23話 来客
「お待たせしました。さあ、作戦会議を始めましょう」
サリシアが帰ってきた。そしてその背後には、かなりやつれているオルネイアの姿があった。これが、一国の王なのか甚だ疑問であるが、これが日常なのである。
「オルネイアたちが来るまで少し話し合ってたんだけど、先ずは前の戦いのことについて確認しておこうと思って」
そして、オルネイアとサリシアに闇之種と闇之館について話す。
「その種、私も壊したわ」
驚きの事実である。
「ということは、俺が認知で得た巨大な闇の気配は、俺たちが壊した種かもしれないな」
「更には、その種がドームを維持していた可能性があるな」
とはヴァルカスの推測である。実際、この推測は一部当たっている。闇之種は闇の魔法を定着させるものである。今回の場合、闇之館を定着させるために闇之種は蒔かれた。しかし、闇之種と闇之館とが同化するためには時間が必要で、同化中に壊されるとその魔法も消えてしまうのである。
「それに、私が種を見つけた時、声がしたわ」
「ッ!?それ、私もよ」
「俺もだ。確か、『これを壊せ』だった気がする」
「そうだとしたら、誰かが、私たちに手助けしてくれたってことになるわね」
「ルシエル......」
サリシアがボソッと呟いた。皆がハッとする。ルシエルが自分達を助けてくれたのかもしれないと。
「確かにその可能性は高そうだな」
「ああ、奴が助けてくれたのなら議論の必要はなさそうだな」
「仮に他の第三者の場合、そちらにも警戒が必要だものね」
一同はその結論で納得する。その頃、ルシエルが絶賛くしゃみをしているとも知らずに。
「へくしょぉぉぉい!!」
「風邪ですか?」
「いいや、誰かが私の噂をしているようですね」
「それと......」
サリシアが切り出す。
「クラリスはいつ勇者族に覚醒したの?」
「確かに、あの光乃希歌は凄まじかだったな!一瞬で敵が消えたしな!」
「たまたまだよ!わっちは光の魔法が得意だから、闇系統の奴らには効果覿面なんだと思うよ。それにね、あの時はすごかったんだよ!何でもできる気がしてさ。なんかね、声が聞こえたんだよ。『起きて!』みたいな」
実際、ソムクロスの自爆魔法が発動しなかったのはクラリスの魔法があったからである。故に、クラリスは見えないところでみんなを支えていたのだが、そこは自身も気づいていないようなので、良しとしよう。そしてさらに、このクラリスに聞こえた謎の声もルシエルによるものだと暗黙の了解で成り立ったのだ。
「へくしょょょい!!!!」
「やめて下さいよ。風邪をうつすのは」
「天使族が風邪なんて引くものですか」
ルシエルのとんでもないくしゃみが鳴り響いていたことは、彼らは知らない。
「これからどうしようか」
オルネイアが皆に聞いた。答えが出るはずもない。未だラウファの脅威も未知数。更には、覇人王や覇王、魔王なんて存在もいるのだ。強いて言うならば、今は力を蓄えておくことぐらいである。そんな時、こんな声がガルディアから飛んだ。
「じゃあ、ルシエルに会ってみたらどうだ?」
結論から言うとこの提案は無理である。確かにルシエルは高等魔法の転移を扱うことのできる強者だと推測できる。しかし、光の魔王が敗れて救命に向かったのに、自分たちが行ったところで話ができる状況ではない。大前提、ルシエルがどこにいるのかもわからないのだ。というのはサリシアの指摘である。ガルディアの自信満々の提案は本来であれば、秒殺であった。彼が来なければ。
「ちょうどよかったな」
会議室の円卓の空席に気付けば男が座っていた。エメラルドグリーンの美しい髪に赤い瞳を持っているが、その眼光は鋭く、厳しそうである。全身には緑と赤で統一された鎧を纏っていた。全員が警戒体制をとった。話されるまで、気づかなかったのもあるが、気づいた途端彼の魔力は、膨大であることが手に取るようにわかった。膨大だが、気づかない。まさに達人といった具合である。
「あなたは?」
オルネイアが物怖じせず問うた。
「お前たちに名乗るような義務はない」
「じゃあ、敵ということかしら?」
珍しくオルネイアは、怒っているようだ。もう、何人たりとも王国は傷付けさせないという意志が見られる。そして、その魔力は膨大に膨れ上がった。一同が圧倒される。オルネイアのその魔力に。英雄族と勇者族の格の違いを見せつけられた。魔力だけで言えば、この男と同等か、それ以上といったところではないだろうか。
「ほう、中々やるようだな。流石はルシエル様に認められたことはある」
「ルシエル?あのルシエルなのか?」
「貴様、ルシエル様には敬称を使え。さもなくば、今ここで殺すぞ」
ヴァルカスのその言葉はこの男の癪に触ったらしい。だが、無理もない。オルネイアたちの想像にあるルシエルという人物は、まるで威厳なんて無い人物である。だが、その男の気迫に飲まれる一行。オルネイアたちはこの男がルシエル信者であり、ルシエルの仲間、つまりは自分たちの敵ではないことが分かったのである。
「それで、貴方はそのルシエル様の使いの方ということかしら」
「半分は正解だ。だが、半分は違う。俺はお前たちを迎えに来たのだ」
「ちょっと待ってくれ。大体、お前のこともわからず、どこに連れて行くと言うんだ。まずはお前の名を聞いてからじゃなきゃ、信用できないな」
ゼファルの言葉に少し笑みを浮かべる男。
「ふむ、お前は随分慎重で疑り深いようだ。嫌いじゃないぞ。いいだろう、名は教えたくはないが、行き先だけ教えてやろう。お前たちがこれから行くのは『天界』。こことは違う天使族やその系統たちが暮らす精神世界。そして何より、光の覇王様がいらっしゃる場所だ」
お読みいただき、ありがとうございます。新キャラ登場です。新キャラ登場の時は初めにその外装を伝えることを心がけています。小説は文字だけなので挿絵とかがない限り分かりませんからね。皆様が少しでも想像しやすいようにこれからも丁寧に書いていく所存です。今の所あり得ないようなインフレはないと思いますが、いかがでしょうか?え?オルネイアが強くなりすぎ?まあ、主人公だし、英雄族ですし?本文にもある通り、格の違いを見せつけてやったって感じです。今後も他の仲間もどんどん強化していく予定ですので、その成長を見ていただければ幸いです。




