第10話:北の大地の暗雲と誇り高き反撃
コリジョンルールの適用により難を逃れたかに見えたジャガースだったが、代償はあまりにも大きかった。早瀬の激しいタックルを受けた正捕手・香島太雅は、左手首と膝を痛めて立ち上がることができず、無念の負傷退場を余儀なくされてしまう。急遽、背番号22の久賀悠斗がマスクをかぶることになった。
しかし、女房役の負傷とグラウンド上の荒れた空気に動揺を隠せなかったのか、先発の炭野千弘が突如として制球を乱す。甘く入ったストレートをファイターズ打線に狙い打たれ、初回に一挙4点を失ってしまう。
中盤、巨漢スラッガーのロイが右打席からレフトスタンドへシーズン第3号となる圧巻のソロホームランを叩き込み、1点を返して意地を見せるも、反撃はここまで。ジャガースは初戦を「1-4」で落としてしまった。
嫌な流れは翌日の第2戦にも暗い影を落とす。
先発マウンドに上がった武中夏輝は、持ち前のキレのある変化球が影を潜め、ファイターズ打線の勢いを止められない。5回6失点と打ち込まれ、ジャガースは北海道の地で痛恨の2連敗を喫してしまった。
迎えた同一カード第3戦。連敗を阻止すべく、中5日で先発マウンドに立ったのは、エース格の銭形豹馬だった。
しかし、発表されたファイターズのスタメンに、あの「北のチーター」早瀬駆の名前はなかった。
(けっ……あの野郎、ビビってスタメン落ちか? いや、新宮監督の考えはそんな甘いもんじゃねえな……)
豹馬は胸の中で不敵に笑うと、気迫あふれるサイドスローから繰り出される150km/h超の快速球と鋭く曲がるジャガーボールでファイターズ打線を完璧に封じ込めていく。
主砲のロイも投手陣の奮闘に応えた。相手投手の勝負球を逃さず捉えた打球は、ライトスタンド中段へと飛び込むシーズン第4号の特大3ランホームラン! チームに貴重な先制点をもたらす。
豹馬は8回を投げ切り、被安打わずか3、無失点という圧巻の「大人のピッチング」でゲームを作り上げた。9回は抑えのエース・海津央が上がり、相手打線を3者凡退に抑えてゲームセット。スコア「3-0」でジャガースが見事な完封リレーで勝利を収め、敵地での一矢を報いたのだった。
試合後、最後まで出番のなかった早瀬駆は、納得のいかない表情でベンチ奥の新宮剛史監督へと詰め寄っていた。
「監督! どうして最後まで俺を使わなかったのですか!? あの銭形から俺の足でいくらでも点を取ってみせましたのに!」
自己中心的な苛立ちを剥き出しにする早瀬に対し、新宮監督は鋭い眼光で振り向くと、ベンチ全体に響き渡る声で一喝した。
「早瀬っ、勘違いをするなっ! 今の自分の立場と、チームの勝利のために何が必要かをよく考えてから文句を言え!」
監督の威厳に満ちた一言に、早瀬はぐっと言葉を詰まらせ、悔しそうに拳を握りしめるしかなかった。
香島の負傷退場、連敗の苦しみ、そしてエース豹馬の気迫の好投――北の大地エスコンフィールド北海道での3連戦は、まさに嵐のような一波乱を呼ぶドラマとなった。
激闘の余韻を残しながら、ペナントレースの戦いは次なるライバルたちが待つ新たなステージへと続いていく。




