17話 勇者族
ルシエルと名乗るそのオーブを一同は凝視する。疑問だけが蓄積されていった。
「『人魔族』って何なの?それは私たちが『勇者の卵』だってことと関係あるの?」
レグナが先陣を切った。ルシエルが呆れたようにため息をつく。
「あなた方、本当に何も知らないのですね。自分たちがなぜこうも狙われているのか。いいでしょう、今回は特別大サービスで教えて差し上げましょう。あなた方は『勇者族』に進化する可能性のある人魔族、つまりは人類であり、『闇の覇王』はあなた方を滅ぼそうとしているのですよ!!!」
ルシエルの呼声がハーレー山中にこだまする。今この瞬間、オルネイアたちが襲われる理由がわかった、かと思ったらまた疑問が増えてしまった。
「闇の覇王?ラウファじゃなくて?」
オルネイアが問う。
「その通り、ラウファも見過ごせないけれど、闇の覇王はより危険です。あなた方人魔族、いや、人類を統治する王の一人なのですから」
「私たちを統治するというのになぜ私たちを滅ぼそうとする?矛盾しているぞ」
最もなことをヴァルカスが言う。
「確かに、覇王含む王たちは人魔族を統治していました。しかし、覇王たちを統べる者『覇人王』が50年前に代替わりし、その覇人王が言ったのです。『世界中の英雄族及びその眷属を抹殺しろ』とね。全く厄介な話ですよ。私あいつ嫌いなんですよね、昔から。あいつが覇人王になった途端、五大天使候補だった私に目をつけて......」
呆然としていた。信じられない話についていけず、ただ話に耳を傾けるだけであった。しかし、ルシエルの自信満々の話ぶりと謎の安心感でなぜが信憑性が持てた。
「ではその覇人王たちが俺たちを狙っていて、今回ラウファが襲撃に来たと。更には、五大天使というものの仲間であるアンタが助けに来たと言うことか?」
ゼファルの言葉である。
「その認識で構いません。とにかく、あなた方ではあのラウファたちは倒せません。貧弱なあなた方なら身をもって理解できたでしょうがね」
ぐうの音も出ないようである。
「そこで、あなた方を勇者族に覚醒させましょう!」
「「「「え!?」」」」
「いいですか?勇者族とは人魔族から稀に出現して、魔法をうまく行使し、悪魔族や天使族たちがいる精神世界にも行き来して、多種族と武力を持って話し合う種族。実に高貴!高貴な種族なのです!私は見たことがありませんが、私が尊敬する英雄王様は元々勇者族だったそうですから相当素晴らしいのでしょう!」
「.......それで、どうすれば私たちは覚醒を?何か特訓のようなものをすれば良いのかしら?ですが、私たちはクラリスという人質もいるのです。そう悠長にしている暇はありません」
慣れというものはすごいもので、ルシエルのその態度を何の躊躇もなく飲み込んで、更にはそのサリシアの言葉で一同を引き締めた。
「何をそんなレベルアップのようなことを、まるで死んで転生したら最強になってしまった。みたいな流れじゃありませんか」
「............」
「では一度しか言いませんからよく聞いてくださいね。ズバリ、新たな魔法や戦い方を増やすことです」
「というと?」
「一回しか申し上げないと言ったはずですがね、しゃーなしです。もう一度だけ......」
「ッ!?」
そのときルシエルが輝いた。
「申し訳ありません。もう行かなければなりません」
「え?どこに?」
「現在、光の魔王3名が闇の覇王の力に敗れたと報告が出ました。直ちに向かいます」
「じゃあ、覚醒の話はどうなるんだよ!?」
「申し訳ありませんが、自分たちで遂行していただきたい。安心してください。きっと覚醒はできます。そうですね、自分の『武器』でも創ってみたらいかがでしょう?自分に合った最高のものを」
そう言い残して、ルシエルは消えた。混乱の最中に急な退出である。
「光であったのに嵐のような方であったな」
ヴァルカスが言う。
「ええ、それよりも『武器』ね」
「ちょっと待て、オルネイア。確かに奴の言っていることは正しいかもしれないが、本当に信用していいのか?」
「ゼファル、そうは言っても何か策はあるの?ラウファに勝てるような策が。私もルシエルという者を完全に信じているわけじゃ無いけど、私たちの唯一の光なのよ?」
レグナの言葉に葛藤を始めるゼファル。
「みんなごめん。私がアビスを引き入れたせいで、みんなを危険に晒してしまった。でも、もう一度だけ私についてきて欲しい。クラリスを助けるために、みんなで笑顔で暮らしたいから」
「......」
「何度言ったらわかるんだオルネイア!お前だけが責任を感じるな!これは、皆で背負っていく業だろ!」
ガルディアの喝が一同を奮い立たせる。勇者族に必要なのは、類稀なる魔法の才と強力な力、そして何よりも重要で勇者の卵となり得るのにも必要なのは不屈の精神と正義の心。ルシエルは見抜いていたのだ。オルネイアたちはその精神たちを持っており、勇者の卵に違いないと。
ある書物にはこう記されてある。「『人魔族』は世界に知能や技術をもたらし、『英雄族』はその力で世界を守護する。そして、『勇者族』は何度も倒れるかもしれない。しかし、その勇ましき者に恥じぬ屈強な心を持ち、何度でも立ち上がる。そして最後に立つのは勇者なのである」と。
お読みいただき、ありがとうございます。勇者という単語はいつ聞いてもかっこいいものです。この物語では一応たくさんの種族も用意してます。まず今回の勇者族や人間である人魔族、そして英雄族。あと10個以上あります。まあ、ふぅんぐらいでいいです。(今は)ここから種族も大事になってくるので注目していただければなと。ではまた。




