優先に造りだされた惑星がファーミュアであり、この惑星で造られたのがGAIKOTSUだ。
「―――何しても、仕事の話をしましょう。」
「―――仕事?」
「―――仕事にこいつを同行させればいいんだ。」
普通の人間でも吸えば場合によっては気絶したりするが、ハイブリッダーのオレには効果など無いに等しく、吸っている中で桜が口を開き、オレがくわえタバコで紫煙を吐き出しながら返すと飛鳥が山中を軽く見た後言った。
「―――――」
「―――――」
桜は10前後半ほどで幼い印象だが芯が強く見え、悪くない取引だから言うとおりにしろと言う顔で、飛鳥のほうは頼むから言うとおりにしろと言うような顔をしていた。
「―――――監視官候補の研修か? それとも時限重要人物か? お前たちで保護して返さないのか?」
「―――詳しくは言えんがイザナギノタタカイと呼ばれる戦いがあるんだ! 彼は優勝候補者として一時的にこの時代に飛ばされたんだ。」
「―――彼を勝利させる必要がありますし、すぐに戻しても時限保護上意味がないし、ほかの戦いには間接的にですがあなたとアーウェーとの戦闘も関わっています。」
時間の迷子になった人間、言わば時限移動事故者を助けるのは無論ゲート使用の旅行者の責任でもある。
理由が何にしても当事者を犯罪者のオレと同行させると言うのは奇妙な話で、質問するも飛鳥と言い桜と言い自分たちも少し困っていると言うような反応を返した。
「―――彼には監視官としてあなたの付き添いをさせますし、あなたにはこの世界の情報が必要となります。」
酔狂な話な上に当事者の山中がどういうことだと言う顔の中で、オーグは違法な時間移動をしたオレに対し、時限移動事故者の山中を監視官として監視させるようだ。
一種の司法取引だと判断でき、この時オレは山中が歴史には語られないが何か重要な役割を持っているのだと判断したし、優秀な監視官の候補だと勝手に判断した。
監視官とは第3次大戦後に生まれた職種の1つだ。
犯罪者を司法取引でPMASCや司法関係の職務の職員に働かせるようにしたが、危険な行為を防止するために監視する人間たちのことで、オーグはどうやら候補者の山中を実戦による研修をさせようとしているようだ。
「―――――断ると言ったら?」
「―――逮捕しますし、逃亡すれば追跡します。」
「―――――」
威勢よく返したが、オレはこの桜と言う女と言うよりも少女に対し、何か嫌な感覚を覚えた。
Sakura
Unknown
Asuka
Homo Genetical
分析してみてみると、飛鳥のほうは見てわかるが遺伝子改良されているのがわかるが、桜は不可思議なことに正体不明と出たのだ。
「―――おい? お前たち? これが事実なら、すぐに返してくれないのか?」
桜に対してこいついったい全体何者だと考えている中で、山中が2人に対して声をかけた。
「―――イザナギノタタカイと言い詳しい事情は分からんが―――――」
「15万では?」
「―――――?!」
よく考えてみれば一番混乱しているのは山中で、何とか会話に割って入る中で何にしても意見を言おうとする中で桜が口を開き、山中が口を止めた。
「―――2年間契約です。年収は税金など差し押さえ引いて手取り15万でどうですか?」
「―――――?」
「―――円ではなく米ドルで、30万では?」
言葉通りの買収だ。
山中を飛鳥と桜は買収できる能力を持っているし、この時代の人間で山中は現金の話には弱いのだ。
オレの生まれた時代では抱負な資源や自給率の高さなどによって人間は必要最低限の生活は、死なない生活はできるようになっているが、この時代は生きているだけで金が要る不条理な時代だ。
日本人の山中のような人間の年収は正社員の様な存在の場合推定してよくて平均300万から600万円で、米ドルが1ドル100円のレートとした場合米ドルでは年収3万ドルから6万ドルと換算される。
傭兵など命を賭ける仕事なのだから腐るほどもらっていると思う人間がいるが、ほかの仕事よりも少し少ないと言うのが現実で、経費や税金なども実費で差し引かれ、実情は世に言う雀の涙ほどだ。
職場の環境も他国が多いと言うことも含め環境も悪いのが現実の中で山中は年収30万ドル、日本円レート3千万円のある意味超好待遇の仕事の話をされているのだ。
契約も2年と言ったが、これもPMASCの契約として基本的な年数で月ごとや週ごと、半年もあり、これはまだ長い方だ。
「―――――」
「―――――では50万ドルで。」
銀行から発光される札やクレジットカードの様な経済の信用取引がこの時代から広まり始め、金銭の電子化が未来で一般化し、未来では銀行や造幣局の発光する金発行券、言わば札の価値は紙切れ以下の価値よりも低くなっている。
