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06-69 此方

此方には何もないか。

ここには全てがある。

憧れも夢も、幻も。

此方には全てがある。


斜陽街一番街、バー。

夜羽はいつものように妄想屋をしていた。

先ほどお客が来ていった。

夜羽はテープレコーダーから妄想のテープを取り出し、

マジックで「此方」と書く。

此方には全てがある。

彼方を目指す必要はなく、

此方に全てがある。

そんな妄想だった。


バーにはいろんな人がやってくる。

人でないものもやってくる。

生体系、電脳系、電網系、それとも違う夢幻のようなもの。

みんな斜陽街で繋がっている。

ここに全てがあるような気もするし、

ここからずっと遠くに何かがあるような気もする。

妄想なのだろうか。

お客の残していった妄想のような気もするし、

夜羽が感じる妄想のような気もする。

それは斜陽街の妄想なのかもしれない。

斜陽街からどこかへと、繋がる妄想なのかもしれない。


カランコロン。

ドアベルが鳴り、お客が入ってくる。

お客は生体系で、マスターにビールを注文した。

いつものバーの、いつもの風景だ。

これからもそうなのだろうし、

もしかしたら変わるのかもしれない。

夜羽にもそれはわからないし、

きっと誰にもわからない。

それでも、夜羽はこの斜陽街の居心地がよくて、

このままでもいいなと思う。


カランコロン。

また、ドアベルがなる。

「いやー、一仕事終わった」

空飛ぶ魚のシキが入ってくる。

続けてヤジマとキタザワが入ってくる。

「ギムレット」

「あの、ファジーネーブルを」

「水」

ヤジマが、キタザワが、シキが注文する。

「夜羽」

ヤジマが夜羽のほうを向く。

「卵は八卦池に入れたよ。電脳の眠りについてるはずだ」

「それはよかった」

夜羽はうなずく。

ヤジマの前にギムレットが置かれる。

「シキは何してたんだい?」

「本を作って、廃ビルの屋上から送ったのさ」

「どこ行っただろうね」

「思い出のどこかに行ったのさ」

キタザワの前にファジーネーブル、

シキの前に水が置かれる。

「それじゃ、一仕事終えたことに乾杯」

「かんぱーい」

グラスがチンとなる。


此方には全てがあるように。

ここに満足すればそれまでかもしれない。

でも、ここが始まりなのだ。

ここに始まりここに終わる。

ならばここが全てなのかもしれない。


カランコロン。

ドアベルがなる。

全てはここから。


また斜陽街で逢いましょう。

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