7話 闇と一国の王
どこまでも続く黒い空間に1人の女がいた。漆黒の髪に白い瞳。しかし、その瞳孔はなく意識があるようには思えない。女が空間に手をかざし、空間を切り裂く。そこから溢れるのは無数の光。光は空間だけではなく、外までも覆い尽くした。
どこまでも続く白い空間に1人の男がいた。白銀の髪に翡翠の瞳。男が空間に手を翳し、空間を切り裂く。そこから放たれるのは闇。闇は空間を飲み込み、外までも包み込んだ。
「『闇』だ」
そう言った途端、アビスは戦場に向かった。
「おい!待て!」
兵士が止めるも、それを振り払う。アビスの表情は笑顔ではなかった。
オルネイアは状況の深刻さに気づく。
「苗a垨漢t肩梁?榧z楢簗!ガァァァァァ!!!」
ヴァルカスが叫ぶ。叫べば叫ぶほど彼の妖気は濃くなっていく。
「オル……ネイア?」
いつもの元気なレグナの声は今にも吹っ飛びそうである。
「…………みんな、よく頑張ったわね。あとは、私がやる」
「ま、待って!オルネイアは魔法が………」
「…………」
オルネイアは聞こえなかったふりをした。もう一度振り返ると覚悟が揺らぐ気がしたから。
「炎砲!」
レグナが放つそれよりも大きな火球を避ける。
「命破!」
「ドゴォォォォン!」
ヴァルカスから放たれる豪快な右ストレートが大地にヒビをつけ、その地震と衝撃で足がもつれる。
「ッ!」
「炎撃!」
魔法陣から放たれる炎が大地を焼く。ヴァルカスの魔法の盛り合わせである。対して、オルネイアは魔法が放たず、防戦一方。
(せめて魔法が使えれば……)
「炎砲!」
「命破!」
「風刃!」
レグナたちの加勢。しかし、
「炎壁!」
魔法は完全にかき消され、ヴァルカスが放った炎壁は、オルネイアとヴァルカスの2人を囲む。
「オルネイア!」
レグナたちと分断されてしまった。
「…………ふぅ、ここまでのようね。ヴァルカス、聞こえているなら、最期くらい聞いてちょうだい」
「………………」
「ありがとう。ねえ、ヴァルカス。私も大きな立場になってしまったわ。………私たちが初めて会ったのは、先王、お父様の時代、お父様が貴方と国交を結びことに成功した時だったわね。あの時は、円満な関係を築けると思っていたわ。でも、お父様が亡くなって、私が王という立場になった時、急に怖くなったのよ」
「………………」
「お父様の唯一の贈り物。お父様が人生をかけて築いてきたこの国。それを守る責務が私にある。対して貴方は一国の王としての責務を果たし、私とは比べようもない才を持つ。尊敬と共に畏れていたわ。いつか、貴方たちとの関係が崩れてしまうんじゃないかって。利用されてしまうんじゃないかって。徐々に私は貴方たちと距離を置くようになった。結局、貴方たちと争うようになってしまった。………ごめんなさい。これは私の責任。私の罪。遅くなったけれど、貴方と向き合わせてちょうだい。もう一度チャンスを」
「…………フッ」
ヴァルカスの瞳は妖気によって漆黒に燃えていた。しかし、口元は笑みを浮かべている。
「強く……なっ……た…………な」
ヴァルカスは何かに抗うように口を開く。ヴァルカスの妖気がさらに濃くなる。笑みが消えた。
「炎撃!」
「ボォォォォ!!」
オルネイアは今を受け入れた。
<同刻 アルセリア城>
「ピカッ!!」
とてつもない光が城を包む。
「何!?」
サリシアとクラリスの動揺は隠せない。どこか青みがかった光だ。
<同刻 戦場>
「ピカッ!!」
戦場をアルセリア城と同じ光が包み込む。光はオルネイアに収束した。オルネイアは今を受け入れた。そして、未来に進む。
「氷戒!!」
お読みいただき、ありがとうございます。やっと主人公の魔法が使える時が来ました。やっとです!結構珍しいのではないでしょうか(笑)そして、今回、この「...」を多く使いました。これの使い方が難しくて、実際名付けより苦戦しています。何だか読みづらくなっている箇所がちらほらありますが、温かい目で引き続きお願いします。




