↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
8/40

第6話:荒武者の狂宴、そして伝説の開幕戦

4回表の満塁ピンチを奇跡の「1-2-3」のホームゲッツーで切り抜けた銭形豹馬は、完全に息を吹き返していた。

荒ぶる感情を「大人のピッチング」へと昇華させた背番号24は、続く4回、5回とバファローズ打線を完璧に封じ込め、危なげなく3人ずつで片付けてみせる。スコア「5-3」のまま、試合は中盤の攻防戦へと突入した。

そして迎えた5回裏、ジャガースの攻撃。

先頭打者としてネクストバッターズ・サークルズから歩み出たのは、ほかならぬ投手・銭形豹馬その人だった。

「さあ、ここからまた追加点を奪ってやるぜ!」

バファローズの先発左腕・須谷龍平が投じた真ん中高めのスライダーを、豹馬は鋭い眼光で見据えてフルスイングした。

バットの芯で捉えた打球は、センターの頭上をはるかに越え、ベルーナドームの中堅フェンス直撃の大きな当たりとなる。豹馬は持ち前の快足を飛ばして1塁、2塁を蹴り、迷いなく3塁へと滑り込んだ。

「ヘッドスライディング、セーフ!! スリーベースヒットだ!」

自らの足でチャンスメイクした豹馬が、土埃を浴びたユニフォームを叩いて闘志を剥き出しにする。

続く2番・遊撃手の猿飛英恵が打席に入ると、球場の空気が一瞬で張り詰めた。

英恵は初球、須谷が投じたボールに対し、投手前へ絶妙なセーフティースクイズを転がした! 意表を突かれたバッテリーは慌てて処理するが、俊足を誇る英恵はもちろん、3塁走者の豹馬のホームインを阻むことはできない。

「生還!猿飛英恵の完璧なセーフティースクイズでジャガースが1点を追加、スコアは『6-3』の3点差です!」

この一打に崩れ落ちたかのように、バファローズベンチはたまらず先発・須谷の降板を告げた。

試合の主導権を完全につかんだジャガースは、7回裏の攻撃でも手を緩めない。

1アウトランナー2塁の場面で、再び打席には絶好調の豹馬が巡ってきた。

「狙い撃ちといこうかね!」

代わった救援投手から放たれた甘い球を、豹馬は鮮やかに二遊間へと弾き返す。打球はセンター前へとクリーンヒットし、二塁走者だった滝川夏央が俊足を飛ばして一気にホームへ駆け抜けた!

「タイムリーヒット! スコアは『7-3』! そして、このヒットで銭形豹馬、1回にツーベース、2回にツーランホームラン、5回にスリーベース、そして今のシングルヒット……なんと、プロ野球記録となる偉大なる『サイクルヒット』を早くも開幕戦で達成しましたぁーーっ!!」

どよめきと割れんばかりの大歓声がベルーナドームを揺らし、ベンチから飛び出したチームメイトたちが豹馬を歓喜の輪で包み込んだ。

だが、ジャガースの勢いはこれだけでは終わらない。

続く8回裏、先頭打者として回ってきたのは、初回に衝撃の先制3ランを放っている巨漢スラッガー・ロイだった。

この場面、バファローズは右腕の山咲颯一郎をマウンドへ送り出す。それを見たロイは、不敵な笑みを浮かべながら左打席へと入った。

「右だろうが左だろうが、俺のフルスイングに変わりはない!」

カウント0-2と追い込まれながらも、ロイは山咲が投じた真ん中低めのストレートを完璧に呼び込んだ。

肉眼で捉えきれないほどの豪快なスイングから放たれた白球は、今度はライトスタンドの上段へと突き刺さる特大のソロホームラン!

「打ったぁぁーーっ! ライトスタンド上段へ消える特大アーチ! ロイ、この日2本目のホームランです!スコアは『8-3』。何と、1試合左右両打席本塁打という前代未聞の歴史的記録を、新戦力のロイが成し遂げました!」

投打が完全に噛み合ったジャガースは、圧巻の状態で最終回を迎える。

ここまで見事なピッチングでバファローズ打線を抑え込んできた豹馬は、なんと9回表のマウンドにも1人で上がっていた。

西方監督はここで大幅な守備の入れ替えを敢行する。

キャッチャーには久賀悠斗、ファーストにはライトから回った長谷山信也、セカンドにはショートから移った猿飛英恵、サードにはセカンドから回った滝川夏央、ショートにはベテランの権田壮介が陣取る。さらに外野は、レフトに桑山将志、センターに西河愛弥、ライトに喜志潤一郎が入り、ナビン、渡鍋、ロイ、香島の主力野手陣はベンチへと下がってチームの勝利を見守る布陣となった。

マウンド上の豹馬の球威は、最終回になっても衰えを知らない。

バファローズの攻撃、3番・達摩厳、4番・達摩豪の恐るべき「達摩兄弟」が相次いで打席に立つも、豹馬の気迫に押されて立て続けに凡打に打ち取られる。

そして最後は、5番・盛友哉を外角低めへの完璧なで見逃し三振に斬って取った!

「ゲームセット!!」

スコアは「8-3」。あのドリームチャンピオンシリーズで初戦を飾った時と奇しくも同じスコアだった。

球審のプレイボールコールから始まった激闘の幕が、ついに下ろされた。

投げては、銭形豹馬が9回を投げ抜き、120球・被安打3・奪三振9・四死球2の圧巻の完投勝利! 打っても4打数4安打3打点、さらにサイクルヒット達成という、まさにプロ野球史に名を残す歴史的・大車輪の大活躍。

そして新戦力のロイも1試合2ホーマーの固め打ちで、新生・埼玉ジャガースは開幕戦から凄まじい爆発力を見せつけたのだった。

歴史的な熱狂に包まれたベルーナドームの余韻を残しつつ、ペナントレースの長い旅路は、さらなる波乱の待つ次なる舞台へと動き出していく――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。