スペースフロンティアの成功によって豊富な資源確保によって物価も低下しこれも手伝い、オレの生まれた時代はこの時代と比較した場合雲泥の差の経済格差が起きているし、物の価値などあってないようなものだ。
アメリカの場合だが現在の経済格差を無視するとして一番裕福とされているが、オレの時代で言うとこの国は最下位の国家よりも劣った国だ。
資源節約のために札の発行が止まり、金銭は電子化され、よほどの物でなければ札には価値はなく、少ない電子マネーで多量に製造可能となり、こう言った職務の現地での活動資金となっているのだ。
混乱しているような、目を丸くしていると言うような山中に対し、桜は金額を上げてきたが、その気になれば500でも、5000でも、桜たちには払える力が存在している。
「―――――契約更新は自動です。口座支払、現金受け取り、日本円での支払いにも応じます。現地活動での資金は経費として含まれ給料から差し引かれません。」
「―――ひとまず、活動資金だ。5万ドル、好きに使って結構だ。おつりは返さなくてもいいし使い切ってもいい。」
極め付きにと言うように桜がいい、普通は自動の契約更新もないし差引も多く、飛鳥は札束を山中の前にだし、山中は思わずと言うように受け取ってしまっていた。
「―――ご安心を、不自然がないようにわたしたちが裏で調節いたします。」
「―――――」
「―――足りない場合はまた出すし、万が一にお前が負傷や死亡すれば遺族年金も発生する。」
桜が言葉を続け、飛鳥も言葉を続ける中で山中はオレのほうに眼を向けた。
一見すると少し無表情に見えるが、オレの眼は山中がいったい何がどうなっていて、当然だがこれが現実なのかと聞くような眼と開いた口が塞がらない状態だと言うことを認識し、山中の手には何にしても札束が握られている。
「あ、そうだ。それと武器な?」
困っている山中に対し、飛鳥は手に持っていた少し大きいアタッシュケースや荷物を強引に手渡し、山中は受け取ると札を落とし、札を急いで拾った。
「―――――STI Edgeの45口径です。」
「必要なものはその中に入っているからな?」
これ以上何をと言うように山中が見ている中で桜と飛鳥が口を開いた。
STI Edgeの45、拳銃の名称でオレが持っている銃と同じ銃で、ケースの中に入れられているようだった。
この銃は口径含め、PMASCAGSが職員に対し任意だが使用を推奨している銃で、AGSが階級別に支給しているカスタムヴァージョンも存在している。
1985年に米軍が45のM1911A1からトライアルによってピエトロ ベレッタ社のM92FSのような9mmパラベラムに変換し、国際情勢的にも小口径全盛期に突入する中で、MEU(米海兵隊)やSocomのようにAGSは45の使用継続の方針に打ち出したのだ。
山中が45を愛用しているかこの時わからなかったが、何にしても受け取っていた。
よすぎるし悪すぎないし、武器も金も手に入ったし、何にしても山中には断る理由がなくなった状況だ。
「―――――オーグの犬め。」
何にしても山中はある意味PMASCAGSの同僚だが、これで買収されたも同然で、オレは飛鳥に対して批難するように言う中で、タバコが吸い終わった。
現実とは思えない出来事が起きすぎている。
よく考えれば雷也のことあるが、思わず頭の外に行ってしまう状況だ。
特に俺山中個人の意見ではないと思うが、傭兵は現地通貨の現金支給に弱いのが特徴で、飛鳥から渡された現金を見れば逆らえない状況だった。
基本現地通貨さえあれば本社からの表にしても、裏ルートにしても、食物や装備が手に入り整えられるので、金が渡されると餌付けされるも同然な上、アタッシュケースの中には銃以外にも武器や服と言った少しの間は必要最低限活動できそうなものが入っていた。
「―――いいから言うとおりにしろ。悪くない取引だろうが?」
「―――」
偽札か夢か、何が現実だと考えている飛鳥が口を開いた。
何にしても2人の話が事実だとして考えるとリードは未来だが同じAGSの社員にして機械かサイボーグだと思われるが、無茶苦茶な状況だ。
「―――あいにくとオレはお前らみたいに言われたとおりにしか動かない犬じゃない、山中は経済事情上買収できるだろうが―――――」
「ではドレッド大将、AGSからの指令では?」
「―――!?」
リードはあの戦闘と言い、何かと戦っていることは確かで、飛鳥と桜の言ったことから判断して法を犯していることがわかるが、俺を連れて歩けば逮捕は免除だと言う状況だ。
「―――――なん、だと?」
「―――恋? いい?」
『―――うん、いいよ?』
ドレッドが何者かは解らないがリードがどういう意味だと言う中で、不意に桜が無線機か何かでも装着しているのか耳に手をあて、通信の相手にか話し、通信機越しだと思われる声が桜の耳元から聞こえた。
「―――」
