第27話:忍者の如き奇跡、満開の笑顔と絆の復活
1ヶ月間の出場停止処分が明け、ペナントレースはペナントの行方を左右する後半戦へと突入した。
後半戦最初のカードは、みずほPayPayドームでの福岡ディスクバンクホークス戦。マウンドに立つのは、ちょうど1ヶ月ぶりに実戦復帰を果たしたエース・銭形豹馬! まだ怪我で離脱中の英恵の分まで背負う豹馬は、ブランクを微塵も感じさせない圧巻の投球を披露する。ホークスの主砲・アポロを5回まで2打席連続ノーヒットに封じ込めるなど、完璧なピッチングでスコアボードに「0」を刻み続けた。
迎えた6回表、ジャガースの攻撃。
2アウト走者なしで打席に立ったのは「3番・銭形豹馬」。
ホークスのエース格・下沢直之が投じた初球の甘いストレートを逃さず一閃! 快音を残した白球はレフトテラス席へと飛び込む先制のソロホームラン!
さらに続く4番・ロイも左打席からライトスタンドへ特大の2者連続ホームランを叩き込み、「2-0」とリードを奪う。相手の守護神・ダイアナをマウンドに上がらせないための必死の集中打であった。
試合はそのまま豹馬が投げ切り、「3-0」で圧巻の復帰即完封勝利!
お立ち台に上がった豹馬は、満員のファンに向かって深く頭を下げた。
「ジャガースファンの皆さん、ご迷惑をおかけして本当に申し訳ありませんでした! 所沢に戻ってからも、全力で勝利を重ねていきます!」
その頃、離脱中だった猿飛英恵の回復ぶりは目を見張るものがあった。さすがは忍者の血筋を引く脅威の生命力と回復力、全治20日の予想を大きく上回る早さで完治させ、戦列復帰への目処を立てていたのだった。
豹馬の復帰からチームは破竹の6連勝を達成。
移動日を挟んだ8月7日――この日は「8月7日=はなえ」の由来となった、猿飛英恵の22歳の誕生日!
本拠地ベルーナドームでのアリックス・バファローズ戦、一軍登録即「1番・ショート」でスタメン復帰を果たした英恵の姿に、中6日で先発する豹馬の気合いも意気揚々と満ち溢れていた。
1回裏、いきなり奇跡が起きる。
復帰第1打席に立った先頭の英恵は、バファローズの先発左腕・宮地大弥の投球を捉えると、低い弾道で左中間を真っ二つに切り裂く! 俊足を爆発させてダイヤモンドを駆け抜け、間一髪でホームイン! なんと電光石火の先頭打者ランニングホームランで先制!
英恵の勢いは止まらない。第2打席は三塁線を破るツーベース! 第3打席は一塁線を破るスリーベース! そして第4打席、三塁線へ絶妙なバントヒットを決め、開幕戦の豹馬に続いて見事な「サイクルヒット」を達成してみせた!
守備でも達摩兄弟をはじめとする相手打者のヒット性の打球を「くノ一」のごとき神速で難なく捌き、完璧に豹馬を援護する。
英恵の大活躍に導かれ、試合は「4-0」でジャガースが快勝。豹馬も先日のホークス戦に続く2試合連続の完封勝利を成し遂げ、英恵にとって最高のハッピーバースデーとなった。
試合後のヒーローインタビュー。マイクを向けられた豹馬が笑顔で語りかける。
「おはな、本当に戻ってきてくれて良かった! そして今日は一生懸命打って守ってくれてありがとう! おかげで2試合連続で完封勝利ができたぜ! それとおはな、俺と同じ22歳のバースデー、おめでとう!」
続いてマイクを受け取った英恵も、感慨深げに言葉を繋ぐ。
「本当にご迷惑をおかけしてどうもすみませんでした……。個人的に豹馬とは色々あったけど、豹馬が今日も一生懸命投げてくれたからこそ、私の攻守に繋がりました。それと今日は私の誕生日です。最高の誕生日を迎えることができました! これからも熱いご声援をよろしくお願いします!」
謹慎や負傷、そして衝突によって一時は距離を置いていた2人だったが、互いのプレイと情熱を通じて完全にわだかまりを氷解。お立ち台の上でがっちりと肩を抱き寄せ合い、満開の笑顔を見せた。
8月が終わる頃には、二刀流のエースと神速の遊撃手を取り戻した埼玉ジャガースは再び連勝街道を突き進み、カード勝ち越しを連発。
一時は5位まで落ち込んだ順位も「4位」へと浮上し、いよいよCS (クライマックスシリーズ)出場権が得られる3位以内の背中を捉えるところまで戻ってきたのだった。




