第7話:英雄たちの競演と北の大地へ吹く新風
歴史的な熱狂に包まれたベルーナドームのグラウンド中央に、開幕初戦を劇的な勝利へと導いた二人の男が歩み出ていた。
満員札止めの大観衆から割れんばかりの歓声が降り注ぐ中、お立ち台に上がったのは、プロ野球記録となるサイクルヒットと完投勝利を成し遂げた銭形豹馬と、1試合左右両打席本塁打という前代未聞の離れ業をやってのけた巨漢スラッガー・ロイである。
最初にマイクを向けられた豹馬は、いつもの剃り込みを入れた角刈りを揺らし、いなせなべらんめえ口調を響かせてハキハキと答えた。
「おうっ! 満員のファンの前でマウンドに立って、打っちゃあサイクルヒットだ! これほど景気のいい話はねえよ! 途中、冷や汗もんのピンチもあったが、俺たちの執念とチームワークで掴み取った勝利だ! 今シーズンも、この銭形豹馬がパ・リーグの真ん中を突っ走ってやるからよ、しっかりついてきな!」
威勢の良い豹馬の言葉に球場が沸き返ったあと、続いて静かにマイクの前に立ったのはロイだった。チャコールブラウンの肌を引き締め、どっしりと立ったロイは、落ち着いた低い声で言葉を紡ぐ。
「……右だろうが左だろうが、俺のやることは打席で迷わず振り抜くことだけだ。マイナーで泥水をすすってきた俺を信じて使い続けてくれた監督、そして遠くで見守ってくれている母さんや親戚のみんなのおかげで、最高のスタートが切れた。……だが、まだ始まったばかりだ。俺のバットはもっと遠くへ飛ばす」
その物静かながらも底知れない迫力を秘めたコメントに、スタンドのファンたちはさらなる大きな拍手と歓声を送ったのだった。
一方その頃、選手たちの家族が暮らすそれぞれの家でも、テレビ画面に映し出されたヒーローたちの姿に温かい空気が広がっていた。
東京・神田の銭形家では、母の恵子や祖父母が息子の快挙に目を細め、隣接する猿飛家でも恭子や佐吉郎が英恵と豹馬の奮闘を誇らしげに見守っている。山形の林崎居合道場では、祖父・甚内と伯母の愛子が、ロイの圧倒的な一発に武道家らしい引き締まった表情のまま小さくうなずき合っていた。
そして近所の達摩家では、雷蔵と玉緒が息子たちの悔しさをにじませつつも、「負けられへんなあ!」と次なる戦いに向け闘志を燃え上がらせていたのだった。
新生・埼玉ジャガースの勢いは、初戦の勝利だけで終わらなかった。
続く第2戦では、先輩エースの髙橋空多が長身から投げ下ろす力強いストレートでバファローズ打線をねじ伏せて勝利を挙げ、第3戦では、前回の短期決戦でも共闘した平良快馬が気迫のピッチングでしっかりと勝ち星を掴み取った。
こうしてジャガースは、圧倒的なチーム力を見せつけて開幕カード3戦全勝を成し遂げたのである。
最高の滑り出しを見せた豹馬と仲間たちが次に向かうのは、北の大地――エスコンフィールド北海道。
対戦相手はもちろん、北海道アジアハムファイターズ。
敵地に乗り込んだ豹馬たちの前に、球界の常識を揺るがす恐るべき新ライバルが、静かに牙を研いで待ち構えていたのだった。