『やぁ、リード、元気かい?』
電話に出てくださいと言うかのように桜は耳に着けていたと思われる小型の無線機、言わばインカムのような物をわたし、リードはそれを受け取るとインカムから声が聞こえた。
正確には低い男の声で落ち着いた雰囲気の声だった。
ドレッド アームズはオレリードの上官だ。
上司として信頼しているし、オレが大戦中に出会い、ハイブリッダーとしての人として異なると言う誇りや意志を教えられ、尊敬している師でもある。
PMASCAGSの現大将であり、現状的にドレッドはオレを厳重処分する身の上だが、話し方に重苦しい雰囲気は全く感じられずいつもの調子だった。
『―――なぜだって反応だね?』
「―――」
言われた通りでなぜ通信機の向こうからドレッドの声が聞こえてくるのかわからなかった。
無線機の機能を理解していないわけではなく、オーグの犬でもなくPMASCAGSのドレッドがなぜ桜の通信機から話しているのが理解できなかったのだ。
『―――下請けってやつだよ?』
「―――なるほどな?」
少しだけ間を置いたがドレッドは口を開き、オレは言葉を聞くとドレッドと同じように少し間をおいて納得した。
下請けとなったようだ。
言うまでもないが下請けとは国と言った公共団体や大企業と言う大きな組織が本来する仕事を参加や関係する会社に依頼し遂行させることだ。
本来の職員を使用しないことで一時化や人件費削減、正規職員を用いないことによる指揮系統などの簡略化できると言う長所を持っている。
短所と言えばこの1999年以後の日本などで一般的になるが末端の派遣社員の低賃金化や切り捨て、正規社員を用いないことによる責任者不在と言う事態が発生する。
根源の依頼者が大組織であり、下組織が依頼を末端組織に依頼するなど依頼を重ね、事態が複雑化していることも事実だ。
PMASCで下請けがあるのかと言えば当然に存在し、AGSは創業当時からCIAのような国家組織や大手PMASCの下請けをしている実績があり、下請けの重複も問題になっていたとのことだ。
『メインスポンサーはオーグの軍事関係者、依頼請負はワープで、下請け実行はPMASCAGSだ。』
「―――」
『指揮はそこにいる堂城飛鳥大佐で、僕ドレッド アームズ大将は特別参謀兼顧問と言うべきかな?』
ドレッドは変わり者だ。
不意な言葉だがオレが少し動揺しているせいもあるが、相変わらずこの落ち着き払った態度はオレを含みほかのハイブリッダーにはない特徴だ。
ハイブリッダーは本来普通の人間よりも知能も低いし気性が荒く、あまり深く考えない性格が多いが、ドレッドは大手軍事会社の御子息と言ういい場所の生まれかオレとは正反対な性格だ。
『任務はプロジェクトヤーウェーの阻止及び関係者抹殺と組織の壊滅、加えて時間移動事故に遭遇した山中一輝の保護及び機構司法代理人としての教習だ。』
「―――」
『―――理解できたかな?』
詳しい説明ありがとうございますと言うような状況で、無線機越しにドレッドはオレに対して聞き返してきた。
『君の逮捕は保留となるし、オーグの犬となる以外は現状的に不満はないと思うが、質問はあるかい? ないなら山中少佐に変わってほしいんだが?』
「―――――Yes Sir」
厳重処罰する必要もなくなった現在の状況上、こいつは一生賭けても勝てないなと考えている中で、ドレッドが口を開き、オレは山中に無線機を手渡した。
普通の人間だから少し足でまといなどになるかもしれないが、何にしてもオレは少し腹も立つが命令に従うことにした。
現状で理解できるのはここで起きているのは率直に仕事の話だと言うことだ。
時は金なりや金は天下の回り物とは言い、時間移動したと言う事実があるが、飛鳥と桜から荷物渡されて半場銭亡者と言う状態の俺山中はそれを感じていた。
簡単に言うとリードと行動し何かを知ろと言うことのようで、終わったら本来の時代に返すと言うことなのだろうと考え始めていた。
異様な話だが金も受け取ったし、リードが上司と思われる男とも話納得しているような様子もあるしと言う中で、俺はリードに無線機を手渡された。
「―――ハロー?」
『―――始めまして、山中一輝少佐。』
どういうことかもわからないが俺は無線機を受け取りあいさつすると落ち着いた口調の男、リード言っていたドレッドと思われる男が話しかけてきた。
『―――君は現在非常に混乱しているだろうね?』
「―――おかげさまで。」
地獄か天国かわからないし、何にしても本音を言うと日本に戻るのは嫌だし、夢でもいいから少しの間は現実逃避でもできるかと思いながら無線の言葉を返した。
「―――ドレッド、とか言ったか? これは現実なのか?」
『―――間違いなくね。何にしてもこれはPMASCAGSの仕事だ。引き受けてくれるかい?』
「―――AGS?」
