↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
LEGENDS  作者: クライブ
第三章 闇との決闘
PR
28/33

28話 天界での戦い

アビゴルは怒りに満ちていた。その天界の光景を見て、その平和さを見て、自分たちと比べてしまったのだ。自分たちは有名にならなければならない。この世界で一番の。それは、英雄王と並ぶほどのものである。そして、神に導かれるのだ。それだけがラウファの望み。そのために、こいつらは皆殺しにしなければならない。そう思っていたのだ。そんな兄をアビスは一瞥した。その時、もう自分たちは引き返せないことを悟る。ここに彼らの最期の戦いが始まる。


実にけたたましい男がいた。鬣は美しい赤色で瞳孔も烈火の如く赤い。そんな全てを狩るような牙も持つ彼は光の魔王の1人であり、獣王族の「フェンリス」である。フェンリスは狼であった。フェンリスは静かな城の廊下を歩く。もちろん従者はつけていない。彼は孤高の男なのである。またの名をボッチという。彼は恐ろしかった。確かに獣王族の戦士として魔王に選ばれた実力者だったが、戦いしかやって来ず、人との関わり方が実に下手くそであった。他の者に喋りかけても結局は逃げられてしまい、会話すら成り立たない。そんな彼を選んでくれたルシエルは、唯一の彼の話し相手のうちの1人として尊敬の目を向けていた。

(いや、我だって話す人がいないわけではない。他の魔王とだって話すし、ルシエル様となら全然普通だ)

そうフェンリスは自負しているようだ。これが光の魔王、フェンリスである。そんな孤高の狼は、静かな廊下で、

「おい、誰だ」

フェンリスは明らかな殺気を向けた。

「申し訳ありません。王様に呼ばれて参上した者なのですが、道に迷ってしまって。謁見の間はどちらでしょう?」

その女が言った。そして、もう1人は、フードを被った老人である。それらの者は天界の純白さに似合わない黒い衣装を見に纏っていた。

「そうか。それで?その殺気は何だ?ルシエル様にお会いするのにその殺気は必要なのか?」

フェンリスがまたも彼らを睨みつける。その威圧は彼らを萎縮させるのに十分だった。しかし、

「薔薇乃棘(ローズグロス)!」

その女の周りに無数の黒い薔薇が現れ、フェンリスに向かって放たれた。その薔薇一つ一つには毒が仕込まれ、喰らうと腐敗状態、即ち体が言うことを聞かなくなってしまうのだ。だが、フェンリスは身軽にそれを避けていった。そして、

「グワァァァァァ!!!」

狼に姿を変えたフェンリスは、女たちに飛びかかる。

「星火励!」

隕石がフェンリスを襲う。しかし、それらの隕石をフェンリスは自身の鋭い爪で裂いていった。フェンリスの「獣王化」には、身体強化は勿論のこと、自身の攻撃全てに「重攻撃(クリティカル)」が発生する。それにより、フェンリスの攻撃で星火励でも対応できるのである。

「バカな!?星火励を素手で!?」

そして彼らは距離を置いた。

「思ったよりもすぐ気づかれてしまいましたね。イグゾルあなたの殺気のせいですよ?」

「はあ?ロザルクこそもっとマシな嘘つけなかったのネ?アレじゃ気づかれてもおかしくな......」

「ドゴォォォォン!!」

フェンリスは会話にお構いなく、攻撃を畳み掛ける。

(マズいのネ!マズいのネ!思ったよりもこの魔王、素早いし攻撃力があるのネ。一発でも喰らったら致命傷になりかねんのネ)

「侵入者は、今ここでケス!!」


ルシエルはそれをいち早く感じとった。この謁見の間全体が何者かによる魔法で覆われていると。しかし、それはルシエル自身に発動されるものではない。そして、次にオルネイアがそれを感じとっていた。

「みんな警戒して!」

オルネイアの言葉に一同が緊張状態になる。更にルシエルにはアルヴァからの伝達が入っていた。

「ルシエル様、侵入者です」

「分かっているわ。フェンリスも好戦状態に入った。この気配、ラウファね」

「はい。しかし、以前、感じ取ったものよりも存在感が強大です」

「こっちは私がやるから、アルヴァはもう一つの方へ行ってちょうだい」

「御意」

その魔法伝達は、ものの数秒程度であった。そして、謁見の間に一つの強大な気配がやってくる。

「ガシャン!!」

窓ガラスを割って入って来たのは、黒髪に虹色の瞳、そして大きな虹色の翼を持っている男であった。その男の美しさは見るものを惹きつけるが、どこか恐怖すらも感じた。

「光波動」

すぐさま、ルシエルは魔法を放つ。それを軽々と避ける男。

「実に速い。恐らく私以外の者であったら即死であったでしょう」

「あなたが、ラウファの頭領かしら」

「ええ、私はアビゴル。ラウファの頭領にして、未来の英雄です」

「そうですか、では始末しなければなりませんね」

ルシエルがアビゴルの間合に入った。そして煌々光束砲を放つ準備をする。すると、アビゴルが虚空から取り出したのは一本の細剣であった。その剣は虹色に輝いていた。その刹那、ルシエルがアビゴルから距離を取った。

「皆、離れなさい!」

ルシエルが距離を取った理由、それは、アビゴルの持つその細剣に異様なまでの危機感を覚えたからである。その細剣は、ゼルアークや覇人王でさえ、凌駕するほどの脅威であると感じたのだ。

