第12話:怪物ルーキー、ベールを脱ぐ!
所沢での開幕からの熱闘を経て、埼玉ジャガースの前に新たなる刺客が立ちはだかる。千葉ロットマーリンズからベールを脱ぐのは、球界を揺るがす怪物ルーキー・金脇総司であった。
身長198cm、体重86kgという恵まれた超長身の左腕から投げ込まれる球速は、あのMLB最高峰の剛腕にも匹敵する最高170km/h近く、 さらに160km/hに迫る落差抜群の「高速フォーク」と重厚なパワーカーブを繰り出す堂々たる本格派投手である。高校時代、夏の甲子園をかけた決戦で豹馬と投げ合い惜しくも敗れた苦い過去を持つ金脇。3年の時を経てプロの舞台へと踏み出した彼は、積年のリベンジを果たすべく、敵地・ベルーナドームのマウンドへ颯爽と上がった。
対するジャガースの先発は、先輩エースの髙橋空多。この日の銭形豹馬は「1番・レフト」としてスタメン出場し、打者として金脇との対決に専念する陣容となった。
1回表、髙橋空多がマーリンズ打線を上々の立ち上がりで無得点に抑え、迎えた1回裏のジャガースの攻撃。
先頭打者として打席に入った豹馬へ、金脇が投げ込んだ注目の初球ストレート――。
ドドンッ!
球場表示板に刻まれた数字は、なんと「167km/h」!
「な、なにぃっ!?」
驚愕の球威とスピードに、さすがの豹馬もバットを出せずに見送るのが精いっぱいだった。続く2球目のストレートも力でねじ伏せられて空振り。追い込まれた3球目、金脇の手から放たれたのは150km/h後半の超高速フォーク!
バットはむなしく空を切るが、鋭く変化したボールはワンバウンドして捕手のミットを弾き、そのままバックネット前へと転がった。豹馬は持ち前の俊足を飛ばして一塁へ駆け込み、「振り逃げ」で見事に泥臭く出塁を果たす。
続く2番・猿飛英恵は、初球から手堅く送りバントを決め、1アウト二塁とさっそく先制の絶好機を作り出した。
しかし、金脇のギアがここからさらに上がる。3番・長谷山信也、4番・テーラー・ナビンに対し、160km/h超えの直球と高速フォークを惜しみなく投じ、圧倒的な威圧感で圧巻の連続三振! チャンスを生かせず、ジャガースはこの回を無得点で終えた。
勢いに乗る金脇の怪物ぶりは止まらない。豹馬の第2打席、第3打席ともに、かすりもしない圧巻のピッチングで3打席連続三振に打ち取られてしまう。
一方、ジャガースの先発・髙橋空多もエースの意地を見せ、8回まで被安打4の無失点と完璧な投手戦を展開する。しかし9回表、マーリンズに一瞬の隙を突かれ、犠牲フライでついに1点の先制を許してしまった。
1点差で迎えた最終回、9回裏のジャガースの攻撃。
反撃を試みるも、完全にゾーンに入った金脇の前に打線があっという間に2アウトまで追い込まれてしまう。そして最後の打者として打席に立ったのは、1番の豹馬。
「……負けてたまるかよっ!」
牙を剥いて立ち向かう豹馬だったが、金脇の魂のこもったウイニングショットの前に最後も空振り三振! ゲームセットのコールが虚しく響き渡った。
金脇総司はプロ初先発初登板という敵地のマウンドで、なんと9回130球、16奪三振、無四球、無安打、無失点という伝説的な「ノーヒットノーラン」を達成!
一方、打者・銭形豹馬は4打席連続三振、そしてチーム自体も本拠地で大屈辱を味わうこととなった。
試合後、金脇は「銭形よっ!これで借りは返せた…。これからもよろしくなっ!」と呟くのだった。
勢いに乗るマーリンズに対し、ジャガースは第2戦、第3戦も連敗を喫し、悪夢のカード3連敗で一気に窮地へと追い込まれてしまう。
次なる戦いの舞台は仙台――。
心身ともに追い詰められたチームを救うべく、投手・銭形豹馬に新たなる過酷な試練が訪れようとしていた。