何にしても彼に対しても肝心な質問をする必要があると思い、俺が質問するとドレッドは俺に対して聞きなれた言葉を返してきた。
『―――少佐、僕と言いリードと言い、わたしたちは君の後輩でPMASCAGSの職員だ。』
「―――」
俺はこの時リードの会った時の信じろと言う言葉を思い出、リードの方に顔を向け、リードの着ているAGSの上着を見た。
間接的ではあるが、リードと言い、この無線機越しのドレッドと言い、一応は仲間であるようだった。
『―――君も現状的に早々と日本には戻りたくないだろう?』
「―――」
『図星のようだね?』
よく考えたら仕事の上では後輩だし、俺のしたことをある程度だが把握しているだろうしと言う状況で、言葉を聞いて通信機越しの微妙な表情の変化を見られたかのような物言いで返された。
考えていることがよく顔に出ると言われるが、通信機越だがこの時ばかりはどこかでドレッドが見ているかと思った。
『―――悪くない話だろう? 報酬も円満でほとぼりの覚めたころに戻す予定だし、時間移動旅行に約束された将―――』
「―――わかった。」
俺は言葉の途中だがドレッドに話すのを止めろと言うように返した。
上の立場になれる人間と言うのはいつのどこの時代でもそうだが口が達者なものが多く、人付きがいいもので、話し方も悪い気がしないが、長くなりそうなので俺は打ち止めさせた。
『―――では、佐藤大尉に無線機を返してあげてくれ。』
「―――ん。」
『支給品には無線機とイヤホンもある。春野少尉からも次期に連絡があるだろうし困ったら連絡し―――』
話を途中で止めさせたがドレッドは話をいつまでも続けてはいけないと言うのがわかるようで、桜に無線を返せと指示した。
俺は言葉にもなってないが、軽く返事して返す中で、ドレッドは言い忘れたと言うように最後の言葉を言う中で俺は桜に無線を返した。
ドレッドと山中が一体何を話し、山中にどういう事情があるか知らないが、結果は何にしてもこの男こと山中をオレリードはこれから同行させないといけないようだった。
話し終えた山中は桜に無線を返し、桜は受け取り耳に戻した。
桜が無線機を耳に戻す動作は髪どめを戻すかのような動作で日本人らしい気品のよさを感じた。
「―――」
「―――ワーパーの指示に従うのは嫌だが、本社とドレッドの指示なら従うが、こいつは本当にオレが面倒を見るのか?」
「―――ああ、そうだ。」
山中はどうなるんだと言うように困った表情で腕を組み、質問すると何か感に障るような物言いをするなこの女と思うが、飛鳥は言葉を返した。
「―――」
「―――では、任せました。」
飛鳥も考えているのか、オレもだがお前とはどうしても気が合う気がしないと言うか仲よくなれないと言うか、馬が合う合わない以前の問題と言う眼でお互いを見ていたが桜が不意に口を開き、頭を下げた。
「―――――では。」
言い終え頭を上げる中で、足元に何かが落ちる乾いた音が聞こえた。
「―――――?!」
「―――――?!」
何か落ちたぞと言う暇もなく下を見ると、だれがどう見ても手榴弾のような物が落ちていた。
「―――――」
「―――――生きてるか?」
「―――――ああ。」
手榴弾のような物は桜か飛鳥が落したことは間違いなく、オレと山中は危ないと言うこともなく爆発する寸前に勢いよく手榴弾から離れ、地面に伏せていた。
閃光手榴弾、言わばフラッシュバンやスタングレネードの類だったのか、伏せる少し前に背後で強い光が見えた気がし、大きな音や振動を感じたが痛みのような物は感じられず、山中が声をかける中でオレは返事を返した。
連れて行けと言われどうしようかとも思ったが銃の構え方と言い、手榴弾への反応と言い戦闘慣れして基礎は持っていると思われる反応だった。
手榴弾を投げられたらどう対処すればいいかと聞かれると爆発した破片の斉射角も踏まえ、できる限り離れて地面に伏せることで、オレは当然だが山中も十二分にできているようだった。
閃光手榴弾と言われると強い光と音だけ出すし大げさだと思われるが、手榴弾には変わりないし、戦争では即座には明確な判別も不可能だし、逃げることが一番いいのだ。
閃光手榴弾の殺傷力は0に等しいが使用用途として、撤退時の時間稼ぎに一時的とは言え照明や制圧時の最初の攻撃、言わばきっかけとしても使われる。
「―――ニンジャかあいつら?」
逃げるかおどろかせるか最初に言葉通りとも言えるかわからないが威光として使い、桜たちの使い方は正しくは逃げるために使ったようで、2人の姿はなかった。
「―――お前は違うのか? サムライか?」
「―――その話は止めようぜ?」
思わずと言うように俺山中が言った後でリードが言い返してきたが、俺は勘弁してくれと言うように返した。
「―――何にしても、着替えたらどうだ? 予備の服もあると思うぞ?」
