27話 闇と光 (3)
その刻死・業乃慈愛によって私の結界は壊れ、数キロ先の山をえぐりました。幸いだったというべきなのでしょうか、街へと被害は軽微でした。
「次で殺してやる」
そこで私の天才的な考えが浮かびました。私はここで封印される。ならば、ゼルアークと相打ちになれば良いのでは?とね。私はこの戦いでは死なないことがわかっています。もし、それが異なっていたら、神たちによる介入があったか、またはコイツが神に近い強さを持っていたか、ですね。私が死なないならば、一回だけでも、賭けてみようじゃないかと。そう思ったら、すぐ実行します。
「そうですね、ならば共倒れと行きましょう!」
そうして彼の懐に瞬時に入りました。当たり前に距離をとるゼルアーク。刻死・業乃慈愛を放とうとしています。そんなの気にせずに、私は光の封印魔法を解き放ちました。
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「まさか!?封印魔法を?!」
驚くのも無理はないですね。封印魔法は本来敵が弱ってる時に使って確実に行使する類の魔法です。こんな時に使うとは思いもよらなかったのでしょう。おそらく、ゼルアークの心境はこうです。
(厄介だな。コイツ、残りの全魔力を使う気だ。私の封印に命をかける気か?いや、落ち着け。ならば殺せばいいだけのこと。すぐにトドメを。だが、コイツはそんなことで止まるのだろうか。ここでコイツは止められないと私の直感が告げている。それに、まともにこの魔法を受けたら、最悪100年は封印されるだろう。ならば最善の策は何か。こちらも封印魔法で押し返す!)
そして、間違いなくこうも思ったでしょう。
(ああ、それにしても美しいなコイツは。実に美しい!戦いがなかったら見惚れてしまいそうだ!)
とね!これは確実ですよ。私には分かります。とまあ置いといて、事実、封印魔法が発動されるとその魔法は、一般的な攻撃魔法などでは相殺不可能です。このように、攻撃魔法で相殺不可能な魔法を「精神魔法」とも言います。尚、転移や洗脳魔法などもこれにあたります。なので、コイツのこの判断は正しかったと言えるでしょう。
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「あなたも封印魔法ですか?真似事はやめてもらいます?」
「フン!お前こそ、私の封印により200年は眠りにつくが良い!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
私たちの叫び声が広がりました。するとそれぞれの属性を受けてか、私の髪の毛は漆黒に、コイツの髪の毛は白銀に変わっていきました。そして、お互いがお互いを封印したのです。
どこまでも続く黒い空間に私はいました。私が思っていたよりも奴がかけた封印の魔法は脆弱で、50年かそこらで解けるほどでした。なので、早急に封印を解こうとしたのです。恐らく、私がゼルアークにかけた封印魔法はもって40年。今はお互いの王が不在で魔王たちも迂闊に動けないはず。ですが、ゼルアークが解き放たれれば、闇側の大虐殺が始まります。それは何としてでも食い止めねば。そのためにソラリスにはこの未来を伝えておいたのですから。
<約50年後>
どこまでも続く黒い空間にまだ1人の女がいた。漆黒の髪に白い瞳。しかし、その瞳孔はなく意識があるようには思えない。女が空間に手をかざし、空間を切り裂く。そこから溢れるのは無数の光。光は空間だけではなく、外までも覆い尽くした。
どうです?私のかっこよさが分かる描写でしょう?そんなことより、遂に私の封印が解けました。そして天界に戻るとその変わらぬ光景に私は安堵しました。ソラリスたちが必死に守ってくれていたのだと。ですが、英雄族の数は以前とは比べようもないほど減っていました。更に悪いことに、ソラリスやラグディオス、ラグナが闇の軍と大戦争を起こしていると聞きました。私は、封印解除直後で力を失ってしまったのでなす術がなかったのです。
そんな時、未来が見えました。私があなた方を導いている姿。勇者の卵であったあなた方が、世界の鍵になる様を。私にできるのは少しでも英雄族を救うこと。なので、私はあなた方に賭けたのです。すぐに私は魔力消費の少ない
「霊子化」であなた方の元に向かったのですよ。
......で、あなた方がラウファたちに襲われていたと言うわけなのです。その場に沈黙が流れる。話の壮大さが異次元すぎてついていけないのだ。だがしかし、
「素晴らしいです!ルシエル様!あなた様の活躍で物語が一つ書けてしまいそうです!」
「その通りです!ルシエル様の活躍は天下一品!容姿だけじゃなくその生き様までお美しいとは!」
ルシエルの従者の褒めの言葉が止まらない。これでは、ルシエルがあのような性格になるのも納得である。
「そうでしょう!流石にラファリオ様と現在の覇人王との戦いの時の私の活躍は、あまり無かったので、しっかり割愛しましたが、ゼルアークとの戦いでの私の有能さはしっかりわかってくれたでしょう?」
ルシエルの自慢が止まらない。
「それで、今までの事情は分かったのですが、私たちは今後どうすれば良いのでしょう?その未来視というものでわかっているのですか?」
オルネイアが割り込む。そして、ルシエルは一変して真面目な表情で言った。
「それが、この後のことは分かっていません。ただ、私の命があと短いことは分かっています。それと、あなた方が世界を変えることも」
重い。空気が重い。ルシエルが死んでしまう。それは避けようのない事実なのだと、それを覆すことのできないという無力さ。皆が感じ取ってしまうのだ。
「それと、状況的に言えば最悪です。私たちは主戦力である魔王3名を失っており、ラウファという未知の集団もいます。更にはゼルアークはもう既に完全に力を取り戻しているでしょう」
ルシエルが添えた。このような絶望的な状況、そんな時は!皆様も分かっていることだろう。
「とにかく、やるしかねぇじゃねぇか!」
「そうね!ここでウジウジしても状況は全く変わらないわ!私たちは勇者なんだもの!どんな状況でも諦めない!」
レグナがバカに続く。
「確かにそうね。どこにも逃げ場なんてないでしょうしね」
サリシアが、珍しく彼らに秒で同意した。一同も同じく同意する。これらはこの運命に立ち向かうのだ。その光景を見て、ルシエルは微笑んだ。その美しい純白の城に穏やかな風が靡く。風は暖かく、しかし力強い。そんな風はどこまでも吹いてゆく。
<天界 上空>
1人の女が上空から、白く美しい天界を眺めていた。その白に彼女の漆黒の髪が映える。
「お兄ちゃん、準備はいい?」
「ああ」
「じゃあ、始めましょうか。最期の戦いを」
お読みいただき、ありがとうございます。ルシエルの過去編が終わりました。書いてて超楽しかったです。それとルシエルの言っていたことは案外冗談じゃないのかもしれません。正直、ルシエルの物語はもうちょっと書きたかったです。ルシエルの性格好きですし。とまあ今の時代に戻りましたし、これから戦いも始まりますので、よろしくお願いします。




