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07-04 月下

これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。

どこかの扉の向こうの世界の物語。


大きな丸い月の出ている世界。

冴え冴えと明るく、

白い冷たい明かりを放っている。

その下は森。

うっそうと樹木が生い茂り、

何かを包み込んでいるような、

何かを隠しているような、

文明の手がついていない森に見える。


風はさわさわと、

かすかに葉を揺らす。

何かが潜んでいるような気配。

気配は森そのものに拡散して、

森のいずこにも、何かがいるような錯覚をする。

あるいは動物かもしれない。

森に動物、当たり前のことかもしれない。

あるいは、何か別の存在かもしれない。

月明かりがかすかに届く森の中で、

何かが、いる。


不意に、風が途切れるような気配。

そして、緊張に包まれたそのとき、

高らかに、遠吠えが聞こえ出す。

森のどこかから、

ここにいると、叫んでいるように、

遠吠えは繰り返される。


月明かりのきれいな森。

響く獣の遠吠え。

おびえるわけでなく、

悲しむわけでもなく、

森は獣を包み込んでいる。

犬より誇り高く思えるその遠吠えは、

狼のそれなのかもしれない。


月下に、狼がほえている。

一匹なのかもしれない。

誰かを求めているのかもしれない。

風はさわさわとまた吹き始める。

森に月の光が少しだけ落ちる。

子守唄のように、

狼の遠吠えが遠く近く。


狼はどこかで、

月の狂気で変身するというのを、

誰かが知っているかどうか。

静かな月の光は狂気には少し遠くて、

その下で繰り返される遠吠えも、

変身するには、少し悲しい。


やがて、誇り高き遠吠えは、

月の明かりに、とけたように聞こえなくなった。

気が済んだのかもしれないし、

何かを見つけたのか、

何かに見つけられたのか、

あるいは本当にとけてしまったのか。

それはわからない。


孤独に耐えかねて、変身してしまったのか、

それもわからない。


人になった狼がいても、逃げないで欲しいと、

狼だって一匹だけでは寂しいのだと、

月が思ったかはわからない。

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