「―――」
血が落ちにくいと言う話があるがこれは事実で、汗や泥のような普通の汚れほうがまだ落ちやすい方だ。
血液の成分自体が赤いし、皮膚や布に大量に付着すると思いのほか目立つし人体の液体以外の成分も含まれるのか普通の液体よりも粘着性や固着性があり、俺の着ている服は汚れが落ちそうもないし破棄する方がよさそうだった。
「―――まぁ、いいか、一番長く使っていたし、捨て時だったしな?」
「―――MOTTAINAI、か? フフフ?」
着ていたAGSの上着は一番長く着ていたもので古くなっていて捨てようかと考えていた時で、惜しいことをしたなと言う中でリードは笑って答えた。
飛鳥と桜から渡されたケースの中を開き、俺は何か使えるものはないかと探し始めた。
「―――そういや、ここなんかあったかいぞ?」
だれが入れたのかわからないが中を開くと着てくださいと言うかのように何着か服が入れられ、俺は着替えようとする中で肝心なことに気づき、リードに質問した。
時は20年以上前とは言え冬のど真ん中で先ほど目覚めた時は手足の先が痛むほどの寒さだったが、少し暑いと感じるほどの暖かさがあった。
「―――ああ、オレが温めている。」
「―――は?」
服を脱ぎながらリードの方に眼を向けていると、リードが意味不明な言葉を口にした。
「―――周囲をオレが温度調節しているんだ。あいつらもしていた。」
「―――現実屋外じゃ無理だし、これが未来の力ってやつか?」
ある程度だが言葉の意味を理解する中で俺は服を見るが、服は上半身も下半身も血まみれで、パンツまで全滅していた。
「―――見るなよ?」
「―――安心しろ、オレは同性愛者じゃない。」
「―――安心した。」
パンツまで代えることとなり全裸になることになり、リードに言うが自棄になっているのか笑いながら言った。
意外に思われるが俺たちのような軍事関係の職業の人間たちには自衛隊を含み同性愛者は意外に多く自衛隊の場合日本の公務員のお役所仕事であり安定の中に間接的保護が存在し差別を受けないのか多種多様だ。
差別する表現かもしれないが何にしてもほかの人間とは違ったもの好きな思考を持っていることは確かなようで、自衛隊時代に貴重な体験とも言えるが夜這い、言わば睡眠中に性的に襲われかけたことがあり返り討ちにしたことがある。
意図も理解できず寝ぼけて女の夢みていると勘違いし、部屋から怒号と同時に蹴り飛ばした数日後に仲のよかった上司とわかり、かなり気まずい状況となり、間接的に俺のせいだと言うのは言うまでもないが上司が辞めた。
俺は感じなかったが結構うまい方で結構被害にあっていた人間も多く後で被害者仲間に感謝もされたが、反対側の人間から危険人物として注視されたことは間違いない事実だった。
入っていたのは2年ほどで、入って数か月ほどに起きた一件であり、一部の人間には名を知られ、限度を知らないようで、女のような外見の同性愛者の男の後輩に告白されたこともあった。
同性愛者でもない上不干渉と言う最悪な状況で結局振ることとなったが、この時不意になんとなくと言うか、リードの言葉が原因だと思うが、その男のことを微妙にだが思い出してしまった。
「―――人が来ないように見てろよ?」
「―――見ているよ。オレも疑われるからな?」
「―――っと。」
命令できるような身分でもないと思うが、指示を出すとリードは返事を返し、軽く笑いながら言う中で俺は着替えを終えた。
着ていた服は捨てるわけにもいかず、ビニール袋に入れたい気もしたが、現在着ている服の入れてあった場所に半場押し込んでおくことにした。
よく見ると夏服や戦闘服のような物もあったが、俺はAGSの冬服を結局選び、寒くないように厚着し、何にしても普通ではない事態だし、血を見て雷也のことを思い出したが、何にしてて銃収納用のホルスターもあったし装着し武装を始めた。
「―――佐官階級用モデル、あぁ、そうか? 俺佐官なのか?」
こんな場所で四六時中銃を持つのは物騒だなと思いながらも銃を手に取った。
ケースの中には偽造だと思われるが所持や携帯の許可証だと思われる書類もあり、予備の弾奏も入れられていて、俺は銃を手に取ってあることに気が付いた。
銃はAGSC、アドヴァンスド ガード セキュリティー カスタムだった。
AGSがSTI社のエッジ5.1を原形に改造したモデルで佐官階級用の改造がされていた。
フレームとスライドストップにマガジンキャッチ、マズル、トリガーに加えエジェクションポートをチタンシルヴァーに変え、チタンシルヴァーの大型マグウェルが装着され、ハウジングが延長されランヤードリンクが設けられ、モノポッドとしても使える。
外見やカラーリングだけの改造銃ではないようで、トリガーはキンバーだと思われるがツーホールへ変更、サイトにはグリーンの集光ファイバーが使われ、おそらく内部も研磨されジャミングの発生率も減少していると思われる。
