特別編『Wレンのゲーム部屋:中2の夜』
【語り:レン(B:DASH)】
「おい蓮! 右から1パーティ寄ってきてる! ウルト構えとけ!」
『オッケー任せてレン兄! 俺のシールドで止めるから、レン兄裏から叩いて!』
「よしナイス! ……っしゃあ、チャンピオン!!」
イヤホン越しにハイタッチの音が響く。
深夜前、仕事が終わって一人暮らしのマンションに帰ってきた俺の日課。それは、玉木家の末っ子で中学2年生になった蓮とオンラインでVCを繋ぎ、FPSゲームをプレイすることだ。
小5だった頃の無邪気な蓮も可愛かったが、中2になった今はゲームの立ち回りも格段に上手くなり、完全に頼れる相棒になっていた。
「いやぁ、今の蓮のシールド出すタイミング神がかってたわ。さすが中2、反射神経エグいな」
『へへっ、毎日レン兄とゲームしながらレン兄の技を研究してるからね。あ、ちょっと待って……』
マイクの向こうで、バタバタという足音とドアが開く音が聞こえた。
『〜〜〜っ! ママ! 今いいところなんだから勝手に部屋入ってこないでよ!』
『蓮〜、夜遅くに大声出さないの! レンくんにもご迷惑でしょ? 洗濯物ここに置いておくからね』
『わかったから! ドア閉めて!』
バタン、とドアが閉まる音。
俺は思わず吹き出した。
「ハハハ! 薫さん相変わらず優しいやんか。ちゃんと『ありがとう』って言ったか?」
『……言ったよ。もう、中2にもなって子供扱いしないでほしいよね。反抗期なんだからさ、俺』
「自分で『反抗期』って言う奴があるか(笑)。中2病かよ」
『中2病じゃないし! ていうか、レン兄ちゃんこそ最近忙しすぎでしょ? こないだのテレビの生放送見たよ。新曲のダンス、めちゃくちゃバキバキでカッコよかった。ママめっちゃ褒めまくってたよ!』
素直に褒めてくるあたり、やっぱり根はあの頃の可愛い蓮のままだ。
「サンキュ。蓮も部活忙しいんやろ? 陸上部入ったんだっけ?」
『うん! 先輩にタイムでなかなか勝てないのは悔しいけど、どんどんタイム縮まっていくのは楽しい! ……あ、そういえば真衣がね、レン兄ちゃんに『あんまり蓮と夜遅くまでゲームさせないで』って言っておいてって怒ってた』
「うわ、真衣ちゃん相変わらず厳しいな……。結ちゃんは?」
『結は『レンくん新曲のキー高いのに歌えててすごい〜』って部屋で熱唱してる。うるさい(笑)』
「あはは、玉木家は相変わらず賑やかでおもろいなぁ」
画面の中のキャラクターを操作しながら、俺はふと息をついた。
ドームツアーを控え、プレッシャーで頭が押し潰されそうになる夜も多い。でも、こうして蓮とゲーム越しにくだらない話をして、玉木家の日常を分けてもらうだけで、すーっと肩の力が抜けていくのだ。
『……ねえ、レン兄ちゃん』
「ん? なんや?」
『今度のドームツアー、俺、絶対観に行くからね。部活の大会と被りそうだったんだけど、必死で勝ち上がって日程ずらしたんだから!』
ボイスチャット越しの声には、中2らしい少し低くなった声と、はっきりとした熱がこもっていた。
『だからさ、ドームのデカいステージで、一番カッコいいレン兄ちゃん見せてよね』
「……当たり前やろ。誰に向かって言ってるん」
俺はコントローラーを強く握り直し、画面の向こうの相棒に向かってニヤリと笑った。
「蓮、もう1マッチ行くぞ。今度は俺が全キル取ったるから見とけよ!」
『よーし、負けないからねWレン! 出撃〜!』
深夜のボイスチャットに、Wレンの笑い声が心地よく響き渡った。
(Wレン中2編・完)




