2話 サプライズ
もう古く錆びれたアルセリアの大門が、軋むような音を立てて開いた。ある一人の兵士が叫ぶ。
「ヴァルセリア王国の使節団様到着しました!」
「これはこれは、どなたかと思えば『イグゾル』殿ではありませんか」
アルセリア王国大戦士「ガルディア」が白いローブ纏った老婆に語りかける。ガルディアは筋骨隆々の戦士である。溢れんばかりの脳筋さを持った戦士なのだった。
「お久しぶりでございます、ガルディア殿。半年ほど前の戦争以来ですか」
「何をしに来たのです?また戦争でも持ちかけてきましたか?」
「ハッハッハッ!そのようなことはありませんよ。此度は交渉に参ったのですよ」
イグゾルが少し不気味な笑みを浮かべる。ガルディアは少しため息をついて、
「どうぞこちらです」
と使節団が談話室へ向かっていった。
ガルディアが談話室へ案内すると、代表であるイグゾルに茶が出された。
「毒は入っておりません」
ガルディアと同じくアルセリア王国大戦士の「ゼファル」が茶と茶菓子を出した。ゼファルはガルディアと比べて小柄だが、キザそうな見た目に反して、その実力は高い。また、冷静沈着で物事を俯瞰してみることのできる青年であった。
「勿論、疑っておりませんよ」
「それはとんだ失礼をしました」
そのまま動きはなく、イグゾルが茶を一口口にしたあと、談話室の扉が開いた。
「お待たせして申し訳ない」
「これはオルネイア陛下。お時間を頂き、感謝します」
不気味なほど穏やかに挨拶は進められた。
「此度は休戦協定に参りました」
(王国幹部であるイグゾルを向かわせるということは、この申し出は信憑性が高いと見ていいな)
「話を聞こう」
その後、淡々とイグゾルの口から協定についての条件が語られた。
一つ、お互い干渉し合わないこと
一つ、両国の利害が一致した時のみ、互いに協力を申し出ること
一つ、もし、一方が掟を破った場合、武力的対処を試みることを許すこと
この条件を聞いた後、オルネイアは、
「少し時間をもらいたい」
「もちろんですとも」
「ありがとう。すぐに戻る」
すると、オルネイアとガルディア、ゼファルは談話室を後にする。そしてオルネイアが切り出す。
「今回の申し出を受けようと思う」
するとガルディアが、
「なんだか胡散臭い気もする。ここ数年間戦ってきて、今更休戦なんておかしな話だ。俺は反対だ」
「僕も、もう少し慎重になっていいと思うよ」
ゼファルも続ける。しかし、オルネイアは、
「だからこそよ。もう何年も戦ってきた。この戦いを終わらせられなかったのは、私たちの責任よ。もう民たちが死ぬのを見たくないの。こんな機会、またとないかもしれない。私はこれに賭けていいと思う。」
すると、やってきたのはオルネイアやレグナとは幼馴染で王国貴族である「サリシア」の姿が。サリシアは桃色の髪に純黒の瞳。紫に統一されたドレスを見に纏う。
「オルが決めたならいいんじゃない?ガルディア、ゼファル」
「だが、サリシア。非常に危険な交渉だ」
「オルが決めたことが間違っていたことはあった?確かにオルの決断で危なくなったことはあるわ。でも、最後は必ず最低限いい方向へ導いてきたわ。オルは王国建国の伝説に出てくる英雄に負けない、強い英雄だわ。だから、私はオルを信じる」
その言葉はオルネイアたちに温かく、強い勇気を与えた。
「わっち達も信じるよ」
会話を聞いていたレグナとクラリスが近づいてくる。
「ありがとう」
オルネイアは決心した様子で談話室に戻る。
「決まりましたか?」
イグゾルが問うと、オルネイアは力強い承諾の返事を返した。そしてイグゾルがオルネイアに手を差し出す。
「承諾の儀を行います。私の手を取っていただけますか?何、危険はありませんよ」
オルネイアが手を取ると、刻印魔法が発動し、イグゾルが契約内容を復唱する。
刻印魔法:事前に準備するトリガー式の魔法。今回は、契約魔法を事前に準備していた
そして、休戦協定はなされた。
「後日、今後の対応をまた詳しく。契約は今より発動しますので、ご承知おきを。それでは失礼いたします。それと、この菓子頂いて行ってもよろしいですか?うちの部下に甘党がおりまして」
と言い放って、使節団は帰って行った。オルネイアは再びため息をつく。
「一件落着か」
イグゾルが部下に言う
「この菓子、食べていいぞ」
「いいのですか!ありがとうございます」
部下が喜んで菓子を頬張る。その瞬間イグゾルが毒魔法をかける。悶え、そして動かなくなる部下。そして他の部下たちから血の気が引く。イグゾルは、
「アルセリア王国が菓子に毒を盛った。これは立派な契約違反だ。契約通り奴らに牙を向く。よいな?」
呆然と立ち尽くす他の部下たちに問う。
その頃、ヴァルセリア王国からヴァルカス率いる軍が進軍していた。
「フフフ。アルセリアよ、サプライズだ」
お読みいただきありがとうございます。まだ、世界観の定着を図っていますが、いかかでしょうか?「面白くない」という意見もあるかと思いますが、少し待って下さい。本格的に面白くなるのはもう少し先の予定です。まだ、温かい目で見ていただけると幸いです。




