第8話:新たなるライバル!その名は「北のチーター」こと早瀬駆
開幕カードの3戦全勝という最高の勢いに乗る埼玉ジャガースは、次なる舞台である北の大地――エスコンフィールド北海道へと乗り込んできた。
敵地でのゲームを前に、ファイターズの新たな脅威としてマスコミの注目を一身に集めていた男がいた。その名は早瀬駆。身長165cm、体重62kgと小柄ながら、50メートル5秒ジャストの圧倒的な俊足を誇り、ついた異名は「北のチーター」。さらに、現在は禁断の「殺人スライディング」に近い危険な走塁をも得意とする、どこか不気味な空気をまとった男である。
球場入りした早瀬は、待ち構える報道陣のカメラに向けて、不敵な笑みを浮かべながらこう言い放った。
「いよいよあの銭形豹馬との対決が来た時だ! 奴がマウンドに立った時は、必ずモーションを盗んで、あのくノ一を名乗る小娘を追っ払ってやるよっ!」
牙をむき出しにして挑発を繰り返す、何とも小憎らしい男だった。
そして迎えた同一カード初戦。
北海道アジアハムファイターズの先発マウンドには、経験豊富なベテラン左腕・加藤隆之が上がる。対する埼玉ジャガースの先発は、左腕エースの一角を担う炭野千弘。なお、この日の二刀流・銭形豹馬は「1番・レフト」の守備位置に入り、巨漢スラッガーのロイは「5番・DH」としてスタメンに名を連ねていた。
試合は初回から緊迫した空気に包まれる。
1回表、ジャガースの攻撃。先頭打者の豹馬が鋭い選眼眼で四球を選び取り、さっそく出塁してチャンスメイクを図る。しかし、続く後続打者がファイターズバッテリーの堅い守りの前に打ち取られ、惜しくも無得点に終わった。
迎えた1回裏、今度はファイターズの攻撃。
打席には、早くも1番・センターとして左打席に立った早瀬駆が入る。
初球、炭野が投じたボールに対し、早瀬は驚くべき動きを見せた。なんと打席から一気に3塁方向へ絶妙なセーフティーバントを転がしたのだ。打球の勢いと早瀬の圧倒的なスタートの速さに、投手・炭野は慌てて駆け寄るものの、送球できる体勢すら作れずに内野安打を許してしまう。
鮮やかに塁上で不敵な笑みを浮かべる早瀬を、この日レフトの守備についていた豹馬は鋭い眼光で睨みつけ、心の中で闘志を燃え上がらせていた。
(早瀬の奴、いよいよ出てきやがったか!? いずれ俺がマウンドに立った時は、必ず塁に出さないように打ち取ってやるぜ……!)
先頭打者の出塁を許した炭野は、落ち着きを取り戻すように一塁方向へ牽制球を3球ほど投げ、早瀬の足を警戒する。
そして迎えた牽制後の初球。投球モーションに入った瞬間、早瀬はまるでチーターのごとき爆発的な加速で、一気に2塁へ向かってスタートを切った!
果たして、北のチーターの足が勝つのか、それともジャガースのバッテリーが阻止するのか――。
波乱の北海道シリーズの幕開けは、緊迫の盗塁劇へと突入していく。




