第18話:復活の遠雷、新魔球と2人の荒武者
山形での厳しい修業を終え、心身ともに見違えるような鋭さを取り戻した銭形豹馬とロイの2人は、ホームである所沢へと戻ってきた。
一軍復帰へのテストとなるファームリーグ戦、対戦相手は同じ東地区の東京ヤクルタスパローズだ。
この日の先発マウンドに上がったのは、もちろん豹馬。
解禁されたのは、叔父・佐吉郎との手裏剣修行から着想を得た2つの新魔球であった。
右打者の内角へ高速で鋭く沈む「コブラシンカー」。そして、スピードを殺しながら打者の手元でバットをあざ笑うかのように落ちる「ジャイロフォーク」――!
スパローズの打者たちは、見たこともない軌道を描いて変化する球の前に完全に翻弄され、空振りと凡打の山を築いていく。豹馬は7回を投げ切り、なんと被安打ゼロのノーヒットに抑える圧巻のピッチングでマウンドを降りた。
一方、打撃の極意を掴んだ巨漢・ロイのバットも猛威を振るった。
右打席、左打席の双方から快音を響かせ、なんと圧巻の3打席連続ホームランを放ってみせる!
さらに、居合斬りで「心で一点を捉える」感覚を体得した豹馬も、野性味あふれる打撃で5打数4安打と大暴れ。不振に苦しんでいた2人の姿はそこにはなく、まさに完全復活を強く印象づける実戦復帰となった。
約3週間にわたる密度の濃い二軍生活を終えた2人は、火曜日から始まる東北円天ゴールデンイーグルスとの決戦を前に、一軍へ合流。
試合前のベルーナドームにて、すでに負傷から一軍復帰を果たしていた正捕手・香島太雅を座らせ、西方文哉監督へ新魔球のお披露目が行われた。
香島の真後ろに立ち、鋭い眼光で球筋を見極める西方監督。
豹馬の手から放たれたコブラシンカーが、手元で急激に沈み込み、香島のミットを「バシィッ!」と激しく鳴らす。
「……この落ち具合とキレ具合は凄い! これなら、あの伊達でもそう容易くは捉えられんはずだ!」
投手出身である西方監督の顔に、驚きと強い手応えが浮かぶ。
続いて投じられたジャイロフォーク。緩やかな球速から手元でブレーキがかかり、ストンと鋭く落ちる魔球の軌道を見届けた監督は、思わず唸り声を上げた。
「これも凄い……! 今までのジャガーボールや銭形ツーシーム以上に、相手打者は手がつけられんぞ!」
指揮官のお墨付きを得て、豹馬の瞳には静かで青い闘志が宿った。
そして、ついに迎えた本拠地での円天戦――。
敗北の屈辱を胸に、自らをゼロから鍛え直してきた銭形豹馬が、再び宿敵・伊達鷲一郎の前に立ちはだかる。
進化を遂げた荒武者と隻眼の天才打者、運命の再戦の火蓋が、いま切られようとしていた。




