13話 陥落まで
レグナは驚きを隠せない。それらは現れるまで、全く気配を感じなかったからである。既に城では混乱が生じていた。
「逃げろ!あっちだ!」
避難を促しつつ、得体の知れない化物に攻撃を試みる。
「炎砲!」
その化物に直撃すると悲鳴を上げながら、倒れ伏す。その大きさは2メートルはあっただろうか。大きな二つの耳に鼻は尖り、尾は長い。どことなくネズミを連想させる外見であった。しかしその黒いモヤは、死して尚、消えることなくその生物にまとわりついていた。
(大して強くはないけど、群れられると厄介だわ。数も不明だし、軍も動かせない。とりあえずこの恐慌状態をなんとかしないと)
<同刻 大広間>
「風刃!」
「ギャァァァァ!!!」
大広間には30体に及ぶ敵の数が確認された。それに応戦するのはゼファルである。今倒されたのは、巨大な虫に似た何かだった。
(巨大な魔力がこちらに接近している。この騒動の元凶か?)
そう思案しつつ、ゼファルは修行の成果を出せるのではと少し興奮気味である。これが王国の幹部がゼファルが最も気持ち悪いと言う理由であるのだ。そんな中、応援にかけつけたものがいた。
「炎撃!」
一瞬で二体が丸焦げになる。ヴァルカスであった。
「助かる!」
「これくらいさせてくれ!罪滅ぼしでな!」
「そんじゃ、あと十五体殺ったら許してやるよ!」
「わかった。それでは私も暴れるとするとしよう!」
そういって二人は今までとは違って自らの拳で敵を殴り飛ばしていく。ゼファルが使っているのは風刃である。しかし、その魔法を拳に纏うことで無駄な魔力の消費を抑えて、効率的に仕留めていくのである。名付けるならば「風拳」。しかし、それに劣らないのがヴァルカスであった。彼もまた炎撃を拳に纏い、「炎拳」を行使していた。
「コイツら虫か?」
「いや、ネズミに似た物もいる。虫だけじゃなく、他の生物もいるようだ」
みるみるうちにその数が減っていく。
「ウォォォォ!!!」
「バゴン!!」
「ドゴン!!」
あらかじめ断っておくが、風拳や炎拳のような魔法は存在しない。完全にオリジナルの魔法であった。にも関わらず、それらを操れるのは相当な努力が必要なのである。
敵は片付いた。しかし、その死体は残ったままである。本来、「死ぬ」と言う行為によって、その肉体は塵となって消える。塵というより、魔力に還元されるのである。この世界の生物の身体は魔力でできている。故に死ぬとその体内の魔力が、大気中の魔力に還元するのである。だが、その死体は残ったままだった。それはその身体が魔力によるものではないということのなる。そう思案していたヴァルカスであったが、その思案は無駄に終わる。
「あっという間に片付けられちゃったのさ」
「やはり脆いですね。更に魔法を強化するべきなのでは?」
大広間の奥から声が響く。
(全く気配を感じなかった。コイツらの術者か?)
焦りを見せる二人。それに対して、余裕を持って現れた二人。
「私の配下を楽しんでくれたのさ。文句は言うんじゃないのさ」
「それもそうですね」
今の会話からゼファルはこれらの敵の術者はツノの生えたマントの男であると分かる。更にどちらからも、イグゾルやヴァルカスから漏れ出た妖気の闇に似たものを感じた。その緊迫したのか緩和したのかわからない空間でシルクハットの紳士そうな男が口火を切った。
「ああ、申し遅れました。私はソムクロスと申します。そしてこちらはノクサリア。以後お見知り置きを。私どもは闇のギャング組織ラウファの一員としてこの国を堕とそうと画策しております」
それに怒りを交えてゼファルが追随する。
「ほう?それを俺たちが許すとでも?随分な自信だがー」
「ドゴン!!」
その振り下ろされた拳は地面にひびを入れる。それは、ゴリラのような剛腕生物であった。その生物はノクサリアの意のまま。彼の命令でゼファルに殴りかかったのである。それを間一髪で避けるゼファル。
「そのための力なのさ。力がなくてはただの希望。叶うわけもない。自分がやりたいと思うことは、自分の力を持ってやり遂げなければならないのさ」
そして唐突にしてその戦いは始まったのである。
お読みいただき、ありがとうございます。今回は業務的なことを少々。現在、第三章を執筆中なのですが、実に苦戦しております。何がかって?伏線の辻褄合わせですよ!第三章で二章に転がり込んでる伏線を回収しなければならないのですが、どうゆうふうに回収しようか、今第二章と第三章を往復しております。個人的に伏線は大好きなので、どんどん入れていきたいんですが、入れすぎると大変ですね。これからは程々にしようと反省した次第です。てな感じで、今後ともよろしくお願いします。