「その剣はなんです?唯ならぬ妖気を感じますが」

「おや?流石、ルシエル様はお目が高い!こちらの細剣は、生きているのですよ!この世界に存在しているものの中でも上位に値する物であると自負しています」

その細剣の名は「消宙之武(ティルフィング)」。この世界に数個しか存在しない伝説の武器「神器」の一つである。アビゴルが言うように神器は生きている。その器を見つけるとその本領を発揮し、とてつもない力を発揮するのだ。しかし、アビゴルはこの事実に気づいていない。神器とは伝説の物でこの世界で存在を知る者は少ない。また、勿論アビゴルはこの神器に器として認められていない。なので、アビゴルは簡単に倒せる、訳ではなかった。

「光波動!」

「覇邪乱光(イーバル)・斬(スラッシュメント)!」

アビゴルの邪悪な光が細剣の斬撃となって光波動を切り落とし、更にはその斬撃はルシエルや周りに飛ぶ。

(おかしい。この斬撃、コイツの魔力量にしては強力すぎる)

そう、この斬撃、城の壁にも当たっているのだが、その斬撃は消えなかった。そのまま、壁を通って、外まで突き抜けたのである。実はこの神器「消宙之武」は、存在ごと対象を消す神器である。即ち、そもそも存在しなかったことにするという力を持つ。壁に当たった部分は壁ではなくなる。そこには何もなかった。そのような認識を与えられる。つまり、人や生物にあたった場合は、かすり傷でさえそのものの存在は消去され、この世から消えてなくなるのだ。ルシエルや他の者たちもこの武器の危険性に気づいていた。故に迂闊にはアビゴルに近づけないのである。

「仕方ないですね!煌々光束砲!」

無数の光がアビゴルに迫る。しかし、

「覇邪乱光(イーバル)・守(ガーディアノ)!」

斬撃がアビゴルを包み込み、光から守った。本来の覇邪乱光・守であれば、煌々光束砲で完全に崩壊させ、アビゴルは敗れていただろう。しかし、アビゴルには神器がある。その魔法の存在自体が消え失せたのだ。

「ハハハ!!!私に手も足も出ないようですね!そろそろ、こちらの番のようですよ!アビス!!」

すると、オルネイアとルシエルを除く者たちが光り輝いた。

「マズイ!!」

ルシエルがそう思った時には遅かった。ルシエルが判断を誤ったのだ。城全体に魔法がかけられていたことにもっと警戒しておけば、こんなことにはならなかったのだ。他の者たちは全員、転移により消えた。残ったのは、ルシエルとオルネイアだけ。

「良くやったよ、アビス。流石、僕の妹だ」

その言葉にアビスは、一切反応しなかった。

「アビス......」

オルネイアの言葉にも反応しないアビス。これで、2度目の戦いである。

「オルネイア、戦るしかないわよ」

「ええ」

オルネイアの決意の眼差しが彼らを捉えた。


転移により、移動させられた一同がいたのは、城の外であった。住民たちはすぐに避難が済んだようである。そして、目の前にはアルヴァの姿があった。彼と対峙していたのは下半身は大蛇の女である。

「アタシはマリスカ。ラウファの1人よ。アンタたち全員を纏めてお守りするのがアタシの仕事でね。大人しくしててもらうよ」

「やってみろ。そんなことができるならな」

アルヴァの頼もしい声である。

「いつまでその威勢が続くかね」

マリスカは、アビスが言っていたことを思い出していた。


「アビス、アタシの仕事は大役だろ?こんなこと、アビスとか他の奴がやった方が......」

それはラウファで作戦会議した後の出来事である。マリスカの不安は、アビスに向けられた。そうすると、アビスは微笑んでこう言った。

「マリスカ、不安なのはわかるけど、大丈夫よ。お兄ちゃんは5分とか言ってたけど、私はマリスカの力なら30分は持つと思うわ。あの勇者族の魔王も成り立てなのよ。そう実力は高くないわ。大丈夫、お兄ちゃんはマリスカに頑張って貰いたくて、厳しくしてるだけなのよ。皆んな、マリスカを信じてる。だから一緒に頑張りましょう」

アビスやみんなが信じてくれている。その言葉にマリスカは自分ならやれると自負した。


「大蛇牢獄(ヘビノトグロ)!」

そこに闇の大結界が発生した。この大結界は内部と外部の連絡や干渉を完全に遮断するものである。それはソムクロスが、アルセリア王国襲撃時に用いた固有結界と比べると5倍以上の効力を持つ。

「さあ、お前たちは私の結界の中で大人しくしてるんだよ!」

そのとき、アルヴァはニヤリと笑った。

お読みいただき、ありがとうございます。遂に戦いが始まりました。今回登場した神器も神話にあったものを使っています。あと余談ですが、「の」と言う漢字はある程度のこだわりを持って決めています。一般的なものとかだと「乃」っていう漢字を使って、少し強いものとか、高価なもののときは「ノ」を使って、今回みたいに神器とかだと「之」を使っています。実際「乃」のやつには形容詞的な意味はなくて用法が間違っているんですが、そこはご愛嬌というやつで(笑)決め方に特に意味はないです。ただなんかかっこいい順でつけてます。今後登場するときは注目してみてください。ではまた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。