マズルが延長されフラッシュサプレッサー式にされた上、サイレンサーが装着可能なねじ式に変えられ、ケースの中には使えと言うのかサイレンサーも入れられていた。
アランズィッタと言うガンスミスが同じ銃を原形に改良したストライクガンと違い、フロントやハンマーのガードやレイルシステム、アンダーマウントレイルはない仕様だが、タクティカルユース向けに改造されている。
無骨なハイキャパシティフレームだが高階級用にだが悪く言えば無駄な装飾が、よく言えば権威の象徴とも言える装飾が施されている。
「―――おそろいだな?」
着替え終えて銃の弾丸を探し、装填を始める中でリードが拳銃を取り出して俺に銃を見せると同じ銃だった。
あの戦闘の時取り出したのを見たが、思い返してみると同じ銃だったと俺は再認識した。
「―――ああ―――?」
「―――どうした?」
「―――刻印が俺用に変えられている。見ろ?」
そうだなと思い軽く返事を返す中で、あることに気づき、軽く笑いながらリードに銃のスライド部分を見せた。
STIには本来スライド部分に鳥の刻印がされているが、スライド部分には別のものが描かれ、俺はすぐにそれが自分のトレードマークだと解った。
「―――お笑いだぜ?」
「牛の頭蓋骨? 左眼から出ているのは蛇の頭蓋骨か?」
「―――ああ。」
牛の頭蓋骨の絵だが、左眼の部分から蛇の白骨が身体を出していると言う不気味な絵だが、これは俺がAGSでのトレードマークにしている。
飛鳥たちがどこまで信じられるかわからないが、何にしても豊富な資金があることは事実なようだ。
「―――牛ならわかるが、なぜ左眼から蛇を?」
「牛は生まれ星座、蛇は日本の十二支、神に仕える動物の内の一匹だ。俺の生まれ年で左から出ているのは利き手利き眼だからだ。」
何にしても準備を整えながら俺は話した。
「西洋では牛は勇敢な生き物であり、蛇は旧約聖書では最も賢いと言われている。」
「―――なるほど、賢さと勇敢さを併せ持つか?」
「―――まぁ、げんかつぎだし、見かけ倒しの臆病者だがな? と、これでよし。」
なにしても俺は銃をホルスターに収納し、マガジンも収納した。
「―――ナイフにスタンスティック、何をやらせたい? と言うよりも、戦争をさせたいのか?」
ケースや荷物の中にはまだ武器があると言う状態だが、どこまで俺のことを知っていると言う状況で、ナイフは俺好みの刃の長さ30Cm以上のロングナイフがあり、俺は腰に装着した。
他人から見られると奇妙な装着法でこれが一番個人的にいいのだが、左側の腰に逆さ向きに装着した。
寒さに対応できる服に武器に金が手に入り、何にしても戦う準備は整ったと言う状況で、俺は起き上がり、リードの方へ顔を向けた。
オーグの最終的な目的は成功するにしても失敗するにしてもプロジェクトヤーウェーをPMASCAGSのオレリードに阻止させ責任を押しつけ、眼の前にいる男、山中一輝をオレ専属の監視官として教育させる気だと思われる。
イザナギノタタカイと言う歴史にはないが何にしてもある戦いに巻き込まれ、この時代に送られ本来オーグに保護される立場だが、ある意味オーグの奇行にオレも山中も巻き込まれたことになる。
オレと山中はまだいい方とも言えるかもしれないと言う状況で、時間航行警護における奇行とも言える職務は意外だが有り余るほど存在し、何にしても時間航行技術がこの世界に悪影響を受けているのは確かだ。
「―――で、これからどうするんだ?」
東洋の言葉で旅は道連れ世は情けとは言うことわざがあるが、山中は桜たちの話す中で元自衛隊員とも言っていたし、AGSの先輩でもあるし、少し荷物にはなりそうだが、全く役には立たないと言う様子ではなかった。
自衛隊員の教育は国防組織職員として徹底されているし、仮に終わった後これが監視官になるならばAGSの職員としては少しユーモアも理解できるようだし、硬そうに見えるが結構いい方と思った。
飛鳥と言う女だったら毎日喧嘩しているし、桜は話が通らなさそうだし、あの犬2匹よりも格段に役に立ってくれそうだと思った。
懐柔させることもできるだろうし、場合によっては捨てて行けばいいし、途中で返されることもあるようだし都合よく使えそうで、同じAGSの職員としても学べるべき点もあるとも考えた。
「―――?」
「―――?」
Stan BushのTill All are oneだ。
何かと言えば音楽アーティストの名前で曲名であり、山中の腰のあたりから聞こえた。
「―――まさか? 携帯がつながるはずが?」
この曲は1999年にはまだ発売されていない曲だし、山中は口を開き信じられないと言うような反応だったが、腰に手を回し、携帯電話を取り出した。
