26話 闇と光 (2)
新たな覇人王の即位により、闇の覇王も代替わりしました。その名を「ゼルアーク」。残虐で、心を持たないような外道です。彼は部下の魔王でさえ駒としか思っていない。もちろん私は嫌いです。そして、覇人王は覇王たちに言ったのです。「世界中の英雄族及びその眷属を抹殺しろ」と。私は覇人王に向かって言ってやりましたよ。
「お言葉ですが、覇人王様、それは英雄族全体の反感を買うのではありませんか?そのようなことをされれば、この世界を統制する組織『世界議会』も黙ってはいないでしょう、それに......」
こんなに素晴らしい忠言をしたのにアイツ、ゼルアークが言ってくるんですよ。
「貴様、覇人王様のなされることを否定するのか?」
「まあ、待つがよろしい、ゼルアークにルシエルよ。確かに英雄族全員であれば、この世界最強の6人である『六幻』の一角、『失われた英雄』の怒りを買うだろう。だがのう、彼女ならば大丈夫だと宣言しよう。それにのう、世界議会であったら妾が止める故、安心するが良い」
「......そうでしたか、申し訳ありません。余計なお世話でございました」
その命令の時から私はゼルアークにも嫌われたような気がします。
「新参のくせに、よくもあんなに偉そうに」
その言葉を発したのは私の魔王の1人「ソラリス」でした。
「口を慎みなさい。確かにアイツは気に食わなくて、どうしようもないくらいのクズで、殺してやりたいほど憎いですが、ソラリス、貴方では勝てません。私でも勝てるか怪しいのです」
「なっ!?そんなご謙遜を!」
「いえ、謙遜ではなく事実です。恐らく、近いうちに闇側と戦争になりますよ」
「ッ!?どういうことですか?天使族と悪魔族との対立ではないのです。闇と光の対立など聞いたこともありません」
「いいですか、ソラリス。これは絶対です。私は英雄族の滅亡など望みません。そして確実にわかるのは、私は後の未来で、ある英雄族集団を助け、ゼルアークと対立します。その時に、私は封印されるでしょう」
「また、『未来視』ですか」
「正確には未来視ではありません。大まかな私の未来が見えるだけです。そして、私の未来には生きている姿はありません」
ソラリスが驚愕する。
「その未来は変えられないのですか?」
「無理です。未来を変えるということは『理』を変えること。それは神やそれに近い者の妙技です」
ソラリスはルシエルの最古の僕である。彼には多くを語らずとも、ルシエルの決意や意志が分かるのである。
「分かりました。それでは、ゼルアーク含む闇の魔王団の戦力を探ります」
「よろしくね」
そして、一年後に戦争は起きました。私たち光の魔王団とゼルアーク率いる闇の魔王団が英雄族存続を巡って争ったのです。後にこの戦争は「闇光戦争」と呼ばれるようになりました。先ず私たち光の陣営は、英雄族や勇者族を保護することから始めました。精神世界の隅々のものたちを訪ねて回って、それはもう大変で帰ってクッションに座って怠惰に暮らしたかったですよ、まったく。更に困ったことに奴ら、英雄族の抹殺だけじゃなく、私たちの妨害もめっちゃしてくるんですよ。いや、予想しなかったわけじゃないですよ?英雄族の抹殺を重点的にやって、おまけ程度かな〜って思ってたら、ほぼ8割ぐらいこっちに戦いを申し込んでくるですもん。ただ、私たちが嫌いなだけなのでは?って思いましたよね。それはさておき、私たちは精神世界だけでなく、現実世界にも行きました。第一宇宙から始まって、第四宇宙、つまりあなた方の宇宙に行きました。そしたらなんと!魔界で有名になってたギャング組織ラウファの気配を感じ取ったんです。そして、その後、タイミングを見計らったように闇の魔王団が天界に押しかけてきたのです。
「さて、ここらが中心都市ですか、ちょうどいいですね」
