第21話:カミソリシュートの洗礼と栄光のバースデーマウンド
ペナントレースの熱気はそのままに、プロ野球は待望の「交流戦」へと突入した。
埼玉ジャガースの初戦の相手は、セ・リーグの強豪・広島東邦カーズ。敵地マツダスタジアムに乗り込んでの3連戦である。
この年からセ・リーグもDH制を導入しており、2日前に登板したばかりの銭形豹馬は、このカードでは「打者」として100%の集中を注ぐことになった。
対するカーズの第1戦の先発は、豹馬と同い年のライバル・平松陽星。
スリークォーターから繰り出される160km/h近い剛速球と、右打者の懐をえぐる「カミソリシュート」、そして外角をよぎる「高速スライダー」を武器にする本格派だ。
1回表、ジャガースは1番・猿飛英恵が内野安打で出塁し、2番・滝川夏央が手堅く送って1アウト二塁の先制チャンスを作る。ここで打席に立ったのが「3番」の豹馬。
平松が投じた初球――内角へ鋭く食い込むカミソリシュートに豹馬は身体をのけぞらせるが、「ストライク」のコール。
(相変わらず平松のカミソリシュートのキレは凄味を感じる……これはヤバそうだ……)
(銭形君、君が例え打撃を取り戻したとしても絶対に打たせないぞ!)
続く外角への高速スライダーも見送るしかなく追い込まれた豹馬は、3球目の真ん中ストレートにフルスイングするも空振り三振。絶好機を逸してしまう。
平松の完璧な制球の前に、豹馬の第2、第3打席も凡打に倒れ、チームも「0-2」と2点ビハインドで迎えた最終回・9回表の第4打席。
豹馬の目が変わる。
(奴の変化球は捨てて、ストレート一本に狙いを絞る!)
3-2からの6球目、真ん中低めのストレートを豹馬が完璧に捉えた! 打球はレフトスタンドへ飛び込むソロホームランとなり「1-2」と1点差に迫る。しかし反撃もここまでとなり、初戦は平松に軍配が上がった。だが、第2戦・第3戦は打線が奮起して連勝し、ジャガースはこの遠征を勝ち越しで終えた。
6連戦となる所沢に戻って迎えた次なるカードは前年度セ・リーグ王者「なにわタイガース」。
初戦を落として迎えた第2戦――5月29日、この日は奇しくも銭形豹馬の22歳の誕生日であった。中5日で二刀流としてマウンドに上がった豹馬は、記念すべき日に凄まじい投球を披露する。
しばらく封印していた「ジャガーボール」や「銭形ツーシーム」、そして新魔球「コブラシンカー」「ジャイロフォーク」が面白いように決まり、タイガース打線を完璧に封じて8回まで無安打無得点。さらに自らのバットでも2打席連続ホームランを放ち、投打で躍動する!
大記録がかかる9回表、タイガースの攻撃。
1番・近元光司が放った三遊間への痛烈な打球に対し、ショートの猿飛英恵が「くノ一」のごとく反応し、ジャンピングスローで矢のような送球を送りアウトをもぎ取る(タイガース側のリクエストも判定変わらず)。
勢いに乗る豹馬は、続く仲野拓夢をコブラシンカーで空振り三振に切って取り、最後は森島翔太も連続三振に仕留めてゲームセット!
見事に「ノーヒットノーラン」を達成し、自らのバースデーを自ら最高の形で祝福した。
「今日は最高のバースデーになったぜ! みんな、守って応援してくれてありがとう!」
お立ち台で叫んだ豹馬の笑顔は、チームをさらに勢いづけた。
続く第3戦も勝利を収め、タイガース戦も勝ち越しを決めたジャガース。
次なる移動日の後に待つのは、ライバル・「弁慶」こと藤堂弁慶を擁する読報ジャイアンツ。そして新監督・松江秀喜の采配が光る宿敵との激突に向け、チームの士気は最高潮に達していた。