正確にはスマートフォンと呼ばれる多機能型携帯電話で、山中の持っていたのは青い色のきれいな携帯電話だった。
通話を基本としてメールやウェブ接続機能を持つが、間違いなくこの時代には存在しない技術が使われ、山中がこの時代の人間でもなく、オレや飛鳥たちのような未来の人間でないと証明できた。
この時代にも無論携帯電話は存在するが、通話全盛であり、メール機能も使えるようになり始めたばかりと言うよりも、この時代は一般人への普及が始まったころだ。
山中が本来暮らしている時代が2020年代初期で当時の所持数が1人2台以上所持する場合もあり100%を超えているが、このころの所持数は国によっては先進国でも50%を超えない場合もある。
日本は海外と電波規格も異なり国外で使用する場合専用電話買い替えや契約変更が必要であり、この時代とも電波規格も異なり、ウェブ接続もOSも対応せず、どう考えても使用できないが、電話がかかってきていたようだった。
「―――ハロー?」
アラームのような物でも無いようで、山中は少しおどろきながらも、携帯の受話するためのキーを押し、本来来ない通話相手に対し、恐れながらもあいさつした。
「―――」
『―――あ、あの、ああ、あの、あの、あの―――』
「―――?」
表情はあまり変わらないが、不審だし悪いが怖いから一緒に見てくれと言うように山中に眼で合図され、オレは近づき山中の携帯電話に耳を澄ませた。
返事がないし山中は聞こえてないのかと言うような反応で、オレは機械の誤作動かと思う中で、この場で拍子抜けするが、慌てたような女性と言うよりも、少女のような声が聞こえた。
「ハロー?」
『あ、ああの? 聞こえてしゅきゅ?! ぃやみゃにゃきゃかじゅきゅ―――――』
山中はもう一度呼びかけるが奇妙な言葉が返ってくるだけで、山中は苦笑いしているような状況だった。
確かなのは電話の向こうの相手が非常に慌てている様子で、オレから見ての推測だが日本語で話し、噛みまくっているようだった。
「―――呪いの電話じゃないことは確かなようだ。」
「―――ヒヒヒ!」
受話器を不意に勢いよく塞いだ山中は小声でオレにそう伝え、オレは思わず笑ってしまった。
「―――もしもし、だれだ? ものすごく立て込んでいるんだ。大した用事じゃないなら後でかけ直してくれないか?」
『―――あ! あの?! 違うます! 違るんです!?』
電話の相手が日本語で話しているので山中は不意に日本語で話し始め、電話越しの女性は言葉を返した。
「用件を伝えろ、切るぞ?」
『山中一輝さんでふか!? ょし、ぃぇた………』
先ほどまで少し難しい顔をしていたが山中は落ち着いた様子で話し始め指示するように言う中で、女性は勢いよく山中の名前を呼んだ。
言葉の最後を噛んだように聞こえ、小声で何かを言った気がしたが、翻訳機を作動させていないオレは日本語があまり理解できないし、山中も大した意味がない言葉なのか無視しているような反応だった。
ほかの人間が同じ状況に遭遇したらどんな反応に出るか見ものだが、俺も山中も見ものになった人間の1人だ。
最初は何事かと思ったが、電話の向こうの相手は非常に慌てた様子の女性のようだが、何とか俺の名前を呼んできた。
「そうだが、だれだ? こんなキュートな声の女性は知り合いにはいないんだが?」
『―――!?』
声が結構幼い感じなのは事実で、軽い冗談と言う気持ちで言ったが、電話の向こうの相手は何やらかなりおどろいている様子で、俺は完全にと言うように落ち着きを取り戻していた。
「―――もしもし?」
『―――あ、あの、桜に、佐藤桜と言う女性に会いませんでしたか?』
「―――」
電話越しにでも慌てた様子が感じ取れるような様子で別の意味で心配になり声をかける中で、電話の相手は言葉を返してきた。
『堂城飛鳥と言う女性には? リード ファイヤーと言う男性とは?』
確かに桜と名乗る女性に会ったが同一人物かわからないし、この状況を説明してほしいと言う中で、女性が再び口を開いた。
少し早口だが、俺よりかはうまい語り口でわかりやすく聞こえたし、懐かしい日本語に思わず耳が反応した。
「―――会ったが? リードなら近くにいる。変わるか?」
『―――ょし、クラッキング成功………! やったよ桜!」
「―――?」
電話越しの相手は何があったかわからないが、小声でうれしそう言った言葉が聞こえた。
「―――桜たちの仲間か? なら英語で話さないか? リードに内緒話をしたくないんだ。」
『―――』
「―――どうした?」
何者かはわからないが桜たちの仲間のようで、桜たちと同様に英語で話そうと指示を出す中で、電話の向こうおどろき、沈黙した。
『―――――わ、わたしは日本人だから、それに桜はアルテミシアンだし、あなたと違って話せないんです!』
「―――わかった。」