それは闇の魔王団筆頭のヴォイドでした。ヴォイドは自身の固有結界で、天界の中心都市の時間を止めました。私はその頃、第四宇宙にいましたからヤバイ!と思いましたね。あのハラハラ感は初めてだったと思います。それで急いで転移で天界に戻りました。その時の従者が魔王のラグディオスとフェンリスだったんですが、運悪く、どちらも転移が使えなかったんですよ。だから一度、英雄族は諦めて天界に戻るように伝えたのです。まあ、自分の足でですけど。そして、私が天界に戻るとそこにはヴォイドじゃなくてゼルアークがいたのです。
「久しいな。英雄族お助け活動は順調かな?今は覇人王様も目を瞑ってくださっている。今のうちにこんなバカなことはやめて、私の軍門に下るがいい」
「もしあなたの軍門に下ったら、私はあなたの駒として一生働くでしょうね。そうですね、先ず初めの仕事は光の魔王団の抹殺でしょうか。その後は、五大天使様に攻め込んで天界を地獄に染めるおつもりでしょう?」
「随分なお喋りだな?お前、そんなやつだったか?」
「ええ、私はこういう性格ですよ。覚えておいてください。最もあなたが生きる未来などありませんがね!」
「煌々光束砲!」
無数の光の光線がゼルアークに襲いかかると共に、私はゼルアークの間合いまで一瞬で詰めて、
「光波動!」
そしたら、流石にゼルアークも煌々光束砲を全て躱しながら、光波動の高エネルギー弾に
「葬送・黒夜」
その暗黒波が私の魔法を相殺しやがったんですよ。そして私たちは攻防一体。私が光波動を放つと奴も葬送・黒夜で相殺して、煌々光束砲を放つと奴は避けまくるんですよ。もちろんお互い呪文の詠唱や魔法陣の構築なんてしてません。私たちレベルになるともうそんなものは、隙になりすぎて使いません。
半日ほど経過しました。こちとら天界を破壊されないように固有結界で必死に守ってるんですよ。そのせいもあり、魔力の消費が激しく、限界でした。更にムカつくことにコイツ、一つの魔法と簡単な魔力弾しか使ってないんですよ!それが、気に食わなくてしょうがなかったですよ。そんな時、ゼルアークが
「そろそろ飽きてきたね、攻撃も当たらなくなってきた。出力も落ちてきているだろう。終わりにしようか」
「待ちなさい......もう.......終わりかしら?......もう、疲れちゃった?」
「ハア、君は本当にバカだな。そこまでして英雄族が大切なのか?理解できないな」
そのとき、堪忍袋の尾が切れました。
「フッ、バカはお前のようだ。いいか、世界に不条理なんてものは、いくらでもある。少なくとも天界でもあるさ。これはどうやっても無くせない。だから、少しは無くそうと努力しているさ。私は王だから。王というものは国も保ち、民を守るのが責務だ。そしてそれは、私が闇であろうと、光であろうと変わらない!」
「ならば、なおさら、天界以外の英雄族たちを守る意味がわからないじゃないか」
「そうだな、それなら私は同情しているのかもしれないな。私以外の王たちに。私はな、他の王たちが自分の責務を果たせずに、嘆き悲しむことが可哀想だと思っているのだ」
そしてそのまま私は続けました。
「それに、思い出したよ。私がなぜ英雄族を助けたいか」
そして、ために溜めて言ってやりましたよ。
「死ぬほど覇人王もお前も大嫌いだからだよ!!」
「刻死・業乃慈愛」
その瞬間、ゼルアークの拳が私の目の前に来ました。その拳から闇の波動が放出されたのです。私はすかさず、煌々光束砲で相殺しようとしました。ですが、その時に圧倒的にゼルアークとの力の差を感じてしまったのです。全てを捌き切ることはできませんでした。私の左腕と右脇腹は欠損し、闇に侵されました。そんな瀕死の私にゼルアークは言ったのです。
「そうか、奇遇だな。私もお前のことが嫌いだよ、光の覇王!」
お読みいただき、ありがとうございます。ルシエルの戦闘シーンが出てきました。やっぱり強者同士の戦いは緊迫感が大事ですよね。でもやっぱり難しいです。これからどんどん強者同士の戦いが出てくるので慣れていきたいものです。今回は本編が3000を超えたので後書きはこれくらいで。ではまた。




