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新入生歓迎パーティー 下

「お断りするわ」


 即オチ2コマのような即断即決。

 あまりにも迷いがない。

 あまりにも容赦がない。

 おそろしく速い拒絶、僕でなきゃ見逃しちゃうね

 

 現にほら、誘った男子生徒は手を差し出したまま、目を丸くして固まっている。

 ばっさり切り捨てられた事実をまだ理解できていないみたいだ。


「は……?」


 ようやく漏れ出た声は間抜けそのものだった。

 ま、気持ちはわからないでもない。

 社交の場でダンスを申し込んで、ここまで即答で断られるなんて普通は思わないだろうし。

 でも同情はしないかな。

 うちのエルマリアを誘ったのが運の尽きだ。


「こ、このわたしを知らないのか? ドットハック家のリボルバーだぞ?」


 誰?

 もちろん僕は知らないしルヴェルもリズリィも無反応。

 ゼナヴィアならわかるかな~と思いきや「どこかで聞いたような?」と首を傾げる始末だ。

 口を開くことができたのはエルマリアだけだった。


「存じていますわ。貴族であるドットハック家のご子息、リボルバー・ドットハック様」

「な、ならば――」

「それでもお断りするわ」


 おおう、付け入る隙がない。

 社交パーティーのダンスなんて、もっと気軽に応じるものだと思っていたけど意外とそうでもないんだね。

 そういえばゼナヴィアのダンスの練習にルヴェルが付き合わされていたこともあったな。

 あの経験はいつ活かされるのだろうか。


「なぜだ! せっかくわたし自ら足を運び、誘ってやっているというのに! 断るだと!? 男に恥をかかせる気か!!」


 化けの皮が剥がれるの早くない?

 振られたことに腹を立てるなんてみっともないぞ。


「わたくしのダンスのお相手は生涯でただ御一人。あの方以外の手にわたくしが触れることはないわ」


 エルマリアがきっぱりと言い切った。

 ……ってか、視線が僕の方を向いている気がする。

 いや、まあ僕だって鈍感ではないと自負してるから”あの方”が誰を指しているのか確かめるまでもないんだけどね。

 ちなみに僕はダンスなんて練習すらしたことないので普通に踊れない。

 まいったね。


「……そうか。つまりその相手を力ずくで排除すればいいだけの話だ」

「!?」


 物騒だな。

 殺気を放ってきたせいでルヴェルが反射的に動いちゃったじゃないか。

 エルマリアを庇うように立ち回ったのはさすが僕の相棒って褒めたいところ。


「誰だ貴様は」

「それ以上エルマリアに近づくな」


 ルヴェルが剣の柄に手を添える。

 女性陣はドレス姿だから帯刀はしていない。

 もちろん丸腰という訳ではなく、ゼナヴィアとエルマリアは足やスカートの裏に暗器を仕込んでいるし、リズリィはそもそもスキル『雷』によって全身凶器みたいなものだ。


「リボルバー様」


 取り巻きの一人が耳打ちをしている。

 内容はルヴェルの素性とかスキルを持たないことについて。

 魔力霊体だと盗み聞きが楽で助かるわ。


「なるほど、貴様が噂の『能無し』の新入生か。スキルも持たない身の程知らずの顔をこんなところで拝めるとはな」


 またここでも同じような扱いか。

 貴族の同級生を打ち負かしたことも周知しておいてほしいところだ。


「それにしても……そうかそうか、なるほどなぁ」


 品定めをするようなねっとりとした視線。まるで獲物を値踏みする獣のような目だった。

 心なしかルヴェルよりもゼナヴィアやリズリィを眺めている時間が長い。

 気持ち悪いな。

 そんなに見るなら僕のキメ顔ダブルピースでも見て満足しろ!


「所詮は成金将軍の娘。それ相応の取り巻きに囲まれていたか。おい、お前たち。その女とつるむのはやめてわたしのもとに来い。父上に口利きしてやってもいい」


 振られたからって今度はゼナヴィアとリズリィが標的かよ。

 節操がないにも程があるだろ。

 しかも成金将軍って……エルマリアは家族思いだから父親の悪口なんて見過ごさないぞ?


「あらあら、言いたい放題ね」


 目を細めて笑ってはいるけど彼女のことだ、リボルバーを潰す算段をその仮面の裏で考えているに違いない。

 ご愁傷様、リボルバーくん。


「わたしのものになるなら充実した学園生活が送れることを約束するぞ」

「二人に近づくな」


 ルヴェルが間に割って入った。

 こういう時、相棒と僕の意見は大体一致するから安心だ。


「離れろ」

「平民風情がわたしに触れるな。その手をどけろ、斬られたいのか?」

「やれものならやってみろ」


 あらやだ男の子。

 安っぽい売り言葉を買うなんてルヴェルも好戦的になったもんだ。

 たぶん初日にスキル持ちの貴族男を打ち倒したからそれが自信にも繋がっているのだろう。

 スキルが無くても、自分の剣は通用するのだと。


「ルヴェルが相手をする必要はないよ? だってあたしこの人のこと興味ないもん」

「平民風情の私には相手が務まらないようなのでそもそも争う理由がありません」


 純真無垢パンチに揚げ足取りキックといったところか。

 ゼナヴィアはいつも通りだけどリズリィも言うようになったね。

 くわばらくわばら。


「……」


 何も言わないね。

 いや、言えないのかな?

 怒鳴り散らして来てもおかしくはなかったけど、さすがにこれ以上は貴族として醜態は晒さないのかな?

 僕としては一安心。

 もしリボルバーたちが強硬手段に出て彼女たちを傷つけようとしたら……僕も黙ったままではいられないからね。


「……行くぞ」


 リボルバーが背を向けた。

 取り巻き性質も慌てて後を追っている。

 意外にあっさりしていて拍子抜け――というか捨て台詞も無しか。


「……何をしに来たんだあいつは」


 同感だよ、ルヴェル。

 ダンスの誘いに来たのか、喧嘩を売りに来たのか。

 最後までよくわからない男だった。




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