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推し活オカンの執筆ノートは予言書らしい 〜推しが我が家でみかんを食べている件について  作者: 花庫
第二章 予言?いやいや先読みです

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特別編『玉木家京都旅行編:八坂神社と、Bの嵐』

「すごーい! 真衣見て、新幹線から富士山がキレイに見えるよ!」


新幹線、高2になった結(ゆい)が窓の外を指さして目を輝かせている。

その隣には、新幹線ホームで買ったミルクティーを美味しそうに飲む真衣。


「ママ、蓮がカツサンド食べようとしてる……さっき駅弁食べたばかりなのに」


前の席でノートPCを開いていた真衣が、呆れ顔で私の袖を引っ張った。


「今日くらい食べさせてあげようよ。蓮は今が成長期!今伸びずして、いつ伸びる!成長期はお腹が空くのよ」


「そうだよ、真衣! 中2の成長期を舐めないでよね!」


私と並んで座っている末っ子の蓮が、口いっぱいにカツサンドをほおばりながら背伸びをする。中学2年生になって骨組みがしっかりしてきた蓮は、新幹線のシートが少し狭そうに見えるくらい大きくなった。


(うんうん、本当に賑やかで平和な家族旅行…やっと来れたよ…)


新幹線の車窓を流れる景色を眺めながら、私は穏やかな気持ちで胸を撫で下ろしていた。


今回の京都旅行は、私(薫)が企画した玉木家の家族旅行。発端はB:DASHの大阪での公開収録。ファンクラブで情報公開されて、即抽選に申し込んだ。それと同時に浮かんだ「そうだ!京都へ行こう!」玉木家の京都旅行計画。頑張ってるみんなの息抜きに、なんとなく久しぶりに家族旅行がしたくなった。

けど、そんなに上手いこと抽選が当たるわけもなく、今回は純粋に家族旅行となりました。

「あ〜昨日の生放送、新曲テレビ初披露だったんだよ。現場で生で観たかったなぁ。レンくんたちはまだ大阪なのかなー」なんて思いながら、京都へ向かっていたのだが……


◇


京都駅からタクシーに乗り、緑が眩しい祇園・八坂神社へ。


「ママ、まずはちゃんとお参りしようね。真衣姉ちゃん、課題の取材メモばっかり取ってないで」


結に促され、手水舎で清めてから本殿の前へ向かう。

二礼二拍手一礼。家族みんなで静かに手を合わせていると——朱色の境内の影から、バケットハットに黒マスクで厳重に変装した背の高い人影が、そろりと近づいてきた。


「……玉木家のみなさん、お邪魔していいっすか?」


「……っ!? れ、レンくん!?」


真衣が目を見開き、結が「えぇーっ!?」と声をあげる。私も驚きのあまりパチクリと目を丸くしてしまった。

「な!なんでレンくん!? どうしてここにいるの!? 大阪でお仕事じゃなかったの?」


私が尋ねると、横から蓮がニカッと誇らしげなドヤ顔を決めた。


「へへっ! びっくりした? 昨日ゲームしながらレン兄と作戦立てたんだ! 『明日、八坂神社で合流しよう』って!」


「蓮……! あなた、レンくんに無理言ったんじゃないでしょうね?」


「違うって! レン兄ちゃんが『明日1日オフになったから玉木家を驚かせたい』って言ったんだよ!」


「そうそう、薫さん驚いてくれて大成功!」とレンくんも悪戯っぽく笑う。


単身上京してうちを第二の実家のように思ってくれているレンくんが、まさか自力で追いかけて合流してくれるなんて。驚きと同時に、こんな観光地にいる推しにソワソワハラハラしてしまう。


「まったく、しっかり驚かされたわ。でも、来てくれて嬉しいわ。さぁ、せっかくだからみんなで絵馬を書こう!」


社務所で買った木札に、それぞれが少し離れた場所で、真剣な顔つきで木札に文字を走らせる。


最初に書き終えた蓮は

『陸上100mで自己ベスト更新! 目指せ全国!』

と書かれた絵馬を一番高いところに結びつける。

その横でレンが「蓮の隣につけよ」と『ドームツアー大成功&玉木家とずっと仲良し!』と書かれた絵馬を結ぶ。


高校2年生になり、歌手「YUI」としても表現力に磨きがかかってきた結は、決意を込めてこう書いた。


『高校生の間にライブツアーができますように YUI』


「……絶対、叶えたい」と小声で呟く結。


一方、超ロングの髪の毛をなびかせながらクールな表情でサラサラとペンを走らせていた真衣の絵馬には、彼女らしい優しさが溢れていた。


『Wレンが無事走り切れますように 真衣』


(ドームツアーを控えたレンくんも、陸上部でタイムを追いかける蓮も、怪我なく最後まで全力で駆け抜けられますように——)


そして、最後に絵馬を掛けに来た母・薫。

その絵馬を覗き込んだレンが、「えっ!?」と目を丸くした。


『家内安全!ツアー完走!!


いつか海外でレンくんのライブが生で見たい! 薫』


「……薫さん、これ……」


言葉を詰まらせるレンに、薫はいつものあたたかい笑顔で微笑みかけた。


「レンくん、ドームツアーの次は世界でしょ? 私ね、レンくんが世界中のファンを熱狂させてる姿を、客席で生で見たいの。それが私の大きな夢なんだから」


「……っ、薫さん……!!本当に詰め込みすぎ(笑)」


東京に出てきてから、ずっとどこか寂しかった自分をあの日の偶然の出会いから「本当の息子」のように温かく見守り続けてくれた薫の言葉。

ドームツアーを前に胸の奥に溜まっていた重圧が、スーッと溶けていくのをレンは感じていた。


「……任せてください。絶対に世界まで連れて行きますから!」

薫が願いがこもった絵馬を掛けようとした——まさにその時。


「——おい、あそこのバケハ……絶対にレンだぞ」

「やっと見つけた!ったく、大阪のホテルで『今日は静かに過ごす』って言ってたのに!」


境内の参道から、スーツ姿の強面なマネージャーさんと、変装したB:DASHのメンバーたちが勢いよく走ってきた!


「げっ……マネージャーさんと、メンバーや……!」


焦るレンくんを見て、蓮が素早く前に出た。


「レン兄、逃げるよ! 境内の裏道なら俺が誘導する!」


「助かる蓮! 薫さん、真衣ちゃん、結ちゃん、またあとでね!」


「ちょっと待ちなさいレンーーーっ! 二人も追うな、目立つだろーーっ!」


怒号と笑い声のなか、Wレン(レンくんと蓮)は陸上部仕込みの軽やかな足取りで、参道の段差をひらりと飛び越えて駆け抜けていった。


「……あらあら、やっぱり若い子は元気ねぇ」


呆れ顔の真衣と、楽しそうにスマホで動画を撮る結。

私は境内の風に揺れる5つの絵馬を見上げながら、手持ちのカメラでその眩しい景色をカシャリと収めた。


子どもたちの夢も、レンくんの未来も、私の願いも。

新緑の京都の空へ、どこまでも高く伸びていくような気がした。


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