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07-03 絵師

斜陽街に、不意に迷い込んだ男がいる。

黒っぽい和装で、髪は少しだけ長い。

若い男だ。

のぞく目は細く糸目で、

体格は全体的に細い。

男はその手に筆を持っている。

きれいな紅色の筆に、なんともいえない色が乗っている。


なぜこの町に迷い込んだのかを、

男は、知らない。

ただ、描く絵を追い求めるうちに、

こんなところに迷い込んだのかもしれないと、

男はなんとなく思う。

男は、自称絵師だ。

今のところ。


絵師は懐から紙を取り出す。

斜陽街の町並みを、糸目でじっと見つめると、

紅色の筆を走らせる。

ためらいなく、一気に。

あらわれるのは、なんともいえない斜陽街のかたち。

色合い濃淡まで、紅色の筆からあらわれる。

一見して白黒にも色鮮やかにも見える。

不思議で、言葉にするのが難しい代物だ。


一息に描ききり、

絵師はため息をつく。

確かに面白い街に迷い込んだけれど、

これだけでは終わらないような気がする。

もといた場所にあったような、

何かに巻き込まれる予感がする。

そこでは絵師とは名乗っていなかったけれど、

ここでは絵師でいいだろうかと、彼は思う。


絵師は描いた斜陽街を紙飛行機にすると、

ふわりと飛ばした。

斜陽街の町並みに、

紙飛行機はすっととけるようになくなって、同化した。


絵師と名乗っていなかった彼、

絵を楽しんでいた彼。

絵師はそんなことを、とりとめもなく思う。

絵師をするにはちょっといろいろ、ありすぎたかもしれない。


紅色の筆を持って、

絵師はふらふらと斜陽街を歩く。

住人は、異邦人である絵師も、

今までいたもののように扱ってくれる。

優しさでもあるのだろうし、無関心に近いのかもしれない。

風が吹いたような気がした。

ここの風はなんだかちょっとだけ違う気がすると絵師は思う。

何かを表しているような。

ふっと絵師は、ある言葉にたどり着き、微笑む。


「歓迎、っすか」

そんな風が吹く町も、いいかもしれないと絵師は思った。

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