第30話:奇跡の5連勝! 絶望の淵からの下剋上
クライマックスシリーズ・ファイナルステージ。
日本シリーズ進出をかけた最後の決戦の舞台は、王者・福岡ディスクバンクホークスの本拠地、みずほPayPayドーム。
レギュラーシーズン10ゲーム差以上のひらき、そして王者側に与えられた「2勝のアドバンテージ(※アドバンテージ+優位性)」。埼玉ジャガースが下剋上を果たして日本シリーズへ駒を進めるためには、ここから「5勝」を積み上げなければならないという、気が遠くなるほどの超超厳酷な条件であった。
迎えた第1戦。ジャガースの先発は左のエース・炭野千弘。
しかし立ち上がり、炭野は制球に苦しみ2死一・二塁のピンチを招いてしまう。ここで打席には5番・アポロ。甘く入った変化球を一閃された打球は、凄まじい歓声とともにライトスタンド上段へと打ち込まれる先制3ラン! その後も勢いに乗るホークス打線を止められず、炭野はノックアウト。9回表に4番・ロイが意声のソロホームランを放つも、「1-9」と大敗を喫してしまった。
続く第2戦、ジャガースは同じく左腕の武中夏輝を先発に送り込むも、火のついたホークス打線を抑えきれず「0-7」で連続の完敗。
アドバンテージを含め通算4敗となり、ジャガースはいよいよ後がなくなった。
「まだだ……まだ終わっちゃいねぇ!」
崖っぷちに立たされた第3戦、マウンドに上がったのはエース・銭形豹馬!
立ち上がりから気迫全開の豹馬は、「ジャガーボール」「銭形ツーシーム」、そして鋭く落ちる「コブラシンカー」「ジャイロフォーク」を変幻自在に操り、ホークス打線を完璧に封じ込めていく。
迎えた4回表、ジャガースの攻撃。
1番・猿飛英恵が右打席から三塁線を痛烈に破るツーベースで出塁すると、2番・滝川夏央がきっちり送りバントを決めて1死三塁。
ここで打席に立った3番・銭形豹馬が前進守備の二遊間を鮮やかに破るセンター前先制タイムリーヒット! 自らのバットで均衡を破ると、続く4番・ロイが右打席から内角低めのストレートを見えないほどのフルスイングで一撃! 白球はレフトスタンド上段へ消える特大の2ランホームランとなり、「3-0」とリードを奪う!
援護をもらった豹馬の勢いは留まることを知らなかった。
安打どころか四球すら1つも許さない圧巻の投球でイニングを重ね、ついに1人もランナーを出さないまま9回裏へ。最後の打者も凡打に打ち取り、スコアは「3-0」。
なんと豹馬は、絶体絶命の崖っぷちで史上初となるCSでの「完全試合」という大偉業を成し遂げたのだ!
試合後のヒーローインタビューで、豹馬は汗を拭いながら熱く語った。
「確かにヤバい状況になりましたけど、まだ終わったわけじゃない。ここからだと思って夢中で投げました! まさかここで完全試合を達成できるなんて、今でも信じられないくらいっす! うちとしてはあと4つ勝たなきゃいけない厳しい戦いですけど、これからも熱いエールをよろしくお願いします!」
この豹馬の歴史的快挙が、眠れるジャガースの荒武者たちに火をつけた。
第4戦、第5戦、第6戦とジャガースは奇跡のような連勝街道を突き進み、奇跡の4連勝!
ついに勝敗をタイに戻し、決着は運命の「第7戦」へともつれ込んだ。
最終戦の先発は、初戦で大敗を喫した炭野千弘。
リベンジに燃える炭野は、ホークスに1点を先制されるものの、その後は粘りの投球でゲームを立て直し、最小失点のまま終盤へ繋ぐ。
そして「1-0」で迎えた運命の9回表、ジャガース最後の攻撃。
ホークスは満を持して守護神ダイアナをマウンドへ送り、捕手のアポロもDHを解除してマスクを被る執念の超攻撃的布陣を敷く。
先頭の1番・英恵が10球に及ぶ驚異的な粘りの末に四球を選んで出塁すると、2番・滝川が手堅く送って1死二塁。
ここで打席に入るのは、3番・銭形豹馬!
(ダイアナよっ、いよいよこの時が来たなっ! 今度も遠慮なく打たせてもらうぜっ!)
(ヒョーマ……今度ばかりは、あなたに打たせはしないわっ!)
ホークスベンチには敬遠の選択肢もあったが、ダイアナとアポロは正面突破を選択。
粘る豹馬に対し、フルカウントからの8球目――ダイアナが投じた渾身の魔球「ムーンライトボール」が、わずかに甘く入る!
豹馬のバットが一閃! 白球は高々と舞い上がり、レフトテラス席へと飛び込む執念の逆転2ランホームラン!
「2-1」とついに土壇場で試合をひっくり返した!
その裏の9回裏、なんとマウンドには指名打者を解除したエース・銭形豹馬が登板!
最後の力を振り絞る豹馬は、ホークス打線を圧巻の三者凡退に仕留めてゲームセット!
「勝ったぁぁぁーーッ! 埼玉ジャガース、歴史に刻まれる奇跡の5連勝! 大逆転で日本シリーズ進出決定!!」
完全試合と最終戦の逆転弾&締めくくりの圧巻リリーフを見せた銭形豹馬が、文句なしの「CS・MVP」を受賞した。
次なる決戦の舞台は、いよいよ最高の晴れ舞台「日本シリーズ」。
対戦相手は、セ・リーグを3位からの下剋上で勝ち上がってきた広島東邦カーズ!
そこには、あのカミソリシュートと高速スライダーを武器にする宿敵・平松陽星が待っている。
下剋上王者同士による頂上決戦の火蓋が、いま切られようとしていた。




