16話 光
<魔界の中層部にて>
アビゴルが畏怖するのも無理はなかった。自分より圧倒的な強者が目の前にいるのだから。魔王たちを統べる王にして、『人魔族』である人類を統制する者の一角、「闇の覇王」である。その姿は深い闇により、見ることができない。だが、それ以前に覇王の目の前にいる魔王たちの殺気が恐怖を掻き立てる。その内の筆頭とも思わしき人物が言葉を発する。
「ギャング集団ラウファ筆頭アビゴル。我々の目的は知っているな?」
「は!人魔族を統制することでございます」
「その通りだ。だが、状況は変わった。我々はある種族の壊滅に着手している」
「では、人魔族の統制はどうなされるのです?」
「それは......」
「やめなさい、『ヴォイド』」
それは闇の覇王の言葉である。そして覇王は続ける。
「すまないね、うちのヴォイドが。部外者である君にこんな話をするのはお門違いだが、今の私たちの目的はある『英雄族』たちに向かっているんだ。理由は教えられないがね。それに、人魔族の統制を怠るつもりもないんだよ。ただ、その英雄族を壊滅するために今までのように君たちに闇を与えられる余裕がなくなってしまったんだよ」
「つまり、闇の供給は打ち切りということですか?」
「そういうことだよ。そんなことより、アビゴル。君には闇の魔王団の補欠候補になってもらいたいんだ」
魔王団の間でも動揺が広がる。
「どういうことです?このような半端者を魔王にするなど、許されません」
それは魔王である、「アシュレイン」の言葉である。そして、同じく魔王の「シルヴェア」も続ける。
「そうですよー。こいつ怪しいし。今ここで始末っていう手も......」
「黙れ。無駄な口を挟むな。これは私の決定であり、私の意思である。私の意思に口出して良いのはこの世でお一人のみぞ。死にたくなかったら、大人しくしろ」
緊張が走る。アビゴルが冷や汗をかく。これは数十年ぶりである。
「ということだ。どうだろう?君の活躍は聞いているしね」
「す、少しお時間をいただきたく......」
「そうか。良い返事を待っているよ」
謁見の間からでたアビゴルは緊張から解放された。
「どうだったんだい?」
ロザルクが問う。
「今日は覇王がいたよ。直々に契約の破棄を申し出てきた」
「あの覇王が?」
「ああ、あれはダメだね。僕たちでどうこうできる相手じゃない」
(あの覇王の威圧感、魔力量、そこらの魔王とは比べものにならなかった。僕でも魔王の数名には引けを取らないというのにね)
「そう、それにしてもやっぱり、契約は断ち切られたわね。これからの計画を見直さなきゃ。全く、覇王は何を考えているのやら」
「そうだね」
(いや、覇王の意思ではない可能性もある。確かに覇王という可能性もなくはないが、覇王は自分よりも上の存在を示唆していた。だとしたらそいつはとんでもない存在ってわけだ。まあ、どちらにしろ僕たちが壊す相手には変わらないけどね)
「頑張ろうか」
「ん?何のこと?」
「何でもないよ」
そして二人は魔界の中層部を出る。
<ハーレー山の頂>
「......て......きて......起きるのです」
目を覚ます一行。頭の中に響いてくる声。それは中等魔法「呼声」であった。オルネイの目の前には一つの光り輝くオーブがあった。オーブから美しい声が広がる。
「皆起きましたね。まずは第一段階突破です」
その頂が開けており、霧がところどころに広がっているからこそ、その声はより一層神秘的なものに聞こえた。
「お前は何者だ」
ゼファルが切羽詰まっていう。
「ちょっと!」
サリシアがゼファルに諭すように止める。しかし、
「仕方ないだろう!こっちは一度裏切られてんだ!こんな場所に移動させられて、都合よく目の前に現れてんだぞ!警戒するに値するだろ!」
それは、ここにいる者の内なる声の総括のような発言だった。
「それでも、このオーブ、いやこの方からさっきの転移魔法の魔力を感じるわ。あなたも感じるでしょう、ゼファル?だから......」
そのオルネイアの発言を遮ったのはオーブであった。
「そうですね。このままだと私はとても怪しくてただ光ってる玉です。私の美しい美貌もお披露目ができませんし、私の本体に会ってもらわないと」
何とも拍子抜けするような文言だった。しかし、オーブの説明は続く。
「あなた方、『勇者の卵』は先ほど闇のギャング組織ラウファから襲撃を受けた。そして、超超大ピンチの時に偉大なるこの私が助けてあげたと。そういう流れですね」
ついていけない一行。何にかって?異様にもテンションが高いこのオーブにである。顔や姿などは見えないのに、その本体はドヤ顔をしているのが容易に想像できた。そんな混乱には、彼である。
「それで、偉大なるアンタに聞きてぇんだが、アンタは誰で、なぜ俺らに手助けする?テメェの目的は何だ?それに何故俺らの状況まで知ってやがる」
一同は思った。「コイツ、本当にガルディアか?」誰かを聞くのは皆も予想できた。しかし、目的や動機までのことを聞くのは予想外だったのである。
「せっかちですね、人魔族は。いいでしょう。一つずつ教えてあげます。私の名は『ルシエル』。偉大なる『五大天使』の候補者であり、あなた方を助ける光となるものです」
お読みいただき、ありがとうございます。新しい単語がやってまいりました。覇王という単語ですね。魔王とかも出て来てますけど、ほかの異世界系でもお馴染みの単語ですし、ご存知かと思います。では、覇王とは?現段階では魔王の上司だとでも思っていただければいいです。あと、この物語の魔王は実はあまり偉くありません。本編でもいっている通り、人魔族の統制を目的としているものたち。いわば、人間を監視するものたちを魔王と言います。(もちろん覇王も)ということですので魔王ならめっちゃやばいんじゃねっていうのは少し肩透かしになるかもしれません。まあ、オルネイアたちからしたらめっちゃ上の存在ですし、偉いんですけどね。ということで、今回はここまで。ではまた。




