第24話:ベルーナの悲劇、怒りの鉄拳と球界を揺るがす乱闘劇
移動日を挟んだ火曜日、舞台は再び所沢・ベルーナドームへと戻った。
対戦相手は、自慢の俊足とアグレッシブな走塁で「北のチーター」の異名を取る早瀬駆が擁する、北海道アジアハムファイターズである。
この日のジャガースの先発は、またしても中4日の強行でマウンドに上がるエース・銭形豹馬。一方のファイターズはエース格の伊東大海が先発マウンドに立ち、試合は両チームのエースによる一歩も譲らない投手戦となった。
両者素晴らしい投球を見せ、5回まで互いに無失点の好投を演じる。
しかし、6回表の2アウト後に思わぬ事件が発生した。
打席に立つのは1番・早瀬駆。
豹馬が投じた3球目――内角低めのギリギリのゾーンへ投げ込んだストレートを、早瀬が見事捉えて打球は一塁線を鋭く破っていった。
早瀬は俊足を飛ばして2塁へと向かうが、そこで2塁ベースカバーに入っていたショートの猿飛英恵を目掛け、例の危険な「殺人スライディング」を敢行したのだった!
英恵は避けきれず、三遊間方向へと激しく吹き飛ばされてしまう。
「い、痛いっ……手首が……っ!」
右手首あたりを強く挫き、小さな声で呟く英恵。
野手陣やベンチからはもちろん、マウンドの豹馬とキャッチャーの香島太雅も一気に英恵の元へ駆け寄る。
「はなちゃん、大丈夫か!?」
「おはな、しっかりしろ!」
必死に声をかけるが、英恵は激痛のあまりピクリとも動くことができない。
一方で当の早瀬は、先日の北海道での試合の時と同様、悪びれる様子もなく平然と見つめているだけだった。
その姿を見た豹馬は、怒りでたまりかねて叫んだ。
「この野郎っ! 香島さんどころか、おはなまで病院送りにするとは……今度ばかりは絶対に許さねぇ!」
豹馬は早瀬の左顎へ渾身の鉄拳を叩き込んだ! 殴られた早瀬もすぐさま豹馬に殴り返し、グラウンドは止めるに止められないほどの大乱闘へと発展! 両チームのベンチから選手が雪崩れ込み、揉み合いの中で豹馬と早瀬のユニフォームはグチャグチャに破けてしまうほど荒れ狂った。
やがて審判団が集まり、マイクを通して場内にアナウンスが響く。
「ただ今の行為は、両選手の暴力行為により、銭形投手、早瀬選手に退場を命じ、そして、ただ今のプレーに関しては、コリジョンルールにより危険行為と見なし、バッタランナーはアウト、3アウトチェンジで試合を再開いたします。」
ベンチに戻った豹馬は西方文哉監督に「すみませんでした……」と頭を下げるが、西方監督も苦渋の表情で「やむを得ん、潔く退場しろ!」と告げるしかなかった。
結局、この試合は「0-5」で敗北。続く2連戦も敗れて痛恨の3連敗を喫してしまった。
さらに処分として、豹馬には「1ヶ月間の出場停止処分」という厳しいペナルティが下され、英恵も「右手首打撲・全治20日間」と診断されて無念の登録抹消となってしまった。
ちょうどその頃、球界ではオールスターファン投票の結果が発表され、豹馬が投手部門で、英恵が遊撃手部門でそれぞれ堂々のトップ選出を果たしたばかりだった。しかし、この事態により2人揃って晴れ舞台への暗雲が立ち込めることとなってしまったのである。
一方、スマホのニュースアプリで『銭形豹馬、1ヶ月間の出場停止処分』の速報を見たライバルの達摩兄弟。
弟の豪は「早瀬の奴、これで2度目やもんなぁ! あれやと豹馬が怒るのも当然やっ! 俺かてどついてたところや!」と憤慨し、兄の厳も「全くやのう! これで豹馬の球をしばらく打てなくなるのも寂しいわい!」と呟き、最大のライバルである豹馬たちのことを強く気に掛けるのだった。