意味の解らない部分もあるが、何にしても日本語しか話せないようで、俺は了解し再び受話器を塞いだ。
「―――すまん、後で話す。」
「―――わかった。」
もしかしたらだがリードは日本語がわかるかもしれないが、俺はリードに伝え、再び話すことにした。
「―――ところで、えっと? 名前を聞いてなかったな?」
『―――恋、れ、れれ、恋です! 春野恋!』
よく考えると名前は聞かれたが名前を聞いていない状態だったが、女性は勢い良く名乗った。
「―――わかった。恋、2、3質問していいか?」
「はい!」
「―――桜たちの仲間なのか? どうやって電話をかけた? なぜ英語が話せない?」
名前も解ったし俺は質問した。
恋の言った桜のアルテミシアンの意味は理解できないが、クラッキングに成功したとか小声で言っていたし、何かして電話をかけたのは解るが、仲間だし状況的に英語で話せないのはおかしいと思い質問してしまった。
『はい、わたしは桜たちの仲間で、ワープの少尉であり、あなたのオペレーターで現在あなたのスマートフォンをクラッキングして通話しています。』
「―――クラッキング?」
『―――英語は苦手でもありますし、それにリードさんに言いたくないことや相談したくないことなどがあれば日本語でわたしに話してください、全力でサポートします。』
ものの見事に模範的な解答が帰って来た状況でどういう意味かも分からない中で、言葉も最初と違いうまく話せるようになってきていた。
「―――仲間なのと、英語が話せないのは解ったが、クラッキングとは?」
ある程度は理解したが、クラッキングの意味が理解できず質問した。
クラッキングとはITの専門用語で、ハッキングなどと同じ意味を持っている単語で簡単に言うとIT機器に故意に支障を起こさせることであり、起こす人間をクラッカーと呼ぶこともある。
『―――ドレッド アームズ大将から話を聞いてませんか?』
「―――いや、聞いてな―――」
『どうしました?』
不意にドレッドの名前をだし、覚えがないなと思いながらも、俺は不意に無線機越しのドレッドが無線を返す寸前に言い忘れたと言うかのように言った言葉の中で春野少尉と言う言葉を思い出した。
「―――そう言えば、ドレッドがハルノとか言ってたような………?」
『そうです! クラッキングしてあなたのえっと、スマフォをこの時代でも使えるようにしたんです!』
何のことやらと言う状態だが、恋は自身満々な様子で言った。
「―――使えるようにした?」
『はい! 普段通りに使用可能です! 時刻表示などもそちらに対応しています。インターネットにも接続可能になっています。』
「―――」
確かに携帯が圏外になっていて使えなかったことは事実で、電話がかかることがないと思っていたのは事実だが、電話越しの恋は電話が普通に使えると言った。
確かに電話はできているが、本当かと疑い、言葉を返せなかった。
同じ状況に遭遇したならば想像してほしいだが未来から持ってきた携帯電話が使えるとは到底思えず、クラッキングして使えるようにしたと言うのも信じられない状況だ。
『―――携帯は通信が難しいので通信は控えますし、桜たちの持ってきたものの中に無線機があるので、探してみてください。』
「―――無線機?」
無線機と言えばドレッドがイヤホンもあると言ったのを不意に思いだし、渡されたものの中を俺は探し始めた。
「―――ああ、あったあったあった?」
『―――では、電源を入れてください、すぐに連絡します。』
彼女たちは用意周到と言うべきか中には小型だが無線機とイヤホンがあり、見つけたと言う中で恋は携帯の通話を切り、俺は無線機の電源を入れてイヤホンを耳に装着した。
1999年と言えば携帯の機能もたいしてない時代だし、電波の規格も異なるだろうし、傍受、言わば盗聴される危険があるが、通信費不要の無線機のほうが通信が容易だ。
「―――」
『―――聞こえますか? 山中さん?』
「―――ああ、聞こえている?」
電源を入れて軽く操作する中ですぐに恋の声が聞こえてきた。
『―――ゃった―――』
「―――」
『―――では、任務概要をメールでお知らせしますので―――』
小声だが恋のよろこぶ声が聞こえた。
電話がかかってきたこと自体不自然で疑ってかかるべきだが、恋の反応に思わずと言う状態で、無線も存在し話し合いもできたし、通信機越しに聞こえる恋が何者かは解らないが桜たち仲間であることは確かなようで、一応は信用していいようだった。
いつでもどこでもだれにしろ、仕事はあるようで俺は恋の言うとおりにメールが送られてくるのかと思い、携帯に眼を向けると携帯電話が鳴った。
Mute MathのTransformers Themeは俺の携帯電話のメール着信音で、どこのだれかはしらないが、恋だと思われるメールが届いた。




