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推し活オカンの執筆ノートは予言書らしい 〜推しが我が家でみかんを食べている件について  作者: 花庫
第一章 始まりの予言

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第十一話:ライバル出現!?


「……オカン、マジで助けて」


深夜1時。しとしとと雨が降る中、我が家の玄関前には、黒のパーカーを深くかぶり、途方に暮れた顔をした最推し・レンくんが立っていた。


「ちょっとレンくん!? こんな夜中にどうしたの!?」


子どもたちが寝静まった静かなリビングに招き入れると、レンくんは力なくヨギボーに沈み込み、スマホの画面を私に見せてきた。


そこにあったのは、大手エンタメニュースのスクープ速報。


『B:DASHを脅かす超大型新人グループ「NOVA(ノヴァ)」電撃デビュー! 海外プロデューサーを起用し、来月のドームツアーと同日に初ライブ開催へ』


「……これって……」


私の手から血の気が引いていく。

急いで机に向かい、一週間前に編集部に提出したばかりの連載第一話の原稿を開いた。


『――輝く頂点に立つ彼らの前に、突如としてあらわれた圧倒的なライバル。彼らは新時代の風を纏い、王者たちの絆を揺さぶり始める』


(またやっちゃった……!! 本当にライバルグループが出現しちゃった!!)


「NOVAのメンバー、昔同じオーディションで切磋琢磨しとった奴らなんよ……」

レンくんは膝を抱え、ぽつりと呟いた。


「実力は本物だし、コンセプトも俺たちと被っとる。今日事務所で緊急会議があったんだけどさ……メンバーみんな、焦っちゃってピリピリしてて……。次のシングルの方向性まで揉め始めてさ」


いつもの無邪気なお調子者の顔は消え、焦りとプレッシャーに押しつぶされそうな「一人のアイドル」の顔になっていた。


(私の書いたストーリーが原因で、B:DASHの仲がギクシャクしちゃってる……!)


自責の念で胸が押しつぶされそうになる。

でも、前回の家族会議でレンくんが言ってくれた言葉が、頭の中で強く響いた。


『もしピンチが来てもさ、俺たちB:DASHなら絶対乗り越えてみせるから。だからさ、遠慮しないで面白いの書いてよ!』


(逃げちゃダメだ……! 私が書いたトラブルなら、私が最高の「希望」を書き足して乗り越えさせてみせる!)


「レンくん、ちょっと待ってて!」


私はノートパソコンを引っ張り出し、一心不乱にキーボードを叩き始めた。

プロットの続きを修正するのではない。連載第一話の後半、ライバル登場に打ちのめされる主人公たちに差し込む「光」を描くのだ。


カタカタカタカタ――。


無我夢中で文字を打ち込む私を、レンくんは黙って見つめていた。


『ライバルの登場に揺らぐ仲間たち。しかし、センターの男は気づく。自分たちが積み重ねてきたものは、誰かに脅かされるような脆いものではないと。他人の背中を追うのではなく、自分たちの音を鳴らすのだと――』


一気に原稿を書き上げ、編集の佐藤さんへ修正原稿を送信した時、時計の針は午前3時を回っていた。


「……ふぅ……ッ!」


大きく息を吐いて背伸びをすると、いつの間にか温かいインスタントココアが机の上に置かれていた。


「オカン、お疲れさま」

レンくんが、ふわりと柔らかく笑っていた。


「俺さ、オカンがキーボード叩く姿見てて思い出したよ。俺たちが何のために歌って踊ってきたのか」


「え……?」


「他人に勝つためじゃないんよ。ファンのみんなと、最高の時間を過ごすためだった。ライバルが来ようが関係ない。俺たちは俺たちのB:DASHをやるだけだ」


すっきりと澄んだレンくんの瞳を見て、私は涙が出そうになった。


(すごいなぁ……。そうだよね。私を小説はただもしかしたら当たるかもしれない程度のただの小説。乗り越える強さは、やっぱりレンくんたち自身のものなんだ)


「……よし! レンくん、お腹すいたでしょ! 夜食に温かいにゅうめんでも作ろうか!」

「まじ!? オカン大好き! ネギ多めで頼む!」


いつもの明るい声がリビングに戻ってきた。


◇


数日後。あーちゃんからテンション高めのLINEが届いた。


『たまちゃん見た!? B:DASHの緊急生配信! NOVAの件でファンが不安になってると思ってって、ホクトくんとレンくんが「自分たちは音楽を届けるだけ」って堂々と宣言してくれて、最高にカッコよかった!! やっぱりB:DASH一生推す!!』


スマホの画面を見ながら、私は微笑んだ。


(あーちゃん、B:DASHは大丈夫だよ。彼らは私たちが思っている以上に、ずっと強くてカッコいいんだから)


……しかしその時、編集の佐藤さんからテンション高めの電話がかかってきた。


「玉木先生! 修正原稿、最高でした! 読者アンケートも速報で1位です! ……ところで先生、第二話の原稿ですが、『メンバーの一人が極秘で隠している衝撃の過去』という展開で進めてもよろしいでしょうか!?


「え……!? し、衝撃の過去……!?」


受話器を握りしめたまま、私は我が家のヨギボーで「オカン、みかん食べていい〜?」とポテトチップスを片手に転がっている最推し(レンくん)を二度見したのだった――。


レンくん、最近うちに居すぎなのでは